やいてんねん 3
上郷 伊織
◇ ◇ ◇
(夢、ちゃうやんなぁ………)
腕の中、愛しい人を抱きかかえ、寝室へと移動した。大の体に合わせて購入したダブルベッドが部屋の中央を占領している。
煌々と明るい照明の下、そっとベッドへ穣を下ろす。穣は困惑した子供のように見上げてくる。
Tシャツを脱ぐと、僅かに汗の匂いがした。今夜、銭湯に行き損ねた事を思い出し、シャワーを浴びてくる、と屈み込んで穣に告げた。
穣は大の首に腕を回し、力いっぱい引き寄せ、大を引き止めるような素振りを見せる。
穣に嫌われたくはない。それに、これまでの可愛い言動の数々に、限界近く張り詰めた股間を一度落ち着かせたい。
首元に穣の鼻先が当たる。吐息が鎖骨にまで緩く流れたように感じた。ドクリと雄心が脈打ち、限界まで膨れ上がった。
「大さんの匂い、好きやから……消さんといて」
穣は蚊の鳴くような掠れ声を落とした。
「………くそっ。……あか…ん。くっ……」
シャワーを浴びる時間すらも待てない程に、穣が自分を欲してくれているのかと思った途端、予期せぬ熱が大の股間を濡らした。
少しばかりの接触と言葉や仕草だけで、射精にまで追い上げられるなど、今の今まで想像すらした事はない。重ねてきた多くの経験はここに来てなんの役にも立たないと無理矢理納得させられた気分である。
キスは殆ど経験がないと穣は言っていた。しかし、この妙に煽るような発言は、初心なのか、馴れているのか、それとも天然なのか、まるで予測がつかない。
息を整えつつ、穣の様子を伺うとキョトンとした表情で瞬きする。
「……あーっと。……ごめん、穣があんま可愛い事言うさかい、達ってもた」
「………」
耳元で白状すると、頬を染めて俯く。
(あかん。やっぱ、かわいい)
このままグズグズしていたら、また、達かされてしまいそうだ。
「……や………あっ」
穣の頭を庇うように、ベッドへ組み伏せた。急に横たえられ、慌てる穣を宥めるように唇を舌先で嘗める。そのまま僅かに開いた唇に舌を差し込むと、オズオズと穣も舌を差し出してくる。互いを絡めあうようにして唇を塞いだ。
穣はクッタリと体の力を抜いていく。
このまま穣を抱いてしまいたい。しかし、それではがっついていると嫌われはしないだろうか。大にとって一番辛い事は、穣に嫌われ、会えなくなる事だ。
「抵抗せぇへんの?」
「…なんで、そんなん聞くん。……だって、するんとちゃうん?」
穣の顔を挟むようにベッドに手を付き、目を合わせる。質問に質問で答えた穣は唇を尖らせ、自らトレーナーを脱ぎ捨てた。
「さっき、見せるのも嫌がってたやん」
線の細いバランスの取れた骨格に、申し訳程度に付いた筋肉が少し浮いている。しなやかで真っ白な身体が目の前に晒される。薄い胸板には、昔と寸分違わぬ小さな薄桃色の突起がポツリと彩を添えていた。
降って湧いたような幸運に不安になったばっかりに、態度で示してくれていた穣の本気を疑うような事を聞いてしまった。
「今も恥ずかしい……。けど、こういう時、そんなん言うたらあかんのやろ。……僕、したい。大さんが僕の事好きやったら、それがほんまやったら、したいもん。大さんはちゃうの?」
目元を紅潮させて、悔しさに瞳をウルウルさせながら穣が睨む。
「ああ、ごめん。堪忍や、そんなん、みっちゃんに言わすつもりなかってん」
「何、謝ってん。…やっぱ、…したないって事?」
年長の立場でありながら、好きだと言う言葉も、ましてや性交を匂わせる『したい』という言葉さえ、穣に先に言わせてしまい、つくづく自分が情けなくなる。その事を謝っているというのに、穣は違う方向へと解釈してしまう。
「ちゃう。………したい。めっちゃしたい。……せやけど、それって、みっちゃん、俺のもんになってくれるん?」
両手で赤らんだ頬に触れ、互いの鼻の頭を擦り合わせる。
「あほ。……僕が、……僕が大さんを僕だけのもんに、昔っから、したかったんや」
