たれちの子守唄-くろス・織姫、愛の聖杯編

                          ・・・・・・・パッチワーク小説-3.3(2002.8.17-10.1)    

  
 怪人コトモスの謎は、小トモスから、古都燃す、さらに、子どもスへと。。。いくぶん疲れてきた中で、なんとか大団円をむかえた解決編。


73   さしさわり、あります? 2002/08/17 22:39:53  ひつじ@羊亭  

ともす一行は、マグリットの扉に飛び込んだ。ここでとんでもないところにつながると話はさらに混乱するのだが、旧暦の七夕とかいうしばりも考慮しつつ、薔薇星雲らしきところにやってきた。空を埋め尽くす蜘蛛の糸。その赤から紫に変わるような不気味な色を見て「薔薇」と名づけたとすれば、名付け親はずいぶん皮肉屋だったにちがいない。

「これが、薔薇星雲というやつですか。」
ひつじは空を見上げながら言った。メカたれっちに乗った古都姫が空中を飛んでいるが、あんまり美しい景色にはならない。

「で、ここは?」
「薔薇星雲の主星、イスカンダル星。間違いないです。」
Fは、自分のマグリットの扉でたどり着いた先に疑問を投げかけたともすに不満げだ。

「でも、なんというか、ここ、ギリシャみたい。むこうに見えるのは、オイディプスがアポロンの神託を授かったデルフィだし、ここって王の一行と行き会った山道じゃない?」
ともすの言葉が棒読みになってしまうのは、なんでも取り込もうとする演出に無理があるということだ。だが、この際、なんでもとりこんでしまおう。

「あっ パピー!」「えっ!?」「の声!」
てす子がかけだした方向には、小屋があった。中から聞こえるのは、確かにクロス氏の声だ。言い争いをしているのか、語気が荒い。
「たれっち、とにかく急ぎましょう。オトヒメが追いついてくるとやっかいだわ。」
てす子を追いかけるともすたちの上を、古都姫とたれっちは追い越していった。

だが、やっかいなことは起こってしまう。

「とおちゃくなのお〜〜〜」
そのさらに頭上から、なごえもんとオトヒメが現れたのである。


74   変わり果てたミシマ 2002/08/18 11:37:24  ゲーテすこ 

くろスの言い争っているかのようにも聞こえる声は、激しい愛の営みによるものだった。

ミシマは変わり果てた姿になっていた。一同は恐怖に凍りつき、てス子はそそうをしでかした。
それを見たともすが呟いた。
「秘すれば花」
と。

ひつじはくろスの様子が気になるようで、キセキを誘ってのぞきを敢行した。いざとなったら彼に罪を着せようという腹づもりなのだった。
こと姫とたれっちは怒り心頭に達していた。皆を追い越していったはずだったのに、ひつじ等の方がなぜか先に小屋に到着しているし、今こうして乙姫@なごえもんと対決するため、無理矢理Uターンさせられてヒメナゴンに対峙させられている。こと姫は叫んだ。

「状況がムチャクチャよ!作者出てこいっ!!」


75   迷走の果てに 2002/08/18 15:53:13  ミシマアキラ 

「呼んだ?」
ふらりと、何処にあるのかは分からない白い扉からミシマが姿を現した。
「え? あれ? あれは、アキラちゃんじゃないの……?」
古都姫は変わり果てたミシマと自分の眼前に現われたミシマとを、交互に見比べて首を傾げている。
「ミシマ、ということになっているようね。あたしは、何処からかあたしを呼ぶ声がしたから、出て来ただけ。ただし、呼ばれたのはあたしだけじゃないような気もするけど、でも、ミシマの筆に於いて作者と名乗れるのはあたししかいないし」
「????」
「ああ、でも、このワンパターンなドラマティックアイロニーには飽きたわ。ここに落ち着くしかないようならば、あたしは一抜けるわね」
ミシマは、ひょいと白い扉の向こうへと踵を返す。

「待って!」
古都姫の制止に、これは礼儀でしかないと言いたげに、緩慢な動作で足を止める。
「吉本では、3回はお約束よ」
真剣な表情にも関わらずワケの分からない古都の言葉に、ふっ、と溜息を吐くミシマ。
「あいにくと、お笑いはよく知らないものでね」
ぱたん、とお行儀良く白い扉は閉められる。

「アキラちゃん……!」
その言葉に応じるように再び白い扉は開いた。
「あたし、他の小説書いてるから。ぼちぼち他所様からも催促されてるし。それから古都、あんた、漫画描きかけでしょ。大風呂敷広げて回収しないんじゃタチ悪いわよ。あ、仲介デザイン事務所からメールも来てたわよ。仕事もキリキリやんなさいよ」
吐き捨てるように言い放ち、扉は今度こそ本当にきちんと閉まった。
はぁ、と古都は深く溜息を吐き、「変わり果てた」ミシマの服の裾を摘まみ上げる。
「アキラちゃん、本当にどっちもいなくなっちゃった……」


76   決戦、薔薇星雲 2002/08/20 01:37:59  WakiTomos 

古都は呟いた。とにかくこれでミシマの心配はなくなった。クロスの安否はひつじとキセキが見守っている。友巣はどうしたのだろうか?薔薇星雲の気候が会わないらしく具合が悪そうだ。そそうをしたてす子は薔薇星雲の天の川で下着を洗っている。自分の締切と漫画のこともある。そうなのだ。悪者はちゃっちゃと片づけてしまおう!ウルトラマンだって3分だ!水戸黄門も印籠出したらあっという間だ!頑張れ古都!私の辞書に不可能と締切という文字はないっ!

「行くわよ!メカたれっち」。重力から解放されたたれっちは、陸をよちよち歩くペンギンが海の中ではイルカのように素早くしなやかに泳ぐのに似て、忽ち空に舞い上がった!古都はオリハルコンの剣を翳して叫んだ「乙姫、覚悟!」。

「え?なにを〜〜〜〜?何を覚悟するのお〜〜〜〜?」
なごえもんがのどかに聞き返した。
「私に退治されることをよ!」
古都は断言した。
「どおしてえ〜〜〜〜〜?」
「乙姫は七夕連続殺人事件の犯人の共犯でしょうっ」
「そおなの?乙姫さま〜〜〜?」
相変わらず場違いに暢気な声でなごえもんが聞いた。

「その件は、弁護士を通して欲しいんだけど」
乙姫は唐風の長い衣の袖を口に当てて言った。
「会わないよ〜そのセリフ」
メカたれっちが鼻を鳴らした。
「あらそお?じゃあ、シャネルスーツ着てカルチエの宝石をじゃらじゃらさせながら言えばいいわけ?」
乙姫がしなを作ってメカたれっちに揺れる眼差しを送った。だが、その流し目に悩殺されるにはたれっち3歳は若すぎた。
「......う〜ん、そうじゃなくてね、どっちも乙姫さまのキャラに会わないのね。それに、ほら〜猪八戒が使いそうなその隠してる三又の槍とか持つとするとさあ〜やっぱりシャネルスーツより唐風だよねえ〜。」
「ふふふふふ、ばれちゃあ仕方がないわねえ〜」
乙姫は肩に羽織っていた長い絹衣をはらりと落とした。そこには血糊のべったりとついた槍が鈍く光っていた。乙姫はけたたましい嗤いを上げながら槍を掴んで頭上でぐるぐると回した。なごえもんが槍を避けながらふわふわと日傘の役割を果たしている。

「かかっておいで!古都姫!」
「行くよ、たれっち」「ラジャー!」

メカたれっちは素早く後ろに回り込み、乙姫に突進した。古都は両手で剣を握り、乙姫の背中を狙って突いた。乙姫は振り返り、槍の又で受ける。
ばッ
と火花が散った。メカたれっちは素早く引き、また右へ、左へと乙姫の死角を狙い古都と共に突進する。乙姫は槍を振り回し古都の剣を薙ぎ払った。
「互角か、それ以上か?!これでは埒があかないわ」
古都は歯がみした。
「長く重いモノを持ってると、ペンを持つ手が震えて漫画が書けなくなる.....」
「古都姫、集中してよ!」
メカたれっちが諫めた。
「ごめんたれっち」
「ねえ、必殺技ってないの?乙姫ってオールマイティに強そうだからさあ。いくつか前にタイトルで入れて伏線張ったでしょお?必殺技は?」

