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試験問題「縄文時代の家族関係を考える」HEADLINE

【観点】
  • 社会的思考力・判断力・表現力
  • 関心・態度

【問題】
2018年実施
 縄文時代の草創期(今から約12,000年前)のころ、鹿児島に住んでいた人々は、春から秋までは栫ノ原(かこいのはら)に住み、晩秋に移動して、冬から春までは掃除山(そうじやま)に住んでいた。栫ノ原は山の北斜面(しゃめん)にあり夏でも涼(すず)しく、掃除山は山の南斜面にあるので越冬地(えっとうち)として都合(つごう)が良かった。ただ、その間はおよそ30㎞ほどあり、移動するには険(けわ)しい山道を歩く必要があった。
 冬が近づいてきた晩秋のある日、2人の兄弟が妻や子どもたちと一緒に2家族10人で、栫ノ原から掃除山に移動しようとしていた。昨年の冬には、兄弟の父親が掃除山で死んだので、そこで墓(はか)を作り葬(ほうむ)った。その時、彼らの父親は30歳だった。今年は、32歳になる母親が「私は体の調子も悪いし、体も思うように動かないので、お前たちの足手まといになるだけだよ。お前たちの家族だけで向こうの山に行っておくれ。私はここで残るから」と言う。兄弟はどうするか相談した。厳しい冬がすぐにやって来る。結論を出すしかない。
 さて、もし君が、そのような状況におかれた兄弟の一人だったら、どんな結論を出しますか。当時(縄文時代草創期)の状況をふまえて、自分の考えることを説明する文章を書きなさい。






【解答・採点基準】
 結論と理由の説明の筋道が通っていること。理由(根拠)の説明は次の論点について触れていること。論点1つにつき2点を加点する。採点法は加点法。誤字脱字は減点しない。複数の文章が矛盾する場合は、初めの文章のみ加点し後の文は0点。あいまいな記述は1点。次の論点以外でも、根拠や内容が正しく、筋道が通っていれば加点する。

① 結論を明確に具体的に説明していること。たとえば、㋐母親を説得して掃除山まで一緒に行く(栫ノ原に留まれば弱っている母親を死に追いやるだけだと指摘していること)。㋑一緒に栫ノ原にとどまる(家族全員が死ぬ可能性が高いことを記述しつつ、家族全員が生き残れる方法を説明すること)。㋒食料や燃料のたきぎを準備して母親だけを残して出発する(この場合は、弱っている母親を死に追いやる可能性が高まることを指摘していること)。など。

② 12,000年前は、未だ氷期であり、日陰になる土地の冬は凍りつく寒さだった。そのため、30㎞の険しい山道を歩いて暖かい越冬地に移動することは生き延びる方法だったことと、残ると死の危険度が高まることを説明できている。

③ 縄文時代の人々の寿命は、5歳の人で平均31歳くらいだったことを説明し、あるいは、14歳くらいで親になり、子どもを育て、生活を支える一家の中心になっていたことを説明して、自分が親の立場で母親のことを考えることができている。たとえば、自分の幼い子どもたちを保護しつつ、年老いた母親と一緒に移動することが可能な方法を考えて説明している。
 ただし、平均余命から個人の死期を推定できるものではない。したがって、31歳だから死期が近づいていると判断するのは、平均余命の誤った使用法であることに注意すること。なお、課題の子どもたちはすべて5歳までの幼児である。

④ 縄文時代の人々は子どもの頃から、生きるための知識や技術を、親や兄弟から学びながら、1年中ずっと家族一緒に暮らしていた。家族のつながりはとても強い。家族を失うことは自分の体の一部を失う以上の苦しみだったことをふまえている。

⑤ 縄文時代の人々は台地の上にむらを作って、互いに助けあいながら暮らしていたことをふまえて考えていること。




【子どもたちの答案・作文 授業で使用した教材など】
子どもたちの答案「作文」の代表作品


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