軽いパニックの後、クマは戸惑いながらもカシオをだっこし、部屋へと戻ろうと歩き出したのだが、前方には目を疑う光景が広がっていた。
ゲームコーナーと廊下との間から滝のように雨が流れ落ちてくる。
な、なんだここは?江戸時代の民家か?
江戸時代の民家が滝のように雨漏りをしていたのかどうなのかは全く知らないが、10階建てのホテルのくせに、ポツポツならまだしもドドォーッと流れ落ちてくるこの雨を見て、ふとクマはそう思ったらしい。
そしてクマは滝をよけながらもなんとか部屋まで帰ってきた。

その頃の私はというと、一人のんびり温泉に入っていた。
「さあ入ろう。」と思った瞬間、「○○温泉は赤い丸いお風呂だけです」とかなんとか書いてあるあやしいはり紙が目に入りはしたが、気にせず入って行った。
なるほど、一番メインの大きな大浴場の隣には、読んで字のごとく赤くて丸い小さなお風呂があった。
小さいお風呂なのにうやうやしく大袈裟にしているところがなんとも物悲しい。
その上よく見てみると、何やらそのお風呂の上から紙がぶら下がっている。

ピラミッドパワーと療養温泉をお楽しみください

その紙は、まさにそのピラミッドの頂点からぶら下がっていた。
10人入ったらぎゅうぎゅうくらいの赤くて丸い浴そうの四隅には金属の円柱が建てられてあり、その円柱の最上部にはその辺で買ってきたような貧相な金属柱がそれぞれ中心に向かって組まれている。確かに言われてみれば枠だけのピラミッドのような形だ。

おもしろさに5万点。 →続きを読む