考えてなかった!などと言うことは今更出来ない。今考えるのだ!今!「オーリーハールーコーーーーン」じゃ芸がなさ過ぎであることは直ちに解る。ううん、何故こんなことになったのだ。もともとイラストレーターの私が....。新撰組の漫画が私を待っているのに.....はっ、そうだ!この手がある!
「オリハルコン、Gペンになるのよ」
オリハルコンは直ちにGペンに変形した。古都はGペンになった剣を真っ直ぐ天に突き上げて叫んだ。

「この世の闇を統べるものよ、そのひとしずくをこのGペンに与えよ」
Gペンの先には闇よりも黒いインクのようなものが湧き出した。
「たれっち、今よ!乙姫のところへ!」
メカたれっちは再び乙姫の所へ直進した。乙姫が振り向いた刹那、古都は掲げた剣を振り下ろした。
「墨汁アタック!」
「きゃああああああっ」
Gペンから振り下ろされた黒い液体が容赦なく乙姫の顔と見開かれた眼を直撃した。
「オリハルコン、戻って!」
再び剣に戻ったオリハルコンを手に古都は再び戦闘態勢に入った。

「ちょっと、タイムなのお〜〜〜〜〜〜」
なごえもんが長閑に言った。
「何ですってえ!」古都姫が髪を逆立てて叫んだ。阿修羅のようだ。
「だあってえ〜〜〜〜。あたし疲れてしんじゃいそうなの〜〜〜〜〜。もう一歩だって動けないわあ〜〜〜〜。」

そう言えば、古都がオリハルコンに墨汁を溜めている間、乙姫は全く攻撃を仕掛けて来なかった。これはなごえもんが疲れて動けなかったからだったのか。
「乙姫さまあ〜あたし試合放棄したいの〜。このままじゃ死んじゃうから、乙姫さまに逆らって殺されるのとどっちもどっちだしい〜〜〜〜〜。解放してえ〜〜〜。」
心なしか声が弱々しい。古都姫とたれっちは顔を見合わせた。顔グロな乙姫は、槍を持つ手を下ろすして、着物の袖で顔を拭き、その汚れをしげしげと眺めて、ふっと笑った。

「そう。私も麗しの顔を汚されて美女が台無しだわ。出直して来るか....。」
乙姫は言うと、長い着物の袖からどこでもドアを引っ張り出した。ドアは緑に染められた海蛇の皮が張られていた。「趣味悪い」と古都が呟いた。
「古都姫、また会おう。なごえもん、ご苦労。私は帰る。織姫によしなに。」
「またって.....」
古都姫が聞こうとしたが、それに答えず、乙姫はドアを閉めた。
「二度と会いたくないのに....」


77   電波変換版 決戦、薔薇星雲 2002/08/20 02:06:14  WakiTomos

古都は呟いた。逆子で生まれてきたくせに。とにかくこれでミシマの心配はなくなった。どうしよう、今年も赤潮で全滅だよ。クロスの安否はひつじとキセキが見守っている。もしそれが本当だとしたら考古学的な大発見ですよ。友巣はどうしたのだろうか?薔薇星雲の気候が会わないらしく具合が悪そうだ。一つ取っては父のため。二つ取っては母のため。三つ四つは幼い弟妹に。そそうをしたてす子は薔薇星雲の天の川で下着を洗っている。無能な連中のいいわけさ。自分の締切と漫画のこともある。どうしてそんな嫌な顔するの?そうなのだ。ポジティブシンキングだと〜?現実を直視しろ、現実を!悪者はちゃっちゃと片づけてしまおう!ウルトラマンだって3分だ!水戸黄門も印籠出したらあっという間だ!頑張れ古都!私の辞書に不可能と締切という文字はないっ!

「オークションで高値で売り飛ばした行くわよ!メカたれっち」。そして今日の草野球の対戦チームは「つよいーズ」。先週の「がんばるーズ」よりも強そうです。重力から解放されたたれっちは、突然視力が回復し背がグングン伸びて陸をよちよち歩くペンギンが海の中ではイルカのように素早くしなやかに泳ぐのに似て、お父さんのプロデュースで忽ち空に舞い上がった!古都はオリハルコンの剣を翳して叫んだ「人に厳しく地球に優しい乙姫、歳に似合わず覚悟!」。それにしてもでっかいホクロだな。

「レーザーで焼き切るという画期的な方法でえ?なにを〜〜〜〜?何を覚悟するのお〜〜〜〜?」
なごえもんがのどかに脳直で聞き返した。それができれば私の弟子にしてやろう。
「墜落したUFOの保管場所になっている私に退治されることをよ!」
古都は断言した。私とあなた、どちらの方が美しいか勝負よ。
「遠回しに言うとどおしてえ〜〜〜〜〜?」
「乙姫は七夕連続殺人事件のカリスマ美容師の共犯でしょうっ(ここで感きわまり思わす涙をハンカチでぬぐう)」
「そおなの?乙姫さま〜〜〜?」
相変わらず場違いに暢気な声でなごえもんが脳直で聞いた。」

「冷笑を誘うその件は、今日はちょっと趣向を変えてみて弁護士を通して欲しいんだけどの名には悲しい由来がある」
乙姫は唐風の長い衣の袖を口に当てて言った。そして改造人間である(と思いこんでいる)。
「会わないよ〜そのセリフ」
メカたれっちが鼻を鳴らした。それに除霊も済んでるし。
「あらそお?じゃあ、私は社長だけどシャネルスーツ着てカルチエの宝石をじゃらじゃらさせながら言えばいいわけ?」
乙姫がしなを作ってメカたれっちに揺れる眼差しを送った。毎年水不足には悩まされています。だが、死ぬ気になってその流し目に悩殺されるにはたれっち3歳は若すぎた。今日から私も女子高生。
「ピカソは偉大な画家なのに......う〜ん、全てを失ってでもそうじゃなくてね、どっちも乙姫さまのキャラに会わないのね。もう暴力は振るわないので戻ってきてください。それに、更に不安をあおってほら〜猪八戒が使いそうなその隠してる三又の槍とか持つとするとさあ〜やっぱりシャネルスーツより唐風だよねえ〜。」
「ふふふふふ、ばれちゃあ仕方がないわねえ〜」
乙姫は肩に羽織っていた長い絹衣をはらりと落とした。じゃあ、僕はどうすればいいんだろう?そこには血糊のべったりとついた槍が鈍く光っていた。あきれた奴なのだ。乙姫はけたたましい嗤いを上げながら槍を掴んで頭上でぐるぐると回した。それしか方法は無い。なごえもんが槍を避けながらふわふわと日傘の役割を果たしている。小学校2年生の時の担任の先生が。

「かかっておいで!古都姫!」
「遺伝子組換え食品だけを与えて育てた行くよ、理由がどうであれたれっちと神がうるさい。俺は宇宙からの使者。」「全米で大ブームラジャー!」

メカたれっちは素早く後ろに回り込み、その気持ちを忘れずに乙姫に突進した。夢なら覚めないで。古都は両手で剣を握り、揃いも揃って乙姫の背中を狙って突いた。オタク顔なのに。乙姫は振り返り、地上最後の楽園を求めて槍の又で受ける。
ばッ
と火花が散った。もちろん女だからといって手加減はしないぞ。メカたれっちは素早く引き、また右へ、表面的には左へと乙姫の死角を狙い古都と共に突進する。何だかとっても得した気分。乙姫は槍を振り回し古都の剣を薙ぎ払った。そしたら持病のアトピーが悪化。
「問題を避けるため互角か、涙が枯れるまでそれ以上か?!これでは埒があかないわと神がうるさい。俺は宇宙からの使者。」
古都は歯がみした。こんなに辛い思いをする位なら、もう恋なんてしない。
「注目するに値する長く重いモノを持ってると、孤独に負けずにペンを持つ手が震えて漫画が書けなくなる.....」
「あっさり古都姫、若い娘を生け贄に捧げる事で集中してよ!」
メカたれっちが諫めた。」
「少年少女だけで構成されるごめんたれっち」
「ねえ、朝日が昇ると同時に必殺技ってないの?乙姫ってオールマイティに強そうだからさあ。そして枕を涙で濡らしたまま泣き疲れて眠りにつくのでした。いくつか前にタイトルで入れて伏線張ったでしょお?必殺技は?」

