正直言うと全く興味はなかったのだが、なんとなく私は「うん。」と答えた。
その後私はテープを受け取ったのだが、もともと聞く気がなかったこともあり、そのテープはそのまま置きっぱなしとなり、いつしかその存在さえ忘れてしまっていた。

そして数年後、私は高校生となり、そして大学生となった。
もうその頃には喫茶店も閉店していたし、小さかった私が大学生となったように、お姉さんお兄さん達もそれぞれの道を歩んでいた。

ある日、部屋を整理していると、見た事もないようなテープが出てきたのである。そう、あの時もらった山下達郎のテープだった。
私はまだそのことに気付かず初めてケースを開けてみた。
するとそこには、自分用のテープに書くような気兼ねない字ではなく、明らかに人にあげるのを前提に書かれた、ちょっとよそいきの丁寧な文字が並んでいた。

あ、あの時のテープだ…。

それを見ただけでちょっと心が痛んだ。せめて一度でもケースを開けてこのきちんと書かれた曲名を見たなら、きっと当時の私でも少しは聞いてみる気になったに違いない。 →続きを読む