ある時クマが、「最近ボケボケになってきた。」と言った。
私にしてみれば、「何をいまさら…。」と言いたいところであるが黙っていると、
「昔はこんなんじゃなかった。」と尚も続けるので、おもわず「昔からそんなんやったで。」と言い返してしまった私。
人は、自分の仕出かした事件は意外に簡単に忘れてしまったりするものだが、それを目の当たりにした周りの人間はそんな簡単に忘れることはできないのであった。
「そんなものだったって!」と、何度言っても納得しない彼に私は昔話をして聞かせた…。

昔々、ある日の夕方、ちょっと用事があってクマの携帯に電話をした。
すると、当然電話口に出るであろういつもの声がなぜやら少し違う。
「もしもし?」
一瞬間違い電話をしてしまったと思い、謝ろうとした瞬間、その声の主は私に言った。
「あんた、この電話の持ち主の知り合い?」
へっ?と思ったが、知り合いは知り合いなので
「はい、そうですけど。」
と答えた。
すると、信じられないことに彼はこう続けたのであった。

「あのなぁ、わし、そば屋やねんけど、この兄ちゃん、
昼にうちの店に来て、携帯と背広の上、忘れたまま
取りにけぇへんねん。」
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