次世代エース



力道山
馬場、猪木
鶴田、藤波、長州、天龍
三沢、川田、武藤、蝶野、橋本、小橋…

上は、私の独断でメジャー団体の世代毎の代表選手を並べてみたものです。独断と言っても、最後の行に健介、田上を加えるかどうかくらいしか反論はないような気がしますが…。
ここでは、四天王・三銃士世代のその次の世代の選手について考えてみたいと思います。



新日本では、第三世代として中西、永田、小島、天山が横一線で並んでおり、誰が一番最初にIWGPシングルに手が届くかが注目されています。では、順に見ていきましょう。

中西は、この四人の中で私が一番期待している選手です。この四人は、それぞれがそれなりには個性を持っていますが、上の世代と比べると個性が希薄で、厳しい言い方をすれば、全員が“声を出しながら元気に動き回る”というスタイルにおさまっています。決して望ましいことではありませんが、このスタイルの中で最も本領を発揮しているのが中西です。フィニッシュをバックブリーカー系に絞っているのも、正解だと思います。

永田には「アマレス出身」「UWFに入団を希望していた時期がある」「キックを使う」「ラリアットは使わない」など、ストロングスタイル幻想を抱く要素が多くあるので、彼の躍進を期待している人も多いようです。が、私の見る限りではファイトスタイルは他の三人と大差ありません。とりあえず今はきっかけを待っている状態でしょうか。ところで、この人は掛け声(「ィヨッ」ってやつ)がダサイですよね。

小島は個人的にあまり好きではありません。以前よりは自称・世界一のラリアットの使い所が上手くなってきましたが、技の命名センスがゼロな所がどうにも我慢できません。最近はドラゴンスクリューから4の字という武藤の得意パターンを使ったりしていますが、これも無理して使ってるという印象を受けるだけです。

天山はこの四人の中では凱旋帰国が最も早く、一時はかなり差をつけていたのですが、現在では完全に追いつかれてしまいました。一発一発の技がゴツゴツしている割りに試合全体の流れを作るのが上手い選手、というのが私の見方です。誰とでもいい試合をすることができますが、何となく“無難な試合”というのが多いのが残念です。



ノアで元・四天王の下となると、秋山、大森、高山が挙げられます。

馬場さんが三沢の次のエースとして考えていたのが秋山でした。私がそう確信したのは秋山が三沢の三冠に初挑戦した時です。
この時、解説席で馬場さんが「三沢がジャンボに初めて挑戦した時を思い出す」と言ったのです。
三沢が鶴田に挑戦した試合というのは、90年6月8日に日本武道館で行われた試合のことで、戦前は勝ち目はないと思われていた三沢が鶴田を丸め込んで勝利を収めています。新しい全日本の始まりを告げるまさに歴史的な試合でした。
この発言は「三沢も油断すると負けるかもしれないぞ」という意味合いもあるでしょう。しかしそれよりも、馬場―鶴田―三沢―秋山と歴代日本人エースの座を受け継いでいく計画を、馬場さんが頭の中で描いていたことを表していたように思えます。三沢vs秋山を新旧エース対決の第一章と考えていたわけですね。
現在のノアの中心が秋山であることは明らかですが、彼はどういうわけか“すごく目立つ助演”という役柄を演じたがっているようです。そのため、小橋をエースに推すために抗争を開始したり、最近元気がない選手に話題を振って蘇生(?)させたりと、話題を提供してくれるわりには「大エース」というようなイメージが生まれてきません。もう少し貪欲になってもいいと思うのですが…。

あと、高山も私は高く評価しています。彼のジャーマンとヒザ蹴りは素晴らしいですし、なかなか面白いコメントを残すことが出来る選手です(最低限、アックスボンバー出すときに「アックスボンバー!!」とそのままなことを叫ぶ大森よりは数段上です)。ノアでもノーフィアーを続けるようですが、彼がリーダーとして軍団を率いる姿というのも見てみたいですね。


新日本では第三世代のすぐ下も育ってきているのに対し(吉江は除く)、ノアの若手は180cm・100kg前後という選手が多く、5年後くらいにはヘビー級要員不足が深刻になっているかもしれませんね。



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OWF再び



やって来ました。今年もOWFが六甲祭にやって来てくれたのです! 実行委員の皆さん、ありがとうございます。来年もよろしく。

去年見たときにOWFの素晴らしさは分かっていましたので、今年はリングサイド一列目で観戦することにしました。私事ですが、リングサイド一列目に座ったのは生まれて初めてでした。

というわけで、観戦記です。
(※フォントは小さ目にしたほうが見やすいです)



第1試合
×藤原道実 (吐血) ホリえもん○
ホリえもん選手は海パンがコスチュームでした。で、藤原道実選手は病弱というキャラクターで、サマーソルトキックを2回連続失敗(わざと)すると吐血をしてそのままフォールを取られてました。


