そのためには、このものすごく地味な攻撃を何度加えられようとも、とにかく耐えて耐えて耐えまくる必要があったのだ。
「これさえ我慢すれば、私の不名誉な事実を知る人間は数えるほどしかいないままで終われるのだ」という思いのためだけに、貧相な「加藤ちゃんぺッ!」も甘んじて受け入れていたのであった。


さてさて、時の流れとは形あるものないもの全てを、多少なりとも変化させ続けるものらしく、当時は子供なりにも自分のメンツを守ろうと必死の私ではあったが、あれから何年も何年も、何年も過ぎた今では、時々例の産毛を剃りながら、

「産毛も濃くなりゃ、ただのヒゲ…。」

とポソッとつぶやけるくらいにたくましくなっていた。