考えてなかった!などと言うことは今更出来ない。結局最後は包丁を振り回して大声で罵詈雑言と「別れる」「別れねえ」の押し問答。今考えるのだ!今!「一人きりで悩んでないでオーリーハールーコーーーーンってつまんない」じゃ芸がなさ過ぎであることは直ちに解る。クルマのウインカー壊れたので、最近はずっと手信号で交差点を渡ってる。ううん、何故こんなことになったのだ。うわ、もげた!もともとイラストレーターの私が....。「あんたなんて産まれてこなければ良かったのよ!!」って親に言われたから、11月7日は家出記念日。新撰組の漫画が私を待っているのに.....はっ、爪をたてて嫌がる犬を引っ張ってそうだ!この手がある!
「乱獲により個体数が激減しつつあるオリハルコン、Gペンになるのよ」
オリハルコンは直ちにGペンに変形した。古都はGペンになった剣を真っ直ぐ天に突き上げて叫んだ。そんな今こそ原発です。

「この世の闇を統べるものよ、日ごろの罪滅ぼしの意味でそのひとしずくをこのGペンに与えよ」
Gペンの先には闇よりも黒いインクのようなものが湧き出した。今こそ合体ロボの出撃だ。
「自ら志願してたれっち、昭和の思い出を語りながら今よ!乙姫のところへ!」
メカたれっちは再び乙姫の所へ直進した。ここではみんなそうさ。乙姫が振り向いた刹那、雑念を全て取り払い古都は掲げた剣を振り下ろした。。
「ふっきれていない墨汁アタック!」
「アラスカ生まれ、チュニジア育ちのきゃああああああっ」
Gペンから振り下ろされた黒い液体が容赦なく乙姫の顔と見開かれた眼を直撃した。そっちは崖ですよ。
「オリハルコン、憲法の原点に立ち戻って戻って!」
再び剣に戻ったオリハルコンを手に古都は再び戦闘態勢に入った。小指立てるのやめてよ。

「その頃日本海沖合いではちょっと、タイムなのお〜〜〜〜〜〜」
なごえもんが長閑に言った。ニキビが悪化して。
「何ですってえ!」古都姫が髪を逆立てて叫んだ。可愛いと思ってうかつに近寄ると首をはねられるので注意。阿修羅のようだ。それから怪しい人を見かけたら、すぐに吠えるのよ。
「最終奥義・だあってえ〜〜〜〜。きっと病気のせいね。あたし疲れてしんじゃいそうなの〜〜〜〜〜。しかし私は私です。父の思い通りになるつもりはありません。もう一歩だって動けないわあ〜〜〜〜。」

そう言えば、古都がオリハルコンに墨汁を溜めている間、人生を諦めて乙姫は全く攻撃を仕掛けて来なかった。僕が楽しければ良いんですよ。これはなごえもんが疲れて動けなかったからだったのか。落ちる所まで落ちたな。
「乙姫さまあ〜あたし試合放棄したいの〜。それにしても首が太いな。このままじゃ死んじゃうから、乙姫さまに逆らって殺されるのとどっちもどっちだしい〜〜〜〜〜。すっげー感じ悪い。解放してえ〜〜〜。」
心なしか声が弱々しい。そんなに悲しそうな目つきで、私を見るなよ……。古都姫とたれっちは顔を見合わせた。そうやって何でもかんでも「戦国武将」に例える所があなたの悪いクセですよ。顔グロな乙姫は、手後れになるその前に槍を持つ手を下ろすして、涙が枯れるまで着物の袖で顔を拭き、酒の勢いも手伝ってその汚れをしげしげと眺めて、淫らな下着を身に着けてふっと笑った。「食べてはイケナイ」と分かっていながら、思わず「パクリ」。

「そう。私も麗しの顔を汚されて美女が台無しだわ。とはいえ、いつ作ったかの記憶は封印してから食事。出直して来るか....。」
乙姫は言うと、アメリカ生まれの新成分で長い着物の袖からどこでもドアを引っ張り出した。お母さんが。ドアは緑に染められた海蛇の皮が張られていた。まあ、都合の良い解釈ですな。「競馬を極める趣味悪い」と古都が呟いた。それは人類に残された最後の開拓地である。
「冷笑を誘う古都姫、また会おう。金髪美女をはべらせて。なごえもん、上が3人とも姉だったのでご苦労。さすがにみんな引いてましたよ。私は帰る。おならプ〜。織姫によしなに。」
「胸を熱くするまたって.....と聞いただけで冷や汗が」
古都姫が脳直で聞こうとしたが、会社をちょっとクビになってそれに答えず、「低価格」を武器にして乙姫はドアを閉めた。次は警告だけでは済みませんよ。
「両手を合わせて二度と会いたくないのに....」


78   妖婦なごえもん本領発揮 2002/08/20 21:38:04  たれっち

「ふ〜ん、本音が出たね、古都姫」
きんとんの上に気怠そうに寝そべっている友巣が言った。古都姫は友巣にキッと振り返った。
「ホントは闘うのやだったんでしょ?」
「悪い奴は滅びるべきよ」
睨み合う二人の間になごえもんがへろへろと舞い降りてきた。

「もうだめなの〜。あたしを休ませてえ〜〜〜」
唖然として一瞬眼を奪われた二人は、なごえもんがきんとんの上にふわあ〜っと倒れ込むまで眺めていた。そして、気を取り直し、再び睨み合った。友巣が口を開いた。
「でもさあ、状況証拠しかないでしょ。悪いのかなあ?彼女....」
「ね、ねえ、なごえもんちゃん、怪人コトモスと乙姫って同一人物なの?日傘してたんでしょお?」
メカたれっちがなごえもんに聞いた。
「う〜〜〜〜ん」
と気怠そうになごえもんが口を開いた。
「わからないの〜。だって、あたし乙姫さまの真上にいるじゃない〜?だから首がちょんちょんと撥ねられる所は見える時は見えたけどねえ〜乙姫さまがやってるのか乙姫さまの近くにいる人がやってるのかわからないのお〜〜〜〜」
「別の人がやったとしても、命令したのは乙姫でしょう?」
古都姫は言った。
「どおかしらあ〜〜〜?見物してただけかもお〜〜〜」

「乙姫さまにしても君にしても.....なごえもん、君、止めなかったの?道義的に問題ないかなあ?」
たれっちが聞いた。
「ふう〜〜」
なごえもんが怠そうに溜息をついた。
「ええとねえ〜〜〜〜〜目の前で人が殺されているのを止めたら殺されるかも知れない状況の人が黙認してしまうのは、多分法律的には問題ないのねえ〜。でも道義的には責任感じちゃう人もいると思うの〜。でもねえ〜。じゃあ、アフガニスタンの戦場に行ってたまたまそれに出くわしてしまってそういう経験をしてしまった人とそういう事実があるのにニュースも見ないで知らない人がいるとしてねえ〜、後者は知らないから何も道義的責任は感じないのねえ〜。でも殺人を黙認したことには変わりないでしょお〜〜?」
「それで?あなたはどうなわけ?」
友巣はなごえもんに聞いた。
「あたし?人間じゃないから、全ては「然り」なのよ。こうあるべきなんて考えないの〜」
「明快だわね。」
「悩むのは人間だけよお〜。まあ、ほどほどに頑張ってねえ〜。」

