ところで、世の皆さんは、お店の中で自分のバッグから何かを取り出したくなった時、どうしているのだろうか。
私は今だにこの瞬間に馴染めないでいるのだ。全く悪いことはしていないのにどうにも落ち着かない。
言ってみれば、何の違反もしていないのにパトカーを見るとどこか構えてしまうのに似ている。

例えば、財布の中味をちょっと確認したい時や、買物リストのメモを取り出したい時などのことである。
私はその時、できる事ならいっそのこと店員さんの前で仁王立ちして、

「今からバッグの中に手を入れて、財布を取り出すのだ。」

と宣言しつつ財布を取り出したいのである。それができるのならどれくらい楽になれるかと思う。
だが、それをやってしまうと、よけいに怪しくなることは想像できるし、
その上きっとそのお店では、私はその後「財布マン」と陰で呼ばれるであろうことも予想できる。
この歳で「あ…、財布マンまた来てるし…。」と陰口を叩かれるのも正直言って辛い。

そんなわけで、私はいつの頃からか、店内で万引きに間違わられずに自分の目的を果 たす最善の方法として
ある作戦を思いついていた。
それにはまず、「逃げも隠れもしませんよ」ということを密かにアピールするために、私は店員さんのちょっとななめ方向にわざわざ移動し、店員さんから私がチラッとでも見えるようにするのだ。 →続きを読む