これではもう無理だ。
「ここだよ、ここ!」とわざわざはえてる場所まで教えられるようではもう無理だ。
明らかに、

君、女の子なのに、しかも小学生なのに、鼻の下にボーボーとヒゲがはえてんだね。

とでも言いたげな様子がひしひしと伝わってきていたのだ。
私はあまりの恥ずかしさにいつもの調子も出ず、気のきいた返しもできず、しどろもどろだったと思う。

それでもなんとか平静を装いつつ、その場は乗り切った。
しかし問題はこれからだ。私はその夜、考えに考えぬいた。
このヒゲ(産毛ですよ、産毛!)を剃ってしまうのは簡単だ。簡単すぎて今すぐにでも剃ってスッキリさせてしまいたい衝動にもかられる。
しかし果たしてそれでいいのか?
何もない日なら、急に剃ってもこれといって不自然なことにはならないだろう。しかし昨日の今日である。
指摘されたからといって、昨日までボーボーだった産毛を急に剃って登校し、何事もなかったかのように振る舞う度胸が私にはあるのか?
あたかも「私、本当にボーボーでしたね、ご指摘ありがとう…。」と認めてしまうことにもなり兼ねない、このタイミングに耐えられるのか?
とあれこれ終りなく悩んでいた。
まだまだ幼かった私は、きれいさっぱりツルッツルに剃って登校し、昨日とは反対の意味で彼にマジマジと見つめられる勇気はこれっぽっちもなかったし、かといって「だからなんだって言うの?女がヒゲはやしてちゃいけないの?どんなにきれいな美人さんでも、服脱ぎゃ、ワ○毛はボーボーはえてたりするのよ?!」なんて堂々と言えるほど大人でもなかったわけだ。→続きを読む