BUMP OF CHICKEN


FMで何気なくかかっていた曲の一つが気になっていた。今のロックシーンに興味はあるものの、書き物のプロでもないし、特に耳にかかるものを掘り下げることもない。殆どは、ガラクタのようなことにして、何か年下を認めたくないような貧しい部分もあったと思う、聴こうとする努力をしなかったんだな。
そして約2年が過ぎ、彼らの音を意識して聴き、歌詞を追った。藤原(ファンは藤くんと言っている)の言葉と叫びを聞いた。途切れそうで繋がり続ける彼の精神が届いた。自分を見つめることを、強くも弱くも正直に吐露する単語の連なり、圧倒的で清潔感のあるギターサウンドが言葉をブリッジしていく。初期のU2やバニーメンのような、何か霧を取り払いたいような衝動的な鋭いギター音の記憶が蘇る。
そして音より、飛び越えてメッセージを伝えたい、その衝動を抑えられないような気持ちが分かった、ような気がした。思いを歌として表現し、作り上げる過程で、敢えてそれを途中で打ち切ったような言葉の羅列、それは狙いではなく、真実の瞬間に断ち、生き続けさせている。
メロディへの言葉の乗せ方は、性急、やや粗雑に見えて実はストレートだ、それが新しく感じる。
桑田や佐野が用いた日本語をそれらしくなく聞かせた時より、歌い方が、思いのほうにストレートに感じてくる。計算じゃなく、捉えたところで凍結させてレコーディングしたような感覚。それは偶然でなく、目線の良さなんだろう。

藤原は、直接的に、或いは何かに例えて、人の自分の二面性を表現する。自己顕示と嫌悪感、プライドと思い上がり、無意識の好調さと、意識しすぎる弱い自分。勝つことが、負けていた。負けを知った強いやつと、勝ったつもりの弱いやつ。自分を可愛がることと、傷つけること。
CHICKENな心だから、そんな言葉が理解できる。そして、その一撃を応援できるんだ。彼らのバンド名が、そのままテーマになってるんだな。臆病者がぶち当たったロックという表現方法。臆病者が知ることは、それは、確固たる小さな勝利なのだ。
藤原は、過去の良きロックのいろんなギターリフのエッセンスを聴いて、体得し、アレンジに生かしている。ギターは、ラフな表現だし、音を重ねすぎてわからないものもあるが、ひとつひとつはシンプルで、ギターによるウォールサウンドのような趣。特にビートルズあたりから多くを得ている。(殆ど現在のロックバンドがそうであるように)一部に彼らのテクニックを疑問視する声もあるが、これは音楽の本質を理解していない。それは評価の極一部のポイントに過ぎない。
また、藤原のワンマンバンドのように見えて、バンド自体がBUMPの音として個性を持って、ロックバンドの音として表現できているところが好きだ。ストリートロックのテイストをブリティッシュに決める。重ねられた良質な音の集まり達が、ともすれば藤原の簡単に選んでしまった「青い」言葉をも、良きロックミュージックとして表現してくれる。
幼なじみでもあるこの4人組は、日本のロックシーンで、これからも、きっと重要な位置で活躍するだろう。
新しい若いリスナーに生きるための良い提案をしてくれるはずだ。詰め込んだ言葉の渦に、歌詞カードを片手に聞いてみよう。
メロディメーカーではないが、現代に警句を与える唄がある。
実はあまり気付かないところなんかに、彼らは重要な言葉を埋め込んでいるから。
彼らの演奏テクニックを疑問視する声があるがこれは正しくない。彼らは唄の本質を先に手に入れたのだ。

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