その日もまた、同じ場所にいた
多くの者から忘れ去られてしまい
静かに時の流れる
都会といわれる場所からもっとも対極するこの場所に
いつの頃からか、住み着いた
1羽の妖精
その姿をみるに
その者の辿ってきた過酷なる過去をかいま見ることができた
彼に逢ったのは、数日前になる
都会の喧騒に疲れ
何もかもが重圧に感じるようになり
人と距離を置きたくなって
この場所で暮らし
幾日かたった日のことだった
あやゆる便利というものから隔離された場所
自らが生きる意志をもたないと生きていけない場所
生きるに必要なものを自分で採取し汲み得なければならない
過酷なるこの場所での生活なのだが
生きている実感を得ることができる
温かく迎えてくれる木々の聖歌
私にとっては、都会にいるより心地よかった
そんな、生活を始め幾日かたったある日
いつも昼寝をする大樹の下に
ひとつの虫篭を見つけた
その小さな緑色の篭の中に
ひっそりと自らの存在を語ることなく
たたずんでいたのが妖精だった
空想や物語の中でのみ存在するものだと思っていたのだが
この、場所に妖精がいてもなんの不思議も無い
都会にあるもの
例えばコンビニや車、自動販売機などが
あるより妖精がいるほうがごく自然な場所
そういう場所なのだ
篭のふたは、閉まっていた
誰かに閉じ込められてここに放置されたのだと思い
ふたを開けてやった
まったく出る気配が無し
疲れてるのだと思い
その日はそのままにしておいた
次の日、朝と呼ぶには少々日が昇ってしまった時間に
昨日の妖精がどうしてるか気になって様子を観に大樹へ向かった
人と付き合うの事は、嫌なのに
妖精の心配をするなんて妙な気分だった
虫篭は、閉じていた
でていたのだろう
でて行く拍子に閉じてしまったのだろう
でも、なぜか中を確認せずに入られなかった
そっと、籠の中を覗き込む
いた
昨日と変わりなく妖精は籠の中に佇んでいた
出るタイミングを逃したのだろう
風でふたが閉じてしまったのだろう
そう思いまた、ふたを開けてやった
安心感を覚え
今日の食料探しのためその場を去った
夕刻
無限とも思える海の中に紅い日は沈んでいく
別に綺麗だとかは、思わなくなっていた
毎日同じものを見ているのだからいつもの事なのだ
再び大樹のへ
お腹が減っているのではないか?
妖精がどういったものを食べるかは、知らないが
人が食べれるものなら食べれるだろうと思い
青い木の実や黄土色のキノコなどをあげようと
また、ふたは、しまっていた
今日は、風など吹いていないし
自然に閉じたとは思えない
「なぜ?君はここからでようとしないの?」
「・・・・・・・・・」
言葉が通じないのだろうか?
それとも脅えている?
無理もない自分より数十倍も大きな者が話しかけてきているのだ
その日は、持ってきた食料をそばに置き
帰ることにした
次へ