「なごえもんちゃんって、なんか凄いねえ....」
たれっちが尊敬の眼差しでなごえもんに言った。
「そう思うのなら介抱してえ〜〜〜〜」
「う、うん」
メカたれっちはたれっちに戻るとそそくさとたれぱんだリュックからたれぱんだドリンクやたれぱんだ焼きを取り出して、かいがいしくなごえもんに食べさせてあげた。
「う〜む。ある意味、男ったらし。さすが織姫の仲間.....」
古都姫と友巣は、呆然と2匹を眺めていた。


81   アキラ召還 2002/08/22 01:19:58  たれっち  

しかし「作中ミシマ」の「変わり果てた姿」問題も残っていた。
退場が早すぎたミシマから色々と証言を取らなければならない。
「アキラちゃん、召還!」
古都姫が宣言した。

「え?えええ?だって、ミシマアキラさん、今「椿説・五右衛門夜話」書いてるんでしょお?だめだよ邪魔しちゃあ。ぼく、早くごんちゃんに会いたいもんっ」
たれっちが膨らんだほっぺをさらに膨らませて言った。
「そんなことないわよお。ジャニーズ・ショップで油売ったりしてるんだから」
古都姫、いいのかそんなことばらして。

「ををを〜い、アキラぁ〜これ以上ばらされたくなかったらでてこ〜い」
「えええ〜ん、愛と正義の美女戦士じゃなかったの〜?脅して召還させるなんてえ〜」
たれっちは泣きながら古都の黄金の甲冑で煌めく足にすがりついた。
「人と場合によっては、マキャベリズムもありなの」
古都姫は凛々しく微笑んだ。


82   魔法陣に星が足りない 2002/08/25 03:39:01  ミシマアキラ  

「ジャニーズショップついでに漫画も読んでるわ、ごめん。って言うか、ジャニーズショップに行ったのはあんたよ、古都」
「どっちだって同じよ、アキラちゃん」
召還されたミシマはお星様模様のパジャマの腕をまくり、洗ったばかりの髪の毛をがしがしとタオルで拭いている。

「七夕は終わったわ」
ミシマは何処から取り出したのか、観光地で売っているような安っぽい煙管でコツンと古都の額を叩いた。
しゅるしゅるしゅるっ、と白煙が舞い上がり、古都のコスプレ扮装は解けてしまった。
「あっ、どうして?!」
たれっちがあげた驚きの声は、古都の扮装が解けたことに対する驚きなのか、それともミシマの煙管が何故古都の扮装を解くことが出来たのか理解出来ないが故の驚きなのか、はたまた事件を解決しないまま古都の扮装を解かせてしまったことに対する驚きなのか、そのいずれとも判然としない。声をあげた本人でさえ。もしかしたら、何故煙管なのか、ということを問題にしただけかも知れない可能性さえある。

「『変わり果てた』アキラちゃんの説明をして、アキラちゃん」
「さてね。どう『変わり果てた』姿なのかしら」
「え……」
「ほら、説明出来ないじゃない」
「それは、誰も書いていないから……」
「そうね」
ミシマは足下に転がっているミシマを蹴り転がした。ごろん、と仰向けになったミシマは確かに『変わり果てた』姿なのである。
「これは、水死体ね。青黒くぶくぶくに膨れ上がって、皮膚は破れている。そういうことにしましょう」
「そういうことにするのね」
「てス子ちゃんがそそうをしでかすくらいだから、グロテスクでなければならない。そして乙姫様にやられたとなると水関係。その二つの条件を満たすと土左衛門が一番適当だわ」
「どうして溺死体を『土左衛門』って言うの?」
「はい、そこ。まぜっ返さない」
ごく純粋な疑問を口にしたたれっちに、ミシマは厳しく煙管を突き付ける。

「何故ミシマは『変わり果てた』姿になったのか。それは乙姫様の怒りを買ったからにほかならない。何故乙姫様の怒りを買ったのか、気に入らないことを言ったのか、やったのか」
「やらなかったんでしょ」
「その通り」
「出来るわけないじゃない」
「やろうと思えば舌も指も使えるけどね」
「やろうと思わなかったのね」
「まぁね。美人はそりゃぁ好きだけど」
火をつけない煙管をいたずらにくわえていたミシマは再びそれを口から出してくるくると回し弄び、コツンと古都の額をまた叩いた。しかし今度は何の変化もない。
「女は酸味が強くてね」
ふとミシマが目を遣ると、友巣がてス子の耳を両手で押さえている。
「これは失礼、子供に聞かせる会話じゃなかった」
たれっちも目を白黒させているが、元から白黒しているので変化はよく分からない。
「そんなわけで、ミシマは乙姫様の怒りを買った。適当に言葉ではぐらかすつもりだったが、『言葉を知っているだけじゃ本物じゃない』とひつじ氏を却下した乙姫様にそんなもん通用するはずがない。己の美貌を過信し過ぎたわね」

「待って、アキラちゃん」
古都の制止に、ミシマは嫌な顔をする。
「アキラちゃんは美貌の人じゃないわ」
「うるさいよ、あんた」
「ジャニーズくらい、可愛くないと」
「追い討ちかけるなって」
後ろでFが呟いた。
「さて、では、七夕を過ぎてしまった今、クロス氏はどうなったのか」
ミシマは煙管を織姫とクロスのいる小屋に向けて突き出した。
召還されたパジャマミシマを除いて全員、小屋へと走って行った。

「あっ!『変わり果てた』姿になっている!!」
ユニゾンのセリフが空にこだまするのを確かめて、ミシマは戻った。


84   千と一夜の物語 2002/08/26 00:18:22  ひつじ@羊亭  

作中のミシマに作者のミシマまでからむのかよ、と一瞬あせったが、作者(?)のミシマが静かに帰ってくれたので、一安心。でも、このまま退場できると思ってるのか?

さて、小屋の中のくろスは「変わり果てた姿」になっていた。なんと、ロリ系御用達のメイド姿になっていたのである。
「くろ子や、お茶をいれてくれるかしら」
「はい、織姫さま。あっ、もうしわけありません。ランプのアルコールを切らしておりますので、買ってまいります。」
「早くしてくださいね」

小屋から出てきたくろスを、友巣一行が取り囲んだ。
「パピー どうして!」
「これには、深いわけがあってね」と、おざなりな子ども向けドラマのようなおざなりな説明をしておいて、くろスは向き直った。
「迎えに来るにしては、ちょっと遅いのではないですかな」

「どうしてそういう言い方になるわけ。私たちは幸せそうなあなたたちを見て、このまま暖かく送り出そうかと思っていたくらいなんだから。」
そういうと、友巣はくろスのカツラをとった。足元では、たれっちが白のハイソックスを突き破っているスネ毛の本数を数えている。
「そう、古都姫にまでなった私の立場はどうなるの!」

くろスは、別に「姫」でもなんでもなくなった古都を一瞥した。
「「なった立場」を気にしてるうちは、コスプレなんてできませんよ。お嬢さん。」
「じゃあ、あなたの今の姿はなんだっていうの。」

「だから遅いっていうんですよ。ご存知のとおり、今年の七夕は過ぎてしまいました。本当なら、私は今頃北海道の山にでも捨てられていたでしょう。そこをなんとか私のテクニックを使って千と一夜のプレイをするということで、織姫の決意を遅らせているというわけです。」
くろスの話には説得力があるものの、姿に違和感がある。
「今ごろここにやってくるということは、私が聞きとめた程度には織姫や乙姫の情報は手に入れたんでしょうね。織姫がほしがってた「聖杯」はどこです?」
「聖杯!?」
「なにそれ!」

「まあーったく、言ってるほどのことはしない人たちだ。私はこれでも命をかけてやってるんだ。織姫がまってますから、これで。」
くろスは、友巣から乱暴にかつらを奪い取ると、自分の頭にヒョイと乗せ、小屋の中に戻っていった。


