いしかわじゅんは無敵である。 子どものころから、少年誌の回し読みと散髪屋の貸本をコンプリートし、妹の影響で少女まんがも押さえている。 まんが家としても、「三流劇画誌」でのデビューから、いろんな雑誌を転々とし、 それでいてメジャー誌や非まんが誌に連載を持った経験もあり、 特定の雑誌や 出版社に気を遣う必要もなく、また人脈も広い。 マンガ家歴も30年を越え、一部の巨匠を除いて、ほとんどが後輩である。 明治大学漫画研究会の人脈は、まんが家のみならず、編集者にまで広がっている。 そして、決定的には、現在は文章の仕事が多くなっていることから、 仮にまんが界から絶縁されても生活に困ることはない。(たぶん) つまり、いしかわじゅんは、50年前から現在に至るまでのまんがを知り尽くし、 作家・編集者の実情にもくわしく、もちろん、まんがの技術面もわかっている。 そして、決定的なことは、職業上の利害関係から筆を鈍らせる必要がない。 もう、誰もいしかわじゅんを止められないのだ。 この本は、2002年から2007年までの6年間にわたって、インターネット上で連載されたコラムをまとめたものである。 あとがきによれば、今まで出版されてきた雑誌原稿とはちがい、文章量からテーマまで自由に書くことができた、とのことである。 誰にも止められないいしかわじゅんが、本当に自由に書いたんだから、 それは、もう、いしかわじゅんの思うままの文章がつづられている。
最新の連載の寸評もあれば、誰も知らないようなマイナー作家も拾 い上げる。 子供のころの読書体験があったり、青春時代のほろ苦い思い出もある。 自分のアシスタントの話をはじめ、まんが業界の裏話もある。 知っていることしか書いていないのだが、とにかく知っていることの範囲が広い。 文章はいつもながらの軽快さで、400ページ弱という厚さにもかかわらず、ついつい読み進み、どんどんと読めてしまう。 日本図書館協会の選定図書にもなったらしい。
やはり、いしかわじゅんは無敵なのである。
小学館サイト内「秘密の本棚」紹介ページ いしかわじゅん公式サイト
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