時間のタリナイ恋なんて・・・6
上郷 伊織
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まただ・・・ちくしょう・・・・
熱い快感の波に浚われ、全てを吐き出した虚脱感に身を任せ聖は荒い呼吸を繰り返していた。
岸上とつきあい始めて一月が経過した。
夜を共にするのは通算5回。
今日を含めると6回。
必ず最初に聖だけがイカされて・・・・・。
堪えよう、堪えようと思っても、岸上の手に掛かると、熱に浮かされたように、あれよあれよと言う間にイカされて・・・・・。
正気に戻れば、意識朦朧と横たわっている。
・・・・・・・・・・・・不本意この上ない。
悔し紛れに相手を罵倒しても、結果は変わらない。
この手の経験が浅い訳でもないのに・・・・・・・・・・。
どうしてこうも呆気なく・・・・・・・。
人肌の温もりが離れた気配に視線を巡らせれば、視界に岸上の背中が映る。
着痩せするのだろうか?
シッカリとした骨格の広い背中。
岸上が動く度、腰から尻の引き締まった筋肉の変化が妙に気になる。
後ろ姿に男の色気を感じた。
今、振り向かれたら言い訳が出来なくなる。
そう思うのに、視線が外せない。
つくづく男らしい作りをしているのだ。
この岸上遼一という男は。
デスクワークの癖に、鍛え上げられた肢体。
強引な性格。
どこを取っても聖には無いモノばかり。
鋭い瞳に見つめられるだけで、胸はドキドキと悲鳴を上げる。
男の割にはしなやかな綺麗な指先に触れられると、火が付いたように肌が泡立つ。
その感覚を思い出して、聖は一つ身震いをする。
──── 俺は早漏じゃねぇ
断じて違う。
岸上の手にかかると、いつの間にか絶頂を迎えてしまうのだ。
その事をおかしいと聖は思う。
岸上に出会うまでは、決して堪え性のない身体では無かったのだ。なのに、こんな風になってしまう。
その度、こうして抱かれる立場が続いている。
いつも、こうだ。
いっそ最初の時のように、半ばどさくさ紛れに抱かれてしまえば意識しなくて済む羞恥心が、怒濤のようにあふれ出す。
岸上の前に痴態を晒すのは、ある種の屈辱だった。
岸上が振り返る気配に聖は慌てて目線を逸らせた。
枕の脇に何かが投げ出される音がする。
それを確認する暇もなく、首筋に口付けられる。
触れられた肌が泡立つ。
唇を塞がれ、口腔を犯される。
舌を絡め合いお互いに貪り合った。
いつの間にか両膝の間に岸上の体があった。
膝頭が股間を擽る。
既に立ち上がってしまった事を自覚すれば、頬に朱がさす。
内側に触れてくる他者の感触に身体はすくみ上がり、内壁はそれを排除しようと収縮を繰り返す。
それが却って確固とした存在を己に知らしめ、余計に意識が研ぎ澄まされるのを聖は知らない。
易々と蠢く指。
塗り込められたトロリとした液体が立てる淫猥な音。
内に秘めた劣情は強引に暴き出され、目の前に晒される。
漠然と判っていることは、こうして快感に喘いでいる間に行為は終焉を迎えるという事。
だが、どうしてもこの行為に慣れない自分がそこにいた。
仕返しなどという行為に至る前に、聖の体力は尽きる。
体力不足の聖が能動的に動くなんて、果てしなく不可能に近かった。
それにしても、ベッドの上に転がっているだけで全てが終わるなんて・・・・・・・・・。
───
マグロじゃねぇんだからよ・・・・・・。
自嘲気味に思いながら、聖は吐息を漏らす。
「・・・・あぁ・・・・・・・・」
そこには、歓喜の色が含まれていた。
つづく