「もしかして、 本、忘れた…。」

うそ〜ん。いくらなんでも間抜けすぎる。一番先に用意しておいたモノを忘れてしまうなんて。
でももう遅い、取りに帰る時間はないのである。
しかたがないので、空港の本屋さんで他の本を選んでみた。……が、もちろん無理。
すでに私の頭の中は『ねじまき鳥…』で気持ち良く決定しており、何よりすでに読み始めていたのだから…。
「しょうがない、ここまできて引き下がれない。」と、家に帰ればきっちり揃ってる本をまた買うことになってしまった。

さて、買うのは決定したけれど、この本は3冊の長編。ここで問題となってくるのが「何冊買うか」である。
そりゃみなさん、お思いだろう、「1冊でいいじゃないか…」と。
いやいや、話はそんなに簡単ではない。私は悲しくもすでに読み始めてしまっているのだ。
少ししか読んでいないとはいえ、すでにエンジンはかかったままの状態。どう考えても旅行中に一冊は読み終えてしまいそうな勢いだ。
私は澄まし顔で文庫本コーナーの前に立っていたわけだが、実はこの時、頭の中では「何冊買うべきなのか討論会」を一人激しく繰り広げていたのである。

「1冊ってのはあり得ないよねぇ。」
「いや、でも意外と旅行先では本って読めなかったりするもんだよ?」
「でも、この前の旅行では1冊まるまる読んじゃったじゃない。」
「じゃぁ、2冊買う?」
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