甘えるような声音で呟けば、照れたような男らしい口調で、とんでもなく大胆な台詞を返された。
(辛抱なんか、もう、やめや)
即座に穣の唇を奪い、軽く音を立てて離す。首筋から耳へ滑るように舌先を這わせ、耳たぶに歯を立てる。
組み敷かれた体がビクリと何度も震えた。
「俺な、こないして、みっちゃんに触れてるだけで、ガキみたいに盛ってまう。なんやもう、自分で信じられへんぐらいや」
首筋を何度も啄ばみ、穣の胸元を撫で上げる。穣の肌は薄っすらと汗に湿りだす。腹から胸へと手を這わせ、しっとりとした肌を楽しんだ。ヤワヤワと擦るように胸を揉む。指の股にポツリと小さな引っ掛かりを感じた。
「やっ…ン……。なんで………そんなとこ」
感じる部分なのか、ピクピク体を震わせながら穣が抗議する。緊張に固めた拳を口元に当て、声を抑え、動揺を隠そうとする姿は嗜虐心を煽る。
再び力を取り戻した雄心を互いの服の上から穣の下肢に擦り付ける。穣の花芯も固くなり、指で乳首を転がす度、ビクリと顕著な反応を示す。たまらず、鎖骨を食んでいた唇を、白い肌に固く凝る赤い粒へと移す。口に含んで一頻り舌で転がし歯を立てると、穣の股間が先程よりも硬度を持って勃ち上がる。
「あっ……。……あ…はっ………や、あ…かん」
「あかん事ない。ココ、窮屈そうや」
下着ごとズボンをずらし、プルンと躍り出た花芯を握り込む。既に一度達した時の蜜が、しとどに股間を濡らしていた。くちゅくちゅと湿った音をさせ擦り立てる。
「あんっ……。そこ、あかん。…汚れてる…から、触ったら………」
潔癖な子供のような言い草に反して、花芯の先からは次の行為を期待するかのように透明の蜜が途切れる事なく溢れ出ている。
「汚い事なんかあらへんよ。ごっつ美味そう……」
微かな膨らみを持つ胸から臍へ、下腹へと舌をゆっくりと滑らせる。産毛と言っても支障が無いほど薄く少ない下生えを唾液で更に濡らす。粘り気の強い乳白色の蜜が所々に散っていた。余す事なく蜜を掬い取るように舌を這わせ、花芯の根元から裏筋へねっとりと嘗め舐る。口中に独特のドロリとした感触と僅かな青臭い苦味が広がった。
「…やっ……。そっ…そんなっ……。…んぁ……ぁ…ぁ」
手に纏いついた蜜の名残も、ヒクヒクと筋を浮かせて閉じようとする内股に擦り付け、それを拭うようにして舌で味わった。
「どこもかしこも綺麗やなぁ」
まだ濡れている丸い二つのぷりぷりと膨らんだ果実を指先で持ち上げる。その下では淡い桃色の蕾が濡れ光り、怯えたように小さく窄まっていた。ゴクリと喉が鳴る。まるで、今まで誰にも触れられた事がないような、くすみ一つ無い清楚な細かい襞を持つ蕾から目が釘付けになっていく。
「……こんなとこまで濡れてる」
シーツから浮く腰の括れの両側から手を差し込み、双丘を数回揉んで持ち上げる。
「…えっ、やぁっ……。うっ…うそっ………ぁ」
目線近くに持ち上がって来た、他の皮膚よりもホンの少し盛り上がる蕾の中心を、一度舌先で突付く。周囲を包み込むように撫で上げると、可愛い窄まりがヒクリと震え、より固くキュっと閉じ、逃げるように僅かに奥へと引っ込んだ。
大の雄心もドクリと脈打つ。
限界が近い。このまま、すぐにでも猛り狂う己が雄心で思う様穿ちたい。舌先で触れた固い蕾。使い込んで無さそうな感触が、そんな強行には耐えられないと訴えかけていた。
「……し、……信じられへん」
一旦、身を起こし、サイドボードへ手を伸ばす。引き出しからボトルを二つ取り出し、穣の腰の辺りに投げた。
見下ろした穣はと言えば、片腕で顔を隠してしまっている。隙間から見える頬から首、鎖骨の近くまでもが赤く色づいている。
「みっちゃん……」
「あんな……。ぼ、僕の嘗めるやなんて……」
まだ、前戯を終えたばかりで、これからもっと色々しようと思っているのだが……。
「みっちゃん、汚れてるの嫌みたいやったから。綺麗にしたで」