86   シュパッ!シュパッ! 2002/08/26 23:00:05  ゲーテすこ   

「ああ〜っ、ああ〜っ・・・」
油断していたミシマは背後から乙姫の必殺技「あられムチ」を食らい、一瞬にして少女趣味のパジャマを切り刻まれ、あられもない姿になってなすすべなく倒れた。水ぶくれのミシマと全裸のミシマ、二体のミシマが悲しくもそこに転がっていた。
「なんてこと・・・」
ともすはわざとらしく両手を天にかざして嘆いて見せたが、表情一つ顔色一つ変わっていないところから察するに、大して驚いてもいないようだった。乙姫の攻撃しそうなそぶりに気付いていながらミシマに声一つかけなかった彼女は、もしかすると、オトナゴン(乙姫+なごえもん)のボス?黒幕?・・・だって乙姫の戦意が喪失したかのようにみせかけたのも彼女だったし・・・・・
「甘かったわねぇ〜、私が戦闘放棄するわけないじゃーん!」
そう叫ぶと乙姫はウキャキャと笑い、小屋を目指してピョンピョンと跳ねていった。

「あ、そういえば・・・」
「なあに?ひつじさん」
ひつじはてス子に向き直り、甘い声で囁く。
「私の記憶が確かならば、聖杯を持っていたのは織姫で、それを乙姫とコトモス(こと+ともす)が狙っていたのでした」
「パピーが危ないわ!」
「てゆうか、その聖杯とかいうのが手に入ったら、アキラちゃんを蘇らせることが出来るのかも?・・・ねぇ姉、そう思わない?」
と言ってともすを見たことは凍りついた。ともすの青い目がギラギラと燃えていたからだ。彼女の目は温度を持ちすぎて徐々に真っ白に変色した。
「そんなに聖杯がほしいの?」
と、てス子。するとなごえもんが口を挟む。
「ここにねえ〜、真っ赤に燃える太陽みたいな「元気玉」があるのよう〜、これで乙姫をやっつけられないかしらぁ〜」
「しかしまあ、ともすさんは酸味が強いっ!!」
「はぁ?」
一同の注意は唐突に不謹慎な言葉をもらしたキセキに釘付けに。
ひつじがおそるおそる尋ねる。

「というと、味わわれたことがおありで?」
「おありも何も、大アリですよっ!!!」
「な、な、なんと・・・」
「姉!ほんとなの?!」
「いやまあ・・・」
言葉を濁すともす。
「どうなの?」
責め立てること。
そんなことにひつじが耳打ち。
「彼女を責めてもなかなかしっぽは出さないでしょう。それよりも、キセキ氏をつついてボロを出させる作戦の方がいいのではないでしょうか?」

ひつじはことと共同戦線を張ろうと企んでいる様子。ことは思案しつつたれっちをいじめて遊ぶキセキの動きを追っていた。キセキはいとも簡単にたれっちをサッカーボールみたく足でポンポン蹴り上げて弄び、飽きるとぐしゃっと踏みつけた。
「うぎゃああああ〜」
たれっちの悲鳴にはっと我に返ったことは、何かを思いだしたように叫びだした。
「なごえもん!・・・という言葉からは容易に五右衛門が連想できる。同様に、コトモスからはコスモス。宇宙。オトナゴンからは大人とゴン。ゴンと言えばゴン中山。そして、これからが肝心なんだけど、ともすという言葉からは、トーマス、そう、機関車トーマスが思い浮かぶわ!」
「ゴン中山って、サッカーの?」
てス子が皆に問う。
「たかがサッカーじゃん!ブツブツブツブツ・・・」
白目のともすは一人でブツブツ言っていた。彼女は極限的放心状態にあった。何かに取り憑かれたのか?それともこの姿こそが彼女の正体?・・・生まれついての○×意識・○△意識を無理矢理隠微しようとしたために精神への負担が高じてこうなった?

その頃、そんな彼女を狙い定めたかのように、彼女に向かって「元気玉」がコロコロと転がっていった。


88   こうなったら・・・ 2002/08/27 04:54:09  ゲーテすこ 

「ミシマ=ゾンビキャラってことでいいんじゃないの?」
天国へ通じるドアが少し開き、第三のミシマが顔だけ出してそう言った。若干投げやりな調子ではあった。
「ほら!どうです!私のどこでもドアは天国へも通じているんですよっ!!」
キセキは両手を腰に当てて胸を張り、高らかに叫んだ。全世界に轟くような大声で。

「でもねえ、そうなると、聖杯のありがたみが失われるわねえ」
ともすは一瞬だけ正気に戻って困惑を表し、再び白目になった。
「それもそうね。難しいところよね」
ことが呟く。
「でも若さを保てるのは聖杯だけよ」
とてス子。
「あ、そっかぁ〜、なるほどねぇ〜。なら必要だわ、特に私と姉には。。ところでアキラちゃん、どうして隠れてるの?どうして今回は顔だけなの?」
「だってこんな恰好見せられないし。何かコスプレ大会だって言うから張り切ってドレスアップしたのはいいんだけど、張り切り過ぎちゃった・・・」
「見せて見せて!」
てス子は勢いよくミシマの方へ駆けて行ったが、勢いがよすぎて、スポッと扉の中に入ってしまった。
「てス子ちゃん!」
たれっちの叫び空しく、てス子からの返事はなかった。

「あきらめましょう。それよりも・・・」
ひつじはそう呟き、オトナゴンの方へ歩を進めた。何かいい考えを思いついたらしい。


90   無知は強しなのか? 2002/08/31 16:27:40  WakiTomos  

実は、かつてひつじさまが書かれた某下ネタ系らしいスラングもゲーてす子さまが書かれた性的スラングも概念がわからない。だから、セクハラなのかも良くわからない。ま〜た、カマトトぶって、と言われるかも知れないが、そうなんじゃよ〜。随分前にイタズラ電話がかかって来たのだが、「はい」「××って、知ってる?」「は?どなたさまですか」「××××って、知ってる?」「××××さまですか?あの、どのようなご用件ですか?」「............×××って知ってる?」ここに至って漸くイタズラ電話だとわかって、怒り狂って切った。このやろ〜!永遠に呪われろ!え〜と〜。つまり、その系統の語彙が恐らく極端に少ないのだ。誰にでも弱点はある。でも、これに関しては克服する気はないも〜ん。だから教えてくれなくてもいいからね。

閑話休題。
帰ってきた乙姫は高笑いしながらジッポーのライターに火を点けた。なぜジッポーか?に関しては、村上龍の小説参照。あの
シュボッ
という音にこだわる奴が出てくるんだよ。どの小説かって?ずぼらせずにお探し!

「怪人コトモスとは.....」
柔眉の声音で乙姫は言う
「古都を燃やすことで完成するのさ!」

古都燃す!
第二次世界大戦下の米国でさえやらなかったことを!....全然関係ないか。
古都の悲鳴と乙姫の高笑いが空に響く。
「そんなくだらないダジャレみたいなことで死にたくないわ!」

古都はジッポーのライターをかざして追いかけてくる乙姫を振りきって薔薇星雲の天の川に向かった。悪夢のような光景の数十センチ上をなごえもんがふわふわと追って行く。
「古都さまあ〜〜〜〜〜薔薇星雲の天の川ってアブサンよお〜〜。アルコール度数が高いから燃えるのお〜〜〜〜」
「ゴーギャンが好きでしたよねえ」
とFが呟く
「ボードレールとかヴェルレーヌとか....」

「蘊蓄言ってないで助けなきゃ!」
裸のマハ....じゃなかったミシマが乙姫の上着をぐいっと引っ張った。乙姫は後ろにひっくり返った。ミシマは奪った上着を体に巻き付けると、ひつじ氏は乙姫に躍りかかった。そして、やおら上着からハバナ煙草を取り出すと
「済みません、火を貸してくれませんかっ?」
乙姫は、はっとしてライターを差し伸べた。
「まあ...ヘミングウェイみたいですわ」
ひつじ氏はウィンクした。
「ハードボイルドもいけるでしょう?」
「素敵....」
「バランタインのボトルキープをしたいんだけど」
「あら〜っ。ひ〜さん嬉しいわ!キセキさんもご一緒に如何?」
「ぼくは1970年の万博の時にタイムカプセルに入れたウィスキー30年ものを飲んだことがあるんですが...」
「あらあ素敵だわあ、キ〜さん、どんなお味だったの?」
どうやらオミズ系らしい乙姫の条件反射を引き出して場を凌ぐことが出来そうである。

