私の本好きは、中学生の頃に赤川次郎にはまったことによって始まった。とにかく赤川、寝ても覚めても赤川、「赤川次郎をおかずに飯が食える」ぐらいの状態だった。
そんなある日、突然母親が「そろそろ推理小説卒業してみたら?」と言いながら私に手渡した1冊の本は三浦綾子の「氷点」だった。母は元来、本のカバーが大嫌いですぐにとってしまうタイプだったので、ご多分にもれず「氷点」もカバーが無い事によりむき出しの白色が色あせ、茶色いしみだらけのボロボロの本だった。そしてその本は、当時の私にとって驚くほど分厚く、その上1ページが上下2段に分かれており、
文字だらけでひるんでしまうほどの迫力である。それを見ただけで一瞬にして読む気力も読み終える自信もなくし、
「えっ…、これ?読めるかなあ。」
とだけ言って、曖昧に受け取った。
そしてその後、私は本を読んだのか?
読んだなんてものじゃない。おもしろすぎて一気に読み終えてしまったのである。 そして最後に本を閉じた瞬間、「小説ってこういうおもしろさもあるんだ…」と推理小説とはまた違ったおもしろさに心が躍った。
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