大の言葉を聞いて、慌てて腕を顔から外し、起き上がろうとする。
「ティッシュ。大さん吐き出さな……」
「もう、飲んだから、あらへんよ。そんな、焦る様なことでもないし…。アレくらい当たり前やで」
また、初心な反応をされた事が嬉しくなり、つい、笑いながら口を大きく開けて舌を見せてやる。
「あ、当たり前なん………」
穣は消沈したように俯き加減に睫を伏せる。
「そうや。それよりな、みっちゃん、ローションとジェルどっちが好き?」
「………え?」
好みを聞くと、キョトンとして大の言わんとするところを飲み込めていないような素振りを見せる。
「せやから、ココに使うのん」
「やっ、…そんなん、……知らん」
殊更、露骨に判るように、可愛い蕾に手を伸ばし、軽く撫ぜると腰が跳ねた。
嘗められただけで、あれ程狼狽えたのだから、今までは潤滑剤を使っていたのだろう、と見当を付けて聞いているのに、それすら穣は知らないと言う。
「ちょお、待て。発展場とかホテル行った言うたやん」
二十三歳になる穣が発展場やホテルに出入りしていてもおかしくはない。かなり不愉快ではあるが、それはそれで、離れていた過去の出来事として受け入れようと思っていたのに、どうやら、大が思っていたのとは事情が異なるようである。
「だから、なんもせんと逃げた言うた……」
確かに先程のストーカー野朗との経緯で、逃げ出したから未遂で終わったとは聞いたが……。大学の4年間と社会人としての1年間で何も無いというのは不可能ではないのだろうか。
「……それって…、…一回しか行った事ないん? 何? みっちゃん、こういうの初めてなん? え? けど、女の子と行ったりはせんかったん」
穣のように目立つ容姿の男が、まるっきり交際経験も、性体験も無いというのは、あり得ない。あり得ないと思うのに、自分に都合のいい予想をもとについつい、矢継ぎ早に質問を投げてしまう。
「行くわけ無い……。あん時は僕どうかしてたんや。そんなん、大さん以外の誰とも行きたない」
寄せられた眉根は、どこか屈辱を滲ませて、あまり口にしたくないとでも言うように、穣の口から吐き捨てられる。
穣が語った全ての内容を要約すると、穣は童貞で未通という事になる。
「なんや、それ! ああ、もう。みっちゃん、めっちゃ可愛い」
穣が次の言葉を発する暇も与えず、思い切り抱きしめる。胸に穣を抱いたまま、何度も体を揺すって頬擦りもした。
奇跡のような事をサラッとやってのけてしまうのだから、穣は可愛い。東京などという都会で他の誘惑に屈する事なく自分を貫いたという事ではないか。やりたい盛りの青少年が。この清廉な精神も大の好きな穣そのものなのだ。
「大さん…。…僕、…上手に出来ひんかっても、嫌わんといてな」
額に頬に唇にと啄ばむように唇を落とすと、穣は擽ったそうに目を細める。嬉しそうにしていたかと思えば、暫し逡巡して自信無さげな言葉を零す。
「そんなん考えんでもええ。穣は…みっちゃんは。そやな、大人しゅうしといてくれるか? それだけでええ」
膝裏に手を当て、胸に付く程に穣の身体を折り曲げ、足を大きく開かせた。秘所が全て露になり、足の間から慄く穣の顔が覗く。
「…やっ……。う…そ。嘘、嘘、うそ。そんなん嘗めたら……、なめ、なめっ……あかん……てぇ……あっ」
抗い閉じようとする足を押さえながら、ずっと焦がれていた蕾を味わう。滑らかな質感の周囲の皮膚と細かな襞の一つ一つを丹念に舐ると、固く閉ざした秘所が徐々に柔らかく綻んでいく。僅かに舌が進入できたのを確認し、大は転がるボトルに視線を落とした。
「こんなん、普通なん? 皆、こんなんしてるん?」
「そうや」
くぐもった声が訊ねてくる。蕾を嘗める行為の事を言っているらしい。
「みんな凄いんやな……。僕、…僕、ホンマに何もせんでいいのん?」
実際、凄い事をさせてくれている自覚は無いらしい。