第2試合
×スキンシップ安藤 (自爆ロドリゲス) パンサー火浦○
なぜか大富豪・スキンシップ安藤選手がやって来てました。相手は地元神戸出身のパンサー火浦選手。
レフェリー買収やアピールなどで、安藤選手のキャラが目立ちまくっていました。終盤、形勢不利と見るやリング下からロドリゲスを呼び出しました。ブラックタイガーのマスクを着けていましたが、あの体格からは正体は推測できますね。で、二人がかりで攻めていたのですが、ふとした隙から自分がロドリゲスの下敷きになってしまい、そのまま敗戦と相成ってました。


第3試合 〜バーニングともゆき引退試合〜
○バーニングともゆき(POH)チャンプア下足リト×
○バーニングともゆき(POH)シエン・ピチャ・エス×
×バーニングともゆき(ラリアット)ジャッキー砂藤○
バーニング選手の引退試合だそうです。
長州力並み3人掛けの引退試合でした。必殺技POH(ピュアオブハート、要はスリーパー)で2人抜きは達成しましたが、ジャッキー選手には何度か決めたものの上手く凌がれて、最後はカウンターのラリアットで敗戦となりました。
ちなみにバーニング選手って去年も出場してましたね、マスクマンで。細い体のわりに人の技を受けまくるというスタイルは全然変わっていませんでした。


第4試合
○ジャッカル速水 (アックスボンバー) 苺谷みるく×
一回生のみるく選手と武藤の大ファン速水選手の対戦です。
みるく選手はキャリアの割に随分といい動きをみせてました。でも、体つきや顔つきはマロ栗山系ですかね。
結局は格とキャリアを見せつけるかのような逆転のアックスボンバーで速水選手の勝ち。


第5試合
× フライングキッド泉原
宮川三郎太
(キン肉バスター) タイガーハート
ガリバー木下
ついに登場、タイガーハート選手です。圧倒的な強さは去年と全く変わっていません。だってライバルがハマーン・カーンで目指す人がアナベル・ガトーですからね。かなうわけありません。相手チームは圧倒されてました。
パートナーのガリバー木下選手は一回生の選手。身長があって、得意技はフロントキック(川田とか田上がよく使うヤツ)のようです。
泉原選手も場外へのムーンサルトアタックを決めるなど大いに見せ場を作りましたが、最後はハート選手のキン肉バスター(一見さんに大ウケ)でフォールを奪われました。


メインイベント
×パンサー火浦 (失神KO) 氣合リュウケンエッチャン○
明日に引退するという火浦選手はダブルヘッダーです。
エッチャン選手はラリアットが得意ということで火浦選手はセオリー通りの腕攻めを展開しました。メインイベントらしい試合展開だったのですが、最後でアクシデントが起こりました。
エッチャン選手がパワーボム-->ジャーマン-->ラリアットという連携技(おそらく)を狙い、まずパワーボムを決めました。これで火浦選手は完全失神。次のジャーマンは全く受身を取れずに食らい、そのまま立てなかったのでレフェリーは試合を止めました。
幸いしばらくすると立てていたので、最悪の事態には至らなかったのですが(病院直行だったようです)、かなり引いてしまいました。


<いろいろ総括>
ライジング・キッド選手が引退していたのと、男色ディーノ選手とデスマッチが御法度(去年、実行委員に怒られたそうです)だったので、去年よりは少々劣るかなというのが正直な感想です。まあ、無料観戦でこんなこと言ったら怒られますけど。
それよりもダメだったのがメインイベントのフィニッシュです。「プロレスが芸術であるためには、怪我をしたりさせたりしてはいけない。怪我をした時点で芸術ではなくなる」とはブレット・ハートの言葉ですが、学生プロレスでもこれは十分に当てはまると思います。



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ヒットマンとHBK part3



今回は、ヒットマンとHBKのフィニッシュホールドについてお話ししようと思います。

ヒットマンの必殺技と言えばシャープ・シューター(サソリ固め)、HBKの必殺技と言えばスウィート・チン・ミュージック(トラースキック)であることは、言うまでもありません。
スウィート・チンについては、以前に当コラムでお話ししたことがあるのでここでは省略し、ヒットマンのシャープ・シューターについて、じっくり考えてみたいと思います。



ヒットマンがいつ頃からシャープシューターを使いだしたかは、正確なデータがないのですが、フィニッシュとして定着したのは、サマースラム'91で、カート・ヘニングを相手にこの技でインターコンチネンタルのベルトを奪取してからだそうです。

この時は、ヘニングの急所攻撃を受け止めて、そのままシャープシューターに捕らえたとのことです。
この、「どんな体制からもシャープシューター」というのが、ヒットマンのシャープシューターの凄さその1です。
サソリ固めですから、仰向けにダウンした相手の両足を抱えて、その間に自分の左足を差し込んで極めるというのが基本パターンです。しかし、大試合となるとこの形で極まることはむしろ珍しいです。
それよりも、両者ダウンの状態で足を絡ませていってヒットマンが起き上がるとシャープシューター、掟破りのシャープシューターをプッシュアップしてひっくり返すとヒットマンがシャープシューター、ミサイルキックをキャッチしてそのままシャープシューター、クリップラーフェイスロックを切り返しているうちにシャープシューターなどなど、とにかく相手の裏をかくような入り方で試合を決めることが多いのです。
この入り方のバリーエーションの豊富さは、シャープシューターにこだわるヒットマンならではでしょう。