一方、解放された古都とミシマは脳味噌が情報処理能力を超えたデータをインプットしたために白目になったままの友巣をひっぱたいた。
「友巣さん、忘れるのよ!知らない言葉なんて、知らない外国語と同じよ!聞き流せばいいのよ!」
「それって.....スワヒリ語?フラマン語?ポリネシア語?クレオール語?.....」
友巣は目を白黒している。
「知らなければ、全部おんなじ!」
「そうか!」
友巣の目は「聖杯が欲しい」という闘志の目だけになり、青色にまで戻った。
「でも、雲を掴むような話よねえ.....」
「ううん、この唐突さって「リングに賭けろ!」みたいな感じ?」
「どう思う?たれっち」
「ううん、ぼく、なごえもんちゃんの頭に乗ってる葉っぱの裏あたりに隠してあるように思うの」
「さすがたれっち、ただのたれものではなかったのだな」


97   薔薇星雲のアンドロギュヌス 2002/09/05 19:30:33  たれっち   

薔薇色の天鵞絨張りの扉が音もなく開いた。

懐古趣味なセーラーの制服を着たてす子は、幸いなことにお揃いでない出で立ちの、すなわちワンピースを着た女性の袖口を掴んで、しばし呆然と外の様子を眺めた。年長の、背が幾分高い女性も当たりを見回していたが、古都達に目を止めた。
「てす子ちゃん、あの人.....」
「わかってるわ」
てす子は、女性とともにミシマたちに近づいて行った。

「あ、あれ?僕たち飲み過ぎたかな?」
横を通り過ぎていく女性達を見やって、富士奇跡氏が呟いた。
「え?」
ひつじ氏は振り向いたまま、視線が釘付けになった。

「古都さん、ミシマさん!」
てす子は声をかけた。
「てす子ちゃん、おかえりい」
暢気に振り返った古都氏とミシマ氏は、一瞬、彫像のように沈黙した。それから、慌てて介抱していた友巣の顔を見、再び、てす子の隣の女性の顔を見た。

「ええと.........友巣さんって双子だったっけ?それとも僕たち酔ってる?」
ひつじ氏と奇跡氏がグラスを片手に寄ってきた。
「う、宇宙酔いとか....」
古都氏とミシマ氏は顔を見合わせた。
「並んでみてくれるかしら?」
てす子は、友巣を睨みながら言った。
友巣は、古都氏とミシマ氏の腕を払って立ち上がった。
「嫌よ!」
それから、驚くべき跳躍力で後ろに飛び下がった。
「ど、どういうこと?」
ギャラリーがどよめいた。

「小トモスよ」
乙姫が奇跡氏に葉巻を勧めながら言った。
「飛び退いた彼女は身長158センチ、私は163センチ」
漸く女性が口を開いた。
「私が友巣」
「でも他はそっくりなんだよなあ.....」
ひつじ氏は、疑わしい目で自称友巣を見た。
「ここ地球と同じ1Gなの?それとか他の物理的効果で身長が変わるとかない?」
「小トモスらしい人が飛び退かなかったら、それは問題にされただろうけど.....」
ミシマが言った。
「でも、じゃあ、古都燃すは?」
古都氏ははっとして乙姫を捜した。奇跡氏の葉巻に火を点けていた筈の乙姫がいない。全身が総毛立った。思わず振り向くとそこに......
ジッポーのライターで古都のスカートに火を点けようとして屈んでいる乙姫を見いだした。

古都氏は、声にならない悲鳴を上げて、右膝で乙姫の顎を蹴り上げた。乙姫は仰向けに仰け反り、倒れるかと思いきや、長い衣装を翻して後ろざまに転がっていった。そして、小トモスに衝突し、二人は蒼い火花を散らしながら、合体して別の何かに変形していく。全員が驚愕の余り言葉を失っていた。

「コトモスがアンドロギュヌスになったの〜安心してえ〜〜〜〜。」
なごえもんが朗らかに言った。
「一人だと不安だし、欲求不満になるから、別の人に化けたり、やたらと人を誘惑したり、殺して食べちゃったりするけどお〜もう合体したから安定したと思うわあ〜〜〜〜〜。でも、安定しなかったら、また別れて同じことを繰り返すけどお〜〜〜〜。」
「それって全然安心じゃないんじゃないの?」
古都氏が眉を顰めて言った。
「時間の猶予があるだけっていう.....」
友巣がつぶやいた。
「相性が合わないってわかるまでの時間ってどれくらい?」
ひつじ氏が聞いた。
「さあ〜〜〜〜〜〜〜。人によるわねえ〜〜〜〜〜。」
なごえもんは暢気に答えた。
「最短は?」
奇跡氏が尋ねた。
「しらなあい。私、専門家じゃないもおん。でも、偶然居合わせたご近所同士が合体したからねえ〜〜相性が合わない可能性高いかもお〜〜〜〜〜」
悠長な回答が帰ってくるのを待たず、全員がクロスを助けに走っていた。

さて、ところで今回たれっちは登場しない。
何故なら、徹底した傍観者、記述者としてそこにいたから。
かっこつけたんだよおっ!


98   たれっちはドザエモンの歌を 2002/09/06 21:53:34  WakiTomos 

「雁首揃えて何やってんですか、あんたたちは」
クロスは露骨に顔を顰めた。それは、オレンジ色の絹更紗のヴェールを被り、パットを入れたオレンジの胸当て、お臍に宝石、ペルシャのパンツにじゃらじゃらと宝石のついたベルト、という所謂ベリーダンスのスタイルにはあまりにそぐわない表情だった。
「.....クロスさんこそ.....」
小屋の戸口で皆が唖然としていた。答えるのも面倒臭いという風情でクロスは答えた。
「メドレーでやるとすぐ終わっちゃうから、全部やってんですよ、衣装も変えて、モー娘のヒット曲踊りつき。今、ハッピーハッピーウェディングやってるところなんですけどね、それで聖杯は?」
「そんなことより、すぐ逃げましょう。ここは危険過ぎる。」
ひつじ氏が言った。
「毒を喰らわばってね」
クロス〜と呼ぶ織姫の声に「は〜い、ちょっとお待ちを〜」と裏声で答えてからクロスは言った。友巣は、
「てす子ちゃんが危ないかも」
と言った。
「コ・トモス、コト・モスまで来たら、次は、コトモ・ス」
「それが何か?」
「子供のクロス、略してコドモスでコトモス」
「ばんざ〜い、ばんざ〜い」
苦しいギャグを誤魔化すために、ひつじ氏が叫んだ。
「でも、ドザエモンの作中ミシマを蘇らすには、あれは必要だろう」

 かっらだ ぶよぶ〜よ
 ふやけて ぐちょぐ〜ちょ
 そおれがどおし〜た
 ぼく どざえ〜も〜ん〜♪

たれっちが不謹慎な歌を口ずさみながらなごえもんの方に近づいて行った。そして、やおらなごえもんの頭の上に乗っている葉っぱを引きはがした。
「なにをするのお〜〜〜〜〜」
となごえもんが抗議するよりも速く、葉の下から光の玉が飛び出した。


99   どてっ 2002/09/07 02:24:26  ゲーテすこ   

光の玉を踏みつけて派手にひっくり返ったのはともすだった。
「痛いっ!何なのこの玉はっ!」
続いてひつじが、
「アイタタター」
ことも、
「イタイ・・・」
ひっくり返ったまま、ともすが叫ぶ。
「あんたたち何なのよ!こけて痛いのは私だけでしょ!ちょっとは同情してよね!」