「そや、みっちゃん、何かしたいんやったら、ちょお協力してくれるか? ここんトコ手でな、そう、そこ両方手で押さえといて」
穣が不慣れで、こと性行為に無知なのを良い事に自ら足を抱えて開かせる。
「……あ。…こ、こんなん」
「閉じんように。抱えてもええよ」
震える蕾にトロリとしたローションを塗り広げる。桃の香りが辺りに広がった。冷たさに驚いたのか、穣の腰が大きく揺れた。構わず、蕾の縁をなぞるようにクルクルと弄る。時折、力を加えては突くように、指でノックを繰り返す。指先は思いの他あっさりと受け入れられた。もっと奥へ突き入れようとするが、穣の内部はきつく締まり、抵抗する。
「んっ……。んぅ…」
排泄と全く逆の刺激に穣は苦しそうに呻く。ギリギリまで張り詰めていた花芯は見る影もなく力を失って揺れる。先端を濡らす先走りの蜜だけが下腹へと糸を引いていた。
「みっちゃん、痛いか? 痛かったら言うんやで」
問いかければ、穣は無言で首を横に振る。
どうやら違和感だけらしい。
大が微笑むと、引き攣った笑みが応えてくれた。
緊張を解す為に花芯を擦ると、内部が柔らかく指を迎え入れる。付け根まで指を侵入させ、探るように襞を撫で上げる。快楽の凝りを見つけ出し、抉るように指で押し上げた。
「…うぅ。……やっ、…なんっ。ちがっ…、あぁっ…」
同じ場所を何度も擦り上げると、快楽を欲するように腰が揺れる。それに呼応するように蕾は淡く綻び、緩く柔らかくなっていく。蕾が食む指を二本に増やしても然程の抵抗はなくなっていた。
視覚的な刺激が大きいのか、穣は羞恥に染まった顔を背け、唇を震わせる。
時間を掛けて解した秘所は、指を三本食んで尚ゆとりを見せだした。大はジーンズの前を緩め、取り出した雄芯にたっぷりとローションを塗り込める。秘所から素早く指を引き抜き、雄芯を押し当てた刹那、穣の腰がビクリと戦慄いた。
慎ましく閉じていた可憐な蕾は、もはや見る影も無く、雄芯の先端を千切れんばかりに食い締めてくる。あまりのきつさに吐息が漏れる。
「ヒィッ…!…」
予期せぬ痛さに驚いたようで、大の股間に視線を下ろす。
「うそっ! うそ、うそ、ウソッ! ……デカイ、グロイ! そんなん無理ぃぃ!!」
身も世も無く穣が泣きじゃくる。
「やっ、いやっ……! 怖い」
組み伏せられた体勢で逃げる事も適わず、必死に懇願する。視界に入った穣の花芯は、先程とは比べようも無いほど怯え竦み、子供のようなサイズまで小さく縮まっていた。
「みっちゃん、泣かんといて。俺は、みっちゃんを泣かしたい訳でも、怖がらせたい訳でもないんや」
穣の頬に触れ、指先で目尻の涙を掬う。
(俺の息子もエライ嫌われてもたなぁ)
穣が本気で嫌がって泣いている様子に、大の落胆は大きい。心中が伝わるのか、大の雄芯もすっかり萎えていた。正直な所、今迄抱いた処女には2度程振られた記憶がある。どの相手も行きずりに近かったから、然程のショックは無かったが、いずれも閨での事だった。一人は大の巨根を見た途端に逃げ出し、もう一人は流血沙汰にまでなった。
ヒクリとしゃくり上げて、穣は恐々と大の様子を伺ってくる。
「えらい、ビビらしてもうたなぁ……」
「…び、ビビッてなんか……」
薄桃色の果実の上、飾りに成り果てた肉芽を指で突つく。自分の股間の状態に初めて気付いたのか、穣が目を瞠る。
「やっ…。こっ…こんなん僕ちゃう」
なんとか足を閉じようとするが、それも適わず、そっと手を股間にあてる。
「まだ、痛い?」
瞼を伏せて穣は首を横に振る。
「大さん? 僕、酷い事言うて蹴飛ばしたのに…。怒ってないん?」
「まぁ、な…。悲しかったけど。それより、切れてへんかどうかの方が気になる」
言い終えるか終えないかで穣の尻を持ち上げ左右に開く。キュッと締まった蕾は赤みがかった色に変わっていたが、先程、指を食んでいたとは思えない。見た感じでは全く傷ついてはいない。試しに嘗めてみる。
「……ぁ。なんで?」
「沁みるか?」
