さも私達のわがままを寛大な心で受け止めてあげようではないか的な物の言い方をしだした。
くぅ〜!なんか腹たつ。この言い方…。
すると、もう面倒になっていたクマが「あ、いいですいいです。じゃ、ここまでで。」と了解すると、今度はおばあちゃんも「いや、いいんよ?掘っても…。うん、掘って掘って。」と、誰が見てるわけでもないのに、お互いが、自分が折れて相手の無茶な言い分を聞いてやろうとする『私の方が寛大だ』合戦が始まっていた。
実に小さくてどうでもいい戦いだ…。

それからもおばあちゃんはまだまだ一人で話し続けていたが、さすがにもう相手もしていられず、私達はイモ掘りをやめて帰る準備をし、あぜ道まで上がっていた。それでも「あれ?これはこっちの株かな?いやいや、やっぱり向こうに伸びてるもんね、うん、やっぱ向こうの株やね。」と、最後はやはり自分の言い分が正しかったという締めくくり方でその独り言が終えられていたのを私は聞き逃さなかった。

私とクマは会話らしい会話もせず、楽しそうにバーベキューをしている人達をチラッと横目で見ながら静かに車へと向かった。
帰りの車の中で、「あんた、よう吠えんかったな。」とおもわずクマに言うと、
彼はポソッと「90のおばあちゃんに向かってキレてもしょうがないやろ。」とだけ言っていた。

なるほど、クマのキレキレ・ラインは、お年寄りに優しいシルバーラインであるらしい。