ある時、クマと二人でTVを見ていた。
その番組では30代くらいのプラモデルコレクターの家を紹介していたのだが、それはどこもかしこも家中がプラモデルで溢れかえっている映像だった。
その番組を熱心に見入っているクマを見て、嫌な予感がした。
すると、そのコーナーが終ってすぐに「プラモデルってこの辺どこで売ってるやろ?」と私に聞いてきた。
ほら、やっぱりだ…。
「あそこのビデオ屋さんの近くにボロボロのプラモデル専門店があったような…。でもどうするの?」
と聞くと、なんだか急にやりたくなったと言う。
人がせっかくやる気になっている事に水をさすのは、本来ならばあまり好きではないのだが、それでも私はクマのはやる気持ちを沈めようとした。なぜなら絶対に、間違いなく、明らかに、向いていないと思ったからだ。
しかしクマは「そんなことないって、こういうのって男のロマン…やろ?」
とやたらめったら男のロマンとやらをふりかざし、未だかつてプラモデルの話などしたこともないという事実には目も向けず、プラモデルについて熱く語りだした。

そして数十分後、プラモデルの箱を3つくらいと絵の具のようなものを買って帰ってきた。

戦艦ヤマトと車のプラモデルを買ってきたクマは、もちろん準備もそこそこに作り始めた。
………。もうすでにこの時点から無理なのである。

私は昔、弟が小さい頃プラモデルを作っているのを見たことがある。
組み立てる前にまず色を塗り、それが乾いた後でパーツを一つ一つ爪きりで切り取りながら丁寧に作っていたのを知っていただけに、手で野性的にブチブチ切りながら計画性もなくいきなり組み立てはじめるクマを見て、やっぱり向いてないように思っていた。
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