jupiter

トイズファクトリー 品番TFCC-86101 価格\3000

3thアルバム。音が厚くなり、完成度が増した。

01.Stage of the ground

一曲目に相応しい曲。タム中心の、ある種フォークロア的な印象のドラムではじまる。これが地下から湧き上がるような思いを感じさせるようなアレンジのアイデアになっている。

何しろ、360度だって、365日だって、オレ達にゃ自由さ。
でも、その自由が、そんだけのリスクなのさ。誰もどっか分からぬ360度を心配して追っかけてくれはしないだろう。
だからオレ達も、もういかなきゃ。
この歌が勇気を奮い起こして、みんなを後押ししてくれるのだ。

02.天体観測

有名な代表曲である。オレもこの曲を802で最初に聴いた。
小節を飛び越して、リズムが止まってしまいそうなメロディ構成や、音の繋ぎ方は、初期のスプリングスティーンやヴァン・モリソンを感じさせる。

震える手の記憶が新しかったり、昔を思い出したり、それは経た年月で、当然差が出る。しかし、どちらにしても、その震える手の記憶は、精一杯で、全く冷静でない青い自分を思い出させる。
過ぎて「ああ、あんなもんだ」と思える日もくれば、記憶にも残らない時もある。
思い出して急にカッと顔が赤くなる、稚拙な時期のオレを思い出してみたり。
この唄は、どこかの誰かの過ぎた一瞬を見事に描いてくれた。
記憶の延長で二人がまだ追いかけることが出来るかもしれない。否、それは幻想。でもそんなことが重なって、未来へ、イマジネイション深く、また人と出会っていくんだ。
奥行きのある吸込まれそうな星を見てても、地上ではちっぽけな二人。でも望遠鏡の絵はやっぱり絵で、手のひらは触れられるすぐ横にある。いつでもあると思っていたその手。
何も考えず初めて出会った真新しい望遠鏡を覗き込む、そんな無垢の時代、思い出す。情けなくて純粋なあのとき。
みえないものを見ようとするあの時、望遠鏡を手に入れても結局分かるものは自分の情景だけ。それは若い時の恋愛によくあることなんだ。

03.Title of mine

重い鎖を身体に巻きつけて、それを解き放ちたい、その言葉を理解してバンドの演奏は迫力を増す。藤原の自分を問う二人の自分。「ダイヤモンド」にも見られる彼の表し方。太いギターのリフがいい。振りをして生きる彼だからこそ、深く考えてしまうんだ、きっと。そんな彼と嗚咽する彼。本当の自分を外に出すって、勇気と夢中さ、どっちかというと無意識のうちに出てる。ときは出ている。個人的な臭いの強い曲。
藤原の独りで座っている背中が見える。
04.キャッチボール

微笑みながら、あさっての方向に投げた球をとるシーン。よくある想像しやすい風景。言葉のカーブ、ケロっと注意しないフリして充分、注意しなきゃ。ちょっとしたことで終わってしまう二人だってあるしさ。
気楽に微笑みあっていても、意外と、結構真剣なのよね、男と女って。
でも一所懸命、頭働かす時って、つまるところ、男と女、女と男の時なんだよなあ。やっぱりこれないと人は成長しないな。
高校野球のどっかの監督がそんなこと言ってたこと思い出した。特に捕手の打者心理のヨミって、恋愛が一番だって。って当然男同士じゃないぜ、って男同士でもいいんだけどさ。
増川との共作らしい。
05.ハルジオン