穣は身を固くしながらも大人しくされるがままになっている。舌を尖らせ力を込めると、歓迎するかのように蕾が易々と受け入れた。だが、奥までは確かめられない。
「穣、さっきみたいに手貸して」
「…え? 僕、もう痛ないんやけど……」
「そんなん触ってみなわかるかい」
強く促すと、穣はオズオズと従い、足を大きく開き、膝裏を抱える。その拍子に肉芽が揺れ、下生えの上にくたりと横たわった。穣の呼吸に合わせるように蕾は小さく開閉し、中から僅かに透明の液が零れだす。
「この辺は? 痛かったら言いや」
指を一本差し入れ、ゆっくりと熱い内襞を確かめるように触れていく。穣は震える唇を固く結んで頷いた。
「っふ…。……あ、……あっ、……ああ」
そろりと、なるべく力を入れずに指を動かしていた筈が、中の凝りに触れた途端、穣が妙に鼻に抜けた艶っぽい声を出すものだから堪らない。つい、調子に乗って、凝りを重点的に擦ってしまう。すると、穣の股間では肉芽までもがピクリと揺れる。それを目にした大の股間に血が集まり始めた。
「これ、好きみたいやな」
「ああっ…、あっ、あっ…。…しっ…しらんっ」
指だけならば穣はちゃんと後ろで感じる事が出来るようだ。
無理に最後までしようとは思わない。だが、穣の初体験を痛いだけの思い出にもしたくはない。
「気持ちよく慣らして、一回だけ達っとこか」
少しだけ平常の姿を取り戻しつつある花芯を掌に乗せ、唇を近づければ、穣の膝が大の頭に軽く当たる。
穣が何か言いたげに見つめていた。
「そ、そういう…ど…道具とか…売ってるン……やろ? ちゃんと出来るようにして来るから、せやから、今日は勘弁してぇ」
解す指を引き抜き耳を傾ければ、一体何処で仕入れてきたのか、とんでもない知識を披露してくれる。
「いやや。みっちゃんは俺のもんなんやろ。せやったら、この体も全部俺のモンや。この体に道具なんか入れさせへん。そんなら、時間かけてでも、俺が慣らす。俺のおらへんトコで触るのかって許さへん」
素気なく却下して、蕾に二本の指を差し入れ抜き差しを繰り返す。
また、大の雄芯を迎えさせられるとでも思ったのだろう。だが、不慣れで緊張してばかりの穣に無体を働こうという気は全く無かったのだ。しかも、道具で慣らすなぞ、許せる事ではない。折角の締まりの良い、可愛い色合いの窄まりが、下手な事をすれば緩く崩れてしまうではないか。
「怖い事も、痛い事もせーへん。せやからな、気持ちいい事だけで頭いっぱいにしといて。他の事は考えたらあかん。な? コイツもみッちゃん泣かしてしょんぼりしとるしなぁ」
穣の耳元に潜めた声で懇願する。そっと穣の花芯の上に雄芯を乗せ、ぷにぷにと緩やかに動かせれば、穣の口元が綻んだ。
「ふふっ、あほや……。あっ……、まって」
緊張が解れたのを見計らい、片手で花芯を握り込み、くちゅくちゅと揉み込む。半立ち手前の芯を持った雄芯を手で支えつつ、緩んだ蕾に押し込んだ。十分解れていた蕾は然したる抵抗も見せずに、まだ、柔らかな雄芯を半分まで一息に飲み込む。
「みっちゃん、痛いか?」
「…うぁ……。なっ…なんか……いっぱい」
「痛くないみたいやな。上手や。そのまま力抜いといてや。無茶はせぇへんから……」
花芯を扱く手は動かしたまま、穣の快感を優先させた。中では柔らかな雄芯が、複雑な襞の呼吸に合わせるような動きに揉み込まれ、緩やかに硬度を増している。
時折、穣の表情に戸惑う素振りが見えるものの、苦痛は感じていないようだ。
「…っ……あ。…あっ、あっ、…ああ」
ジワリと腰を進めながら、中の襞を探り、見つけ出した凝りを雄芯の先端で擦り上げた。前と後ろ、両方の刺激に耐え切れず、穣は甘い喘ぎを上げる。
「穣。上手やで。上手にちゃんと銜えてる」
繰り返し、耳元で宥める事は忘れない。穣が力みそうになる度、大が潜めた声を掛けると、安心したように力が抜けていく。穣の中で十分に育った雄芯を最後までは入れず、大は緩やかに抜き差しを繰り返した。
