2001.11.17up

生きてりゃこんな夜もある 5

上郷  伊織

◇◇◇◇◇

「・・・やっ・・・・はっ・・・・・・・・」
 内腿に軽く触れ、下腹をなぞりながら急所に触れる。
 濡れた睫を揺らしながら、葵は何度も瞬きを繰り返す。
 目の縁には涙が溜まって滴をこぼした。
 前に触れたまま、まだ、開くことの無い蕾に触れると、葵は無意識に腰を逃す。
 すかさず、中心をヤワヤワと揉み込むと、辛そうなそれでいて切なげな吐息を漏らす。
 周囲を指の腹で何度も撫でている内に、入り口の襞はヒクつきだした。
 触られる事に慣れ始めた敏感な皮膚。
「わっ!」
 ヒクつく中心に指を突き立てた瞬間、葵は奇声を発した。
「なに?・・・・やだっ・・・・それ・・・・・・・やっ・・・・・」
 普段は排泄する場所に、異物の入り込む感触が気持ち悪いのか、一柳の首にしがみつく腕に力が入る。
 何一つとして慣れていない無垢な身体。
 真っサラな葵。
 一柳には腕の中の少年が不思議だった。
「こんなんで商売になるのか?」
 何故、何も知らない内から身体を売ろうとする?
 見知らぬ男に抱かれようなどと、それ自体が奇妙だ。
 不慣れで未開発な身体を不憫に思っても、ゆるゆると奥に侵食させた指の動きは止めてはやらなかった。
「・・・・・やぁ・・・・やだやだやだっ・・・・もう抜いてよぉ・・」
 興味本位でこんな事をするような少年とは思えない。
 葵は必死に懇願する。
「コレくらいで嫌がってどうする」
 黒目がちな瞳が覗き込んでくる。
 苦渋に満ちた眉間には皺が寄せられた。
「・・・だ、だって・・・・・こんなっ・・・・汚い・・・・・」
 子供の潔癖さが表面に現れる。
 苦しそうな吐息が、一柳を責め立てた。
 誘いに乗った自分が馬鹿なのか、それとも腕の中の少年がずるいのか、錯覚を起しそうなほどに、今、腕の中にいる小動物は被害者の顔を向けてくる。
 コイツが嘘をついているのは明白で、嘘そのものに罪はなく、また、二人の間に嘘があったとしても、一柳には関係が無い。その事を重々理解している筈なのに、一柳の中では妙な感情が燻っている。
 ビジネスライクに割り切って、こんな行為に慣れ切った少年ならば、そんな感情は芽生えない筈だった。そんな感情を呼び起こさない相手を選ぶ筈だった。
 何にも煩わされる事なく、本能のままの性欲処理を望んでいた筈が、何故こんな事になったのか。
 自らの首に絡みつく細い腕。
 哀れな色を称えた黒瞳。
 その持ち主への嗜虐心は募っていく。
 そんなにまでして嘘をついて何になる。
 自虐的な人間が一柳は嫌いだった。
 
 銜え込ませた指をグルリと中でかき回せば、小さな可愛い悲鳴が一つ。
 もう一度回せば合わせたようにまた一つ。
「・・・くっんっ・・・・・・・・・」
 指先で見付けたシコリを殊更力を入れて擦ってやると、小さな腰がビクンと跳ねた。
 何度も何度も繰り返し同じ箇所を執拗に擦ってやる。
 前に回した手で確認すると、ヌルリとした感触が葵の分身に絡みついていた。
 腕の中の顔を覗き込むと、葵は俯いたまま、しゃくりあげている。
「泣く事か」
 自分の口から漏れた言葉がやけに冷たく響く。
(ガキを苛める趣味はないんだが・・・・)

「・・ひっく・・・・」
 一柳の肩に顔を埋めたまま、葵は一向に泣き止もうとはしなかった。

                         

つづく

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