白い花はハルジオンだったんだ。でも、それは彼のためにあったんじゃない。白い花はずっとそこにあったんだ。ただ勝手に。でもそれをその人に当てはめて見れば、その花は彼のためにあった。そして枯れたその花は、すでに新しい芽を育んでいた。いや、やっぱり彼のためではなかった。でもその芽の姿に彼は揺ぎ無く生きていこうと決める。
人より数倍、数十倍、植物は静かに強く生きている。それは見られずとも見られてるとしても関係なく。そして移ろう人は揺れ動きながらも、時にそれに思いを馳せる。
オレの周りに花はあるか、見ている余裕をたまには持てているか、なんて明日思ってみよう。実はオレ、花の名前は殆ど知らないが。人なんて、花よりずっと格下で、小さく生きている。って思う。
藤原はその花を静かに心の中に取り込んだ。心の中で花を咲かせた。花は人の心にある何かを刺激した。植物も人も輪廻る。
もしかしたら藤原はたとえはハルジオンでも何でもよかったのかも知れない。ハルジオンが自分の内にあった「夢と希望」を思い出させてくれた。痛みの代償に溺れて埋もれてしまった「彼ら」をもう一度自分の心に咲かせることができた。何度も繰り返し聞ける歌。分厚いギター音の積み重ねも迫力がある。
「揺れる」と「揺るぎなき」のオモシロさ。
06.ベンチとコーヒー

不思議な曲。自嘲気味に弱く歌う。「まいるな」なんて格好悪い言葉をわざと目立つように使っているように思う。
いいひとのテーマってロックには珍しい。しかし、意外と天体観測でハマって、好きになる出口はこんな曲だったりして。
07.メロディーフラッグ

静かなアコギからのアルペジオに始まって、演奏は全体に抑えられている。しかし藤原の唄は熱い。フラッグなんて本当熱い象徴だよな。人生応援歌。昨日は消されてしまうんだから、このメロディと歌を聞くんだ。そして高らかに歌おう。昨日のニュースは忘れられて、歌は残る。だからオレ達は幾つになっても、ロックを歌うんだぜ。
08.ベル

このアルバムの中では、この曲は抑え目にアレンジされて、それが意外と耳に残る。ギターのフレーズもウエストコーストのそれっぽい。少し軟弱な僕。感傷的になるギリギリのところでこの歌はまとめられている。「耳障りなベル」がタイトルになっていて面白い。ただし、その「耳障り」が暖かさに繋がってるんだね。
泣いた僕を彼女には知られないんだろうが、聞き手の我々には暴露してしまうというオチ。も面白い。

関係ないけど、切符がないって分かるの寂しい。手にあると思っていたものがなぜか無い、都会のルールからはみ出してしまって、大したことないようで、少し孤独だ。みんなポケットに間違いなく切符持ってるんだから。

09.ダイヤモンド

藤原はツアーの途中でぶち当たり、この詩を書きなぐったんだろう。後半の歌詞が鍵である。弱い自分を置き忘れて、勝ってきた自分の最近を少し恥じる。誰しも自分の勝ち「見た目にイイ自分」を信じたい。或いは、うまくいく時は、暫くこの幻想に酔うことができる。こんなことが、永遠に続くんじゃないかと。そしてそれにも気付かず。しかし、立ち止ると、それが果たして嘘だとわかるのだ。
この歌をどうにか完成させて、また旅に出る。これから、この唄をリュックにつめてくれ。
弱い自分、強い自分・・・今までこんな歌詞はオレは恥ずかしかった。敢えて彼は表現する。青く練られていないこの言葉をリュックに詰めて。
これは彼の歌だ。そしてそれが普遍的にオレたちに語りかけてくる、ベストソングだ。
藤原の歌で、それがオレらの歌になる。
大事なモンはいくつもない。それがなかなかわからない。自分がもっとも近くにいることも、実は自分が一番よく分かっていない。受け止める力を自分につけていきたい。強くて弱い自分、ただ一人、我がの人生。
10.ダンデライオン

カントリーぽい出だしのめずらしい曲。ライオンはいつも強くて孤独さ。タンポポは強くも弱くなく風に揺れる。
こういう時代、男は両方になりたいなんて思ってしまうのね。
世の中、熱い涙と、冷たく感じる涙がある。
成れの果てが金色の鬣のように光るタンポポの花じゃあ、死に様もまたいいね。
ライブでの人気曲。CDでもライブ風の一発取り感覚。
みんなの手が大きく付き上がって、
揺れていく唄。
11.(隠しライブテイク)

所謂、おまけ。ライブに行って確かめれば?たまにやるのかな?