カラムシ
古代の衣や釣り糸などに利用された繊維をとる野草である。
カラムシは、日本では縄文時代から栽培され、律令時代には「上布」として朝廷に献上された布の原料である。万葉集に詠まれた「麻」はカラムシから取られた繊維を織った布を指すと思われる。
麻には多くの種類がある。大麻からも糸が作られるが、カラムシとは異なる植物である。
広辞苑によれば、カラムシは、次のように説明されている。
(「むし」は朝鮮語 mosi(苧)の転か、あるいはアイヌ語 mose(蕁麻)の転か)
イラクサ科の多年草。茎は多少木質で、高さ約1.5メートル。
葉は下面白色、細毛が密生。夏秋の頃、葉腋に淡緑色の小花を穂状につける。雌雄同株。
茎の皮から繊維(青苧あおそ)を採り、糸を製して越後縮などの布を織る。
木綿以前の代表的繊維で、現在も栽培される。
苧麻まお・ちよま。草真麻くさまお。〈和名抄14〉
民俗学者の柳田国男によれば、「麻」は万葉の時代より明治初年まで庶民の衣服の原料であった。明治期までは広く全国で栽培されていたという。
柳田国男『木綿以前のこと』岩波文庫1979年 p.25~p27 参照。
猪名寺佐璞丘(地名)には、白鳳時代に法隆寺式の寺院・猪名寺が建立されたが、猪名寺と佐璞丘一帯は天正年間の織田信長と荒木村重の戦で焼き尽くされたとされている。その後の佐璞丘は、江戸時代から昭和初期まで畑や竹林として利用されてきた歴史がある。現在、自生しているカラムシは、江戸時代以降の民衆の生活史と土地利用の歴史を裏付ける生き証人なのかも知れない。
兵庫県尼崎市猪名寺(いなでら)佐璞丘(さぼくおか)に自生するカラムシ
2014年8月31日撮影
カラムシは、アカタテハ(蝶々)の食草です。カラムシの葉の所々に穴があるのは、アカタテハの幼虫が食べた痕だと思われる。
「社会科通信」なんでやねん
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