凄さその2は「極めるまでの一点集中攻撃」。
シャープシューターは腰と足を極める技です(どちらかというと腰の方に重点が置かれるそうですが)。試合では、展開にもよりますがヒットマンは足や腰への集中攻撃を多彩かつ徹底にします。イメージとしては、武藤の足4の字への布石のような感じです。
今のアメリカンプロレスではなかなかみられない理詰めの攻撃を、ヒットマンはちゃんと行っていたのです。


凄さその3は「完璧な極まり具合」です。
シャープシューターは、相手の足をしっかりと脇に挟んで、ドッシリと腰を落とすことによって完成します。ヒットマンは身長の割にはこの動作が完璧で、極まったポーズを横から見ると、ある種芸術的な残虐性を秘めています。なお、実弟である故オーエン・ハートは、腰の落とし方が今一つ中途半端で、ヒットマンほどの名手とは呼べなかったと思います。
また、ヨコズナやビガロなどのシャープシューター極め難そうな相手にも、しっかりと足を絡ませて極めていました。この辺も、シャープシューターにこだわるヒットマンならではでしょうね。



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お薦めプロレス本



プロレスの本というのは、(雑誌以外にも)実にたくさん出ているのですが、ここでは私が読んだ中でお薦めのものを3つほど紹介したいと思います。


「これでわかった! プロレス技」
著者:流智美
出版社:ベースボール・マガジン社
この本は、週刊プロレスに連載されていた「プロレス技専科」を基に、作者が書いた他のコラム等をまとめて単行本にしたもので、「上半身編」と「下半身編」の2巻構成となっています。
2巻合わせると160もの技について紹介してあるので、かなりの知識が得られること請け合いです。
難点としては、連載物だったために時事ネタが多いという点が挙げられます。特に、この作者はルー・テーズと大変親しく、そのテーズが特別顧問をしていたUインターについて随分と多く書かれています。
これは余談ですが、私のこの喋り口調は、この本の文面を模範としています。




「理不尽大王の高笑い」
著者:冬木弘道
出版社:フットワーク出版社
冬木弘道が冬木軍プロモーション1周年を記念(?)して出した本です。冬木は当然日本人レスラーなわけですが、どことなくマット界のはぐれ者というイメージがあるのも事実です。これは、彼のキャリアを見れば分かるのですが、
崩壊寸前の国際プロ --> 全日本プロレス --> メキシコ遠征 --> プエルトリコ遠征 --> テキサス遠征 --> ジャパンとの対抗戦 --> 天龍同盟 --> SWSの旗揚げ --> WAR旗揚げ --> 新日本・Uインターとの対抗戦 --> 冬木軍独立
と、かなり山あり谷ありのプロレス人生を歩んでいます。
その冬木のキャリアと、その時に体験したことや思ったことが、正直に(と思う)書かれています。特に国際プロレス時代の回顧や、全日本の選手についての話は、非常に興味深いです。
また、巻末では邪道・外道がそれぞれ単独インタビューに答えていて(聞き手は冬木)、苦労人だけどプロレスについて真面目に考えている彼らの話が聞けるので、これもお薦めです。




「魂のラリアット」
著者:スタン・ハンセン
出版社:双葉社
初来日から25年を経たNo.1外人(ここでのNo.1は史上最高という意味です)、スタン・ハンセンの自伝です。 プロフットボーラーの道を断念するところから、全日本の分裂まで、詳しく書かれています。
特に、ブロディを“プロモーター嫌い”にさせたビル・ワットの言葉、命懸けで挑んだシェア・スタジアムでのサンマルチノ戦、などのエピソードは非常に生々しく書かれており、ファンなら必読と言えるでしょう。
他にも、鶴田とのエピソード、自分がお金にうるさいということ、現在のアメリカンプロレスへの批判、全日本を“マイ カンパニー”と呼ぶようになったこと、など様々なことが書かれており、かなり内容は濃いです。





プロレスの本で、自伝というのは結構多いのですが、小橋・健介・三沢らの本はそれほどお薦めではありません。もちろん、それなりに発見もあるのですが(小橋はマスコミの発言に過敏に反応する、健介の父親の死の真相、三沢はアマレスが大嫌いだった、等など)、メジャー団体にずっと所属しながら安定してプロレス生活を送っている選手よりは、荒波をいくつも越えてきた選手の自伝の方が、やっぱり中身が濃いわけです(ここでは挙げませんでしたが、マサ斉藤著「プロレス『監獄がため』血風録」もお薦めです)。



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