「………あんっ…あっ、……あっ…。……だ、だいさん。…おねがっ………。もっ……くるしっ…」
頬を紅潮させ、溺れるように穣は鳴く。涙をいっぱいに溜めた瞳が情欲に濡れ、艶やかな唇からは時折舌を覗かせる。躊躇するように穣の手が下腹部を彷徨う。
「達きたいん?」
濡れた瞳を潤ませ、大の瞳を覗き込む。
激しくなる突き上げに幼い泣き声で喘ぎながらも何度も頷く様が艶かしい。
「…ふっ……う…っ。………き…たい」
切れ切れの息の合間にも拙い懇願を漏らす。
「自分で擦ってもええよ。せやけど、ちょっと待ちや」
これだけ感じていれば内部の刺激だけでも射精してしまえそうに見受けられるのだが、我慢させるのも初心者には惨いかと思い直す。
「手、こっち。そう、ギュッって抱きついときや」
「ひゃっ……。な、なんっ………うぁ……ああぁ」
腕にしっかりと穣を抱き締めたまま起き上がり、腰に乗り上がらせるよう体勢を変えた。繋がりが深くなったせいで苦しいのか、穣が呻き声をあげる。
「すごっ……。…おく…きて……あんっ」
「大丈夫そうやな。もう触ってええよ」
穣の手を取り、花芯に導いてやる。暫し躊躇を見せた後、穣は大の表情を伺いながら恐る恐る自ら花芯を握り込み、耐え切れなかったのか、擦り始めた。
「足、立てよか。そう、それでいい」
シーツに付いていた膝を立てさせる。意味が解っていないのか、穣は素直に従った。大は首だけを起こしたまま背中をシーツにつけて横たわる。
「やっ、…これ、腰…が…あがらへ……。こんなん……あ…かんっ」
大の雄心を飲み込んだ襞が薄赤い粘膜を覗かせてヒクつく様まで、乱れる穣の姿が隅々まで見渡せた。
深い繋がりが辛いのか、自慰の手を止めて穣は自由になる半身を浮かそうとモジモジし始める。少し仰け反る姿勢が楽だったらしく、空いている手を後ろにつき僅かに腰を浮かせた。
「………大さん」
自ら望んで取らせたポーズを後悔しそうだ。衝動のままに貪り尽くしてしまいそうな予感がする。だが、視線は外せない。
動きを止めた大を不振に思ったのか、穣が心細げに見つめていた。
「どうしたん?」
言外に動かないのか、と訊ねてくる。
「今な、見てるだけでイケそうや。めっちゃいい眺め。なあ、みっちゃん、自分で動いてみぃひん」
無理を承知で問いかける。
穣は悩ましく眉根をよせ、睫を伏せて視線を反らす。
健気にも動こうと努力してみるものの、腰を自ら動かせば、足の力が抜けてしまい、己を貫く大の雄心を尚一層深く飲み込んでしまう。その度、悲鳴を上げて動けなくなってしまうのだ。
「………そんなん、できひん」
涙声になりつつも、訴えかけてくる。
「…こんなんした事ないもん。慣れてへん子は嫌? 僕、こういうの何にも出来ひん……」
無理難題に拗ねても、怒っても構わないのに、穣は自分の不甲斐なさを嘆きだす。
「ああ。ちゃうちゃう。俺が悪かってん。みっちゃん、イキそうやったやん。そんなん見たら、俺もイってまうし。あんま早う終わらしたないなぁって」
「僕、良くないんちゃうん? あ……っ、そんっ……おっきしたら……」
泣きべそをかいて潤んだ瞳が妙に色っぽく、呟かれた可愛い言葉に雄心がドクリと脈打つ。
「うあっ…って、あかんやん、その顔。 めっちゃ良すぎや。めっちゃエロい顔してんねんで。それにな、みっちゃんの中、熱うて、トロトロで……。……くそっ。今にも持っていかれそうや」
これ以上は耐え切れず、完全に最奥まで楔を打ち込んだ。
「ああっ……! ヤッ…、ヤッ…。く、くるっ…、来るっ……」
穣の背がザワリと戦慄く。暴走する本能のままに大は腰を打ち続けた。
「…あっ…かん、あっ、あ…あかん。あっ…あっ…あっ…い、いくっ…!」
内襞が一際絞り込まれ、穣が精を解き放つ。
「……っ…くそッ……、キツッ…!」
楔を引き抜く暇もなく、引き絞られるように、大も穣の内に情欲の証を叩きつけた。
つづく