今までは、我が家にとって「貴重な昆虫」だったクワガタも、逃げてしまえば「ただの虫」。あり得ない話だが、私の頭の中ではゴキブリのごとくシャカシャカと動き回り、しまいには「角にゼリーを置きやがって。わざとだろ!」と私の足をガシッとキバではさむ姿が想像されたため、どう頑張ってみても素足でいることは無理だったのである。
「カシオッ!こっちに来たらアカンで!!」
叫びにも似た大声で一言カシオに言い放ち、とりあえずその部屋の扉をしめてみた。
うん、なかったことにしよう。
心は焦りつつも、そのままリビングまで歩き、冷蔵庫から水を一杯。
そして、ゆっくり座って近くにあった雑誌をパラパラとめくってみる…。
……ぬぉ〜、ダメだ!!
この事実を受け入れることもできないけれど、忘れることもできそうにない!
なんで?なんでよ、なんなのよ…。
ちゃんと反省して、いろんな物買ってきたじゃない。なのにこんなことするわけ?
ゼリーを角に置いたこと、そんなに怒ってたの?
我慢できず、思わずクマに電話をかける私。
「あ、もしもし?蓋が開いてるんだけど。え?クワガタの。そう…オス。いや、無理、見れない。クワガタがいるのかわからない。違う、違う、中にいるかどうかも見れない…。今から帰ってきて…。」
爆笑のうちに「無理。」の一言で片付けられる私。
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