がっくりして受話器を置いてはみたものの、なんだか急にメラメラと怒りがこみあげてきた。
だいたい私の虫嫌いはクマも嫌という程わかっているはず。
いつ虫が家に侵入してきても捕まえて逃がせるように、リビングの目立つところに年がら年中、アミを置いていたではないか。それをあなたは知っているじゃないか。なのに、なぜ?!

もう一度電話をかける私。
「だいたいさぁ、私が虫嫌いなの知ってるよなぁ?それなのになんで私が世話してるわけ?なんで私は昼間っからブツブツ鳥肌たてなきゃなんないの?為末の銅メダル以来だっての、こんな鳥肌。とにかく早く帰ってきて!!」

「だから無理やって。」

……くそっ。キレてみてもだめか。

「夜までそのままにしといたら?」とは言われたが、「ええ、そうします。」というわけにもいかない。
あのキバは危険すぎる、恐ろしすぎるのだ。
私は一人でパニックになりながらも、クワガタがケースにいないことを「やっぱり…」と確認し、それからはとにかくオタオタするばかりだった。

その時である。

「ガサッ。カサカサカサ…。」

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