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試験問題「もし自分が戦時中に生きていたら」HEADLINE

【観点】
  • 関心・態度

【問題】
2016年実施
【選択課題】 あなたが1944年(昭和19年)に生きているとします。そして、あなたは尼崎市に住んでいて、15歳です。そんな時、もしも、次のような場面にであったら、あなたはどのように行動しますか。次の課題①と課題②のうち、どちらかを選択してあなたの意見を作文にしなさい。

【課題 ①】 国民学校(小学校)2年生の妹(8歳)が「となりのお兄ちゃん、畑に昨日までいてたやん。なんで、おらんようになったん? どこに行ったん? となりの家は農家やからお米あるんやろなぁー。
 けど、ウチはなんで食べる米がないん? 私は毎日、いもばっかりでいやや」と泣いている。もちろん、あなたもお米のごはんを、しばらく食べた経験がありません。よくてサツマイモのはいった雑炊です。砂糖の配給も止まりました。あなたなら、8歳の妹にどのように説明しますか?

【課題 ②】 あなたは中学生です。中学校で勉強するのではなく、町の工場で戦闘機の部品を作る作業に行くように命令が来ました。この命令に従わなかったら、警察官が来て逮捕されてしまいます。仕事を休むと警察官が来ます。
 そんな時に、国民学校(小学校)2年生の弟(8歳)に、住んだこともない氷上郡の農村に、集団疎開に行くように命令が来ました。弟は、家族と離ればなれになるから「いや」と言って、集団疎開に行こうとしません。あなたは弟にどのように説明しますか。




【解答・採点基準】
 伝えようとしている「知識」がこれまでの社会科の授業で学んだことや、自分で調べた専門的な知識を活用しているかどうかである。さらに、弟や妹に説明する方法が具体的に表現されているかを評価する。
(1) 伝えるべき「知識」を説明している。1つの「知識」につき2点。
(2) 自分で調べたことを活用している。1つの「知識」につき2点。
(3) 弟や妹に、伝わりやすい表現を工夫している。2点。

【課題 ①】これだけは必要な「知識」
① 隣のお兄ちゃんがいなくなった … 徴兵制について説明する。
② 農家には米がある … 法律で個人的な売買は禁止されており、その農家が食べる米と、種籾(次の年に種としてつかう)以外の米は、政府が買い取る(食糧管理法)。米はすべて国が管理する仕組になっていた(国家総動員法)。
③ 食料がなくなった … 国内で農作業をしていた若者、工場の労働者、商業などに従事していた人たちも兵士として戦場に行くと、食料の生産や輸送もとどこおる(停滞する)ことを説明したい。
④ さらに、食料を生産していた人が生産しないで、消費者になることになり、ますます生産が減り、消費が増える(兵士は食料の消費者)ので、食糧難が深まることを説明したい。
⑤ ちなみに、当時の日本は、国内で消費する米の10%以上を植民地の朝鮮や台湾から輸入していた。植民地での徴兵や強制連行で労働人口が減り、植民地も生産力が落ちた。さらに、輸送船など船舶の不足などから、植民地の米が日本に届かなくなっていた。

【課題 ②】これだけは必要な「知識」
① 工場に中学生が働きに出ることは、学徒動員とか勤労動員と言われた。工場で働いていた人達(労働者)が戦地に兵隊にとられたので、工場の生産が止まった。それでは、兵器がなくなり戦争を続けることが出来ないので、中学生を工場に「徴用」したのである。
② これは、国家総動員法に基づいて「国民徴用令」(昭和14年7月8日勅令第451号)という天皇の命令(勅令という)が制定されたからである(実際には政府の独断)。天皇の命令に、逆らうことは許されなかった。
③ サイパン島が陥落して都市が空襲されるようになると、無差別の攻撃を受けるので、学童(小学生)でも殺される。学童は、戦力にならないからだけではなく、将来の日本を託すべき国の宝だから疎開して生き延びなければならない。
④ そこには、個人の生命は、個人のものではなく、国家・天皇のためのものであるから、勝手に失ってはいけないという思想があった(全体主義)。この点に気づくことが出来ると、相当高い学力が形成されている。
⑤ 農村に行けば、いじめられることが予想できる(農村の少ない食料がさらに減るから)。いじめを克服する生活の知恵が必要である。




【子どもたちの答案・作文 授業で使用した教材など】
○使用した教材 「昭和の初めの頃の食べ物事情」、「国家総動員法と国民の食生活」、「食料の確保と子どもたち」、
        「飢え死にした兵士たち
子どもたちの答案「作文」の代表作品



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