「いや、そうじゃなくて・・・」
と言いつつひつじはことを見やる。ことはきょとんとしているので、ひつじが続ける。
「いやね、ええと、その、その、今思いっきり見えてしまったピンクの貞操帯がね、この場においてはちょっと過剰ではないかということなのです」
「はあ?」
「ですから、過剰な自意識による過剰な用心はとてもイタイわけですよ、とてもね。適度に用心するならよいのですが・・・」
「そうね。適度じゃなきゃ変よね。打算的過ぎるし」
口を挟むこと。
「何言ってんのよ!確実に危険を遠ざけるにはこの方法が一番なのよっ!」
「果たしてそれでいいのでしょうか?」
「うんうん」
「世の中には危険を冒さねば得られないものもたくさんあるわけです。あなたが想像している以上にね。危険や煩事を全て排除すれば、そりゃあ安全ではあるでしょう。余計なことに煩わされず、平穏無事ではあるでしょう。しかし、本当の意味で合理的とは言えません。安全を得る代わりに失うものも大きいのです。そのことを納得の上でそのようにしておられるならいいのですが、あなたが時折やってしまうイタイ言動は、そのあたりの経験不足に、つまり自分で決めた一定の範囲内でしか動かないということに起因している可能性が」
ひつじがそこまで言ったとき、ともすがひっくり返ったまま片足を伸ばして水平方向に一気にくるんと回転したので、ひつじ・こと・富士キセキ・合体コトモス・メカたれっち・ニューてス子、彼女のことを心配して寄り集まっていた全員が足を払われ、同時に尻餅をついた。

「うわああっ」
「きゃああっ」
「いったぁぁーい」
「いててててーっ」
「ひどいですよともすさん!どうして私まで?」
最後のはキセキの言。

「ふふん」
ともすはしてやったりの表情で髪をかき上げ、おすもうさんがまわしを叩くようにぽんぽんと貞操帯を叩いて満足げに立ち上がった。若干うさん臭い勝利者のように。
そんな彼らを夕日が染めていた。

「あの変な人たちはあなたの知り合いなの?くろス」
「んなわけないでしょ!全然知らない人たちですよ」
織姫とくろスは互いに寄り添いながら、小屋の小窓から風変わりな光景を眺めていた。
「そうよね、知り合いなわけないわよね」
「当たり前じゃないですか!そんなことより、さあ!さっきの続きを・・・」
「うっふーん、まだしたいの?そうお?・・・私あなたみたいな若々しくて元気な男の子が好きなのよぉ〜〜〜〜〜」
彼らはともす一行が近くにいることなどお構いなしに、再び濃密な愛の戯れへと没入していった。二人とも、見られて更に○ーフンするタイプのようだった・・・

「見て見ぬふりしたりそうされるのを期待するのはオトナのダメなところよね。状況に依るけどね。私コドモでよかった!見てこよっと!たれちゃん行こっ!」
てす子はたれっちをひっつかまえて小窓に向かって駆けだした。二の足を踏む悲しき大人たちを尻目にして・・・

そしててス子は、聖杯を手に入れた。


100   謎 2002/09/07 04:01:47  ゲーテすこ  

の一つが解き明かされる。100番目の投稿で。
オトナゴンとコドモスの登場は、てス子の聖杯Getを暗示していた。
とすると・・・


101   謎の解明あるいはたれっち3歳による官能描写 2002/09/08 01:37:22  たれっち 

ええとね、ぼく、てす子ちゃんにだっこされて聖杯の方に行ったは行ったんだけど、てす子ちゃんの肩越しからクロスパパたちのことが見えちゃったのね。クロスパパと織姫さんは、顔をすごおく近づけて見つめ合っているけど、あんなに間近に見ると見つめ合うのが大変だとぼくは思うの。だってさあ、右目と左目の距離って個人差があるじゃない?だからお互いの目を見つめ合うって、顔を近づけると段々難しくなると思うわけ。ほら〜真剣に見つめ合おうと思えば思うほど寄り目かロンパリ状態になるよお〜。あ、鼻がぶつかるう。織姫さんが鼻をよけたよ。まだ顔を近づけてるよ。どうやって見つめ合うのお?あ、とうとうクロスパパ、目を閉じた。にらめっこ、パパの負け〜!

あ、顔がぶつかった。・・・・・ん?あ〜お口くっつけ合ってる〜。あれえ?クロスパパ、織姫さんに覆い被さってるよお〜。顔は良く見えないなあ〜。でも織姫さんの顔は見えるの〜。見開いた目が真っ赤に光ってるの。あ、髪の毛がふわふわ逆立って来たよ。うわあ〜イトミミズみたいに蠢いてる〜気持ち悪い〜。イトミミズ軍団がクロスパパの頭にどんどん巻き付いていくよお。ターバンみたい。あ、あれ?赤くなって来て、ますますイトミミズっぽい。

「シャンブロウだ!」
ひつじさんが叫んだよお。なに?シャンブロウって?
「シャンブロウって何?」
ナイスタイミング、古都おねえさまっ。
「人間に快楽を与えて最大限に高まった生命力を吸い尽くす宇宙の吸血鬼よ。ノースウエスト・スミスが火星の街で出会って危うく死にかけたのよ」
ご主人も知ってるんだあ。
「進化したねえ。NWのときって全身に巻き付いてたけど、要は脳を刺激すればいいんだからねえ」
「体液を吸う蜘蛛系列ね。さすが宇宙の女郎蜘蛛」
「でも、これでクロス氏が聖杯に拘る理由がわかったねえ」
「死んだら生き返らせてもらって、また織姫さまと楽しむんだよ。呆れた奴だねえ」

ねえねえ、てす子ちゃん、そうなんだって!そういう理由で欲しいんだって。ぼく、ちょっとクロスパパのこと見直しちゃってたのにいっ。早くドザエモン・ミシマ氏を生き返らせて、クロスパパの首根っこ引っ張って帰ろうよお!


105   死と聖杯のダンス 2002/09/12 23:14:12  WakiTomos 

本来どうしたかったのか?ということに関して、事後的に言ったところでせんないことである。私の発したメッセージは誤読され、私は知ってしまった、という事実だけが残る。でも、もう今は意識の上では忘れてしまったという事実もある。海馬を通って私の灰色の脳細胞のどこかに貯蔵されているジャンクな記憶のひとつになるだろう。ただ、今後、冗談を作るときにリエゾンに気をつける、というやっぱりジャンクな知恵だけが今意識に上るだけである。

さて、長すぎるパッチワーク小説は、誤読により紆余曲折を辿り、初秋の風に小学校時代の夏休み最後の日のやるせなさをふいに思い出すが如くに突然「聖杯」などの言葉が文章の中に浮かび上がり、さてまた言葉遊びのお手玉としてキーボード捌きの中で転がされるのである。

たれっちの誤読により、ゲーテすこの描いたスノビッシュな大人達の態度は黙殺され、全員がしっかり出歯亀一派と化している。しかし、我々はこのような不条理の山を乗り越えて行かなければならないのだ。何処へ?物語の終末へ、今週末の連休へ向かって。そして、時は容赦なく私達を駆り立てる。死へと。

クロスは死を迎えようとしていた。それはボルヘスの小説「アレフ」の映画化のようにクロスには思えた。今まで見たあらゆる光景、あらゆる映像が猛烈な早回して網膜に映し出される。耳は激しい耳鳴りのような音がする。あの音は「2001年宇宙の旅」のモノリスが登場するときの音だ。雷鳴のようなパイプオルガンの音。俺はスクリーン・メモリーを体験している。さて次は臨死体験のような経験をするのか?とにかくてす子が俺を助けてくれる。織姫が俺を聖杯で助けてくれるとは限らないからな。なにしろ地球に屍体を捨てるような女だ。俺も何度か遊ばれて最後は佐渡島にでも投げ捨てられるんじゃたまらない。手足が冷えてきた。ああ、痙攣している。

