よけいなものが何もついていない率直で具体的な一言に、なんだか急にカシオが大人っぽく感じられて、運転中だというのに彼をじっと見てしまった。
そして「そっか、カシオはママのほっぺたが好きなのか…。」と少ししてからやっと話しかけることができた私は、ちょっとした感動に包まれていた。
そういえば、私は今まで自分のほっぺたについて、あれこれ考えた事がなかったな、と思った。
チャームポイントだと思ったこともなければ、鏡を見て、「あぁ、このほっぺた嫌だな…。」と思ったこともない。
つまり何の感想も持っていなかった。どうでもいい部分だったのだ。
そんなところにきて、突然この一言が飛び込んできたわけだ。
自分の気に入ってる所を褒めてもらえるのは嬉しいことだが、思ってもいないような所を褒めてもらうのもなかなかいいものだ。
思いもかけず脚光をあびた私のほっぺたは、ありがちではあるけれど、あの時以来とても特別なものになった。
あの瞬間から、私の中で愛しくて誇らしい部分へと突然昇格したのだ。
「ほっぺこりん」扱いだったのが「ほっぺた殿」に変化するくらいの話である。
これから「チャームポイントはどこですか?」と聞かれたら、迷わず「ほっぺたです」と答えよう。
こんな質問をしてくれる人がまだいるのかは別の話として…。