「てす子!」
クロスは絞り出すように叫んだ。
「パパ!死なないでっ!」
てす子は聖杯で織姫の頭を殴りつけた。最後の生命の輝きを吸い尽くそうと集中していた織姫は不意をつかれて昏倒した。てす子はたれっちと聖杯を投げ捨て、クロスに駆け寄った。そして、クロスの頭に巻き付いた織姫の赤い髪を狂ったように引き剥がした。
「パパ....パパ....!」
投げ捨てられたたれっちはバウンドしながらバランスを取って聖杯にしがみついた。
「ご主人、ぼくを助けてね!」
そしてそのままバウンドして瓶の中に飛び込んだ。

窓にしがみついていた一行は窓をぶち破って小屋の中に乱入した。戸に鍵はかかっていなかったのだが.....。友巣はたれっちを聖杯ごと瓶から助け出すと、聖杯をてす子に手渡した。慌てふためいていたてす子はそれを取り落とし、なみなみと湛えられていたアブサンごとクロスの顔面を直撃した。

ゴーン

クロスはすんでで生き返ったが、そのまま気絶してしまった。たれっち3歳はアブサンをしたたか飲んで急性アルコール中毒になっていた。
「これ以上、ばかたれっちになっては困る」
友巣は、聖杯でアブサンをすくうとたれっちの顔にぶちまけた。茹で蛸のようだったたれっちはいつもの白い肌に戻った。
「便利だなあ。二日酔いの時に役立ちそうだ」
最近ついビールを飲み過ぎる傾向にあるひつじ氏はもの欲しそうに言った。

「有難みのない使い方ね。かして。」
古都氏は聖杯にアブサンを注ぐとドザエモンの作中ミシマのもとへ急いだ。そしてうやうやしく聖杯を掲げると、ミシマの顔に注いだ。ミシマの顔は漂白したように白くなり、頬と唇に紅が差し、黒い瞳が開いた。
「よかったあ、アキラちゃん」
いつのまにかミシマ氏がF氏を連れてやって来た。
「やれやれ、手を焼かせること。私は仕事が待ってるから帰るよ。後は頼んだから。」
そして、桃色髑髏兎のプリントされたどこでもドアに消えて行った。


110   そして果てしなき日常を生きる日々へ 2002/10/01 23:47:14  たれっち  

クロス氏は目を覚ました。全くなんてことだ、臨死体験をしてから生き返ろうと思ったのに。
「早すぎるぞ、てす子」
「そんなこと言ったって....」
泣きじゃくるてす子の肩をひつじ氏はやさしく抱き止め、クロス氏を非難した。
「目の前で父親が死にかかっているのに、見殺しにする娘がいるか?」
「聖杯で生き返るのは分かり切ったことじゃないか」
「頭でわかってても、どうしても我慢できなかったんでしょ。ところで.....」
古都氏は続けた。
「ひつじさん、どさくさに紛れてロリータ趣味を満足させないように」
えっ!とてす子がセーラー服のギャザースカートを翻しながら飛び退いた。ひつじ氏は、とんでもない、と肩をすくめた。
「私はクロス氏よりは鬼畜じゃありませんから。そんなことより帰りましょう」

「駄目じゃ」
天蓋つきのベッドに横になり、顛末を眺めていた織姫が言った。衣ははだけて徒な姿。皆、目の遣り場に困った。
「古都とやら、聖杯をお返し」
「無事にみんながどこでもドアから帰れたら、入り口においてゆくわ」
古都氏は、聖杯を胸に抱きかかえた。
「私はもう少し織姫といたいんだけどな〜〜〜〜」
ととんでもないことをクロス氏がほざいたので、古都は容赦なく聖杯でクロスの頭をはたいた。

ゴーン....
クロス氏は再び失神した。
「兎に角、どこでもドアに急ぎましょう」
懲りないひつじ氏は再びてす子の手をとり、小屋からキセキの待つどこでもドアに急いだ。だが、なんだか重い。華奢なてす子ちゃんがどうして?と振り向くと、てす子が友巣の手を握っている。友巣は何だかてんで逆の方向に行こうとして、てす子の手を引っ張っているらしい。

「友巣さん、ぼくがロリータ趣味だからって、そんな嫌がらせはないでしょう....」
しかし、友巣は無言でぐいぐいとひつじ氏とてす子をあらぬ方向に引っ張って行こうとする。
「冗談は止して下さいよ。てす子ちゃん、痛いでしょうが?」
ひつじ氏は困ってしまった。
「とりあえず、友巣さんの言うとおりにしましょうよ。てす子、これじゃ、綱引きの綱みたいだし」
それもそうだと、ひつじ氏は素直に二人に従おうとした。

そこへ、
「何やってるの、ひつじさん、こっちでしょ」
と背中に友巣の声が.....。
振り返ると友巣がいる。

え?
しばし、混乱した。
コドモスとコトモス......!!!
アンドロギュヌスは早くも分裂していたのだ!
ひつじ氏はてす子に化けたコドモスの手を離そうとしたが、コドモスの手指はひつじ氏の手に絡みついていて離れようとしない。まるで木が大地に根を張ったようにひつじ氏の手に深々と入り込んでいるようだった。もう繋がっているのじゃないか?腕を切り落とさなければ、こいつらとは文字通り手を切れないんじゃないか?ひつじ氏は焦った。

「何とかしてくれ!」
ひつじ氏は悲痛な声を上げた。
コドモスとコトモスはひつじ氏をアブサンの河のほうへどんどん引っ張って行く。どうするつもりなんだ!
「おんなの力じゃ非力よねえ〜〜〜〜」
なごえもんが和やかに呟く。

ここは一番!ミラクルプリンセス古都参上!ということで!
そそくさと変身した古都姫は、ひらりとひつじ氏達の前に降り立った。
「ひつじ氏を返してもらうわ」
コドモスとコトモスはくすくすと笑いながら言う。
「駄目よ。私達がアンドロギュヌスとして安定するためには、つなぎのノリが必要なの。彼が打って付けだわ。もう遅いの。彼の吸収は始まっているんだから」
コドモスががっしりと繋いだ手から、ひつじ氏の養分が吸い取られていくようだった。
「で、出来れば中性脂肪だけ持っていってくれないかなあ....」
ひつじ氏は青い顔をしながら漸くジョークを飛ばしたが、笑えそうにない。

「それじゃ失礼」
古都姫は、腰からスラリと剣を抜き、コドモスの腕に振り下ろした。コドモスは驚いて手を引っ込め、剣は空を切った。ひつじ氏の手とコドモス手は離れた。
「あっぶないことするなあ!」
体を引きながら、ひつじ氏は叫んだ。
「もしコドモスがわたしの手を離さないで引っ張っていたら、わたしの腕が切れていたじゃないか!」
「説明はあと。急ぎましょう!」
古都姫はひつじ氏の腕を掴むと、どこでもドアに急いだ。気を取り直したなり損ないアンドロギュヌスが追ってくる。

ピンク・ホネウサ模様のどこでもドアの前には既に全員が集合していた。目を覚ましたクロスは性懲りもなく織姫を口説いて、遂に口説き落として一緒に東京に帰ることにした。聖杯があるから死んでもまた生き返るし。.....しかし、ひつじの群れにオオカミを放つようなマネをしてないか?
なごえもんが宙に浮いて様子を伺っていた。
「あ〜来たわあ〜〜〜〜アンドロギュヌスなりそこないがくっついて来てるわあ〜〜〜〜〜〜」
と言う間にもう目の前に迫っていた。

「早く入って!」
全員が慌てた。クロスはてす子と織姫を、てす子は聖杯を、友巣はたれっちとなごえもんのしっぽを、古都姫はひつじ氏を思いっきり引っ張って一斉にドアの中に転がり込んだ。F氏は、コドモスとコトモスの鼻先で、ドアを閉めた。全員、雪崩れ込むようにドアの内部の空間に放り出され、空から落下する悪夢を見るときのように帰路についたのである。

あれから、皆それぞれの日常を送るのに忙しい。時折、ネットでのやりとりがあるだけである。だが、織姫と聖杯を持ち帰ったクロス氏からの連絡はまだない。

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