見えない壁








懐かしく感じてしまう、この風景。

つい1週間前には、自分もそこに立っていたというのに…。

気付けば、あまりにも遠くて。一歩踏み出せば近づけるというのに。

どんなにその場所に立っていても、見えない壁に阻まれる。

絶対に進んでいく時間。

あまりにもそれが辛くて…。

いくら自分が立ち止まっても、時間は待ってくれない。

心に、ぽっかりと穴が空いてしまったようだ。

「見ててもしかたないか」

見てれば、虚しさが広がるだけだ。

「どうしたの、手塚?」

「……不二」

何時の間にか横に立っていた不二。

手塚と同じように、テニス部を静かに見つめる。

あの頃と変わらない笑顔で。

「帰ろっか」

「あぁ」

変わらない。

自分が変わってしまったんだろうか……?

不二と並んで帰る。

とりとめない会話を続けながら。

前と同じなのに、違和感を感じるような。

もう、よくわからない。

何が同じで、何が違うのか。

「もうすぐ、受験だね」

「あぁ、エスカレーター式なのだからクラブ活動させてくれてもいいものを」

「くす、君はね。皆は勉強しなくちゃダメなんだよ」

眉間に皺をよせて黙る。

二人は別れて、それぞれれ家に向かう。

今日までずっとテニスに費やしてきた時間が丸々あくことになった。

特にすることがない。

朝とかも早くに目が覚めてしまう。習慣とは恐ろしいものだ。

空いてしまった時間を、やはりテニスに使ってしまう。

近くのコートに出かけることにした。









どんなにやっても、埋まらない穴。

やればやるほど、大きくなっているよな気がしてしまうのは気のせいではないだろう。

手塚は躍起になってボールを打ちつづけた。

何かにとりつかれたように………。

「ん!?」

パシャと、一瞬光が目に入った。

「あいかわらずだね」

「何をやってる」

「空いた時間で趣味の写真をやってるんだよ?」

そう言って、また手塚を写す。

「やめろ……」

「君はそのまま続けて。勝手に撮ってるからさ」

手塚がテニスをしている姿を懸命に写す。

その表情は、辛そうで………。

「お前はやらないのか」

『何を』とは言わず。

「……もう、やらないよ」

不二も、言わずに。

「そうか…」

無言の空間。

この空間がお互いに好きだった。

無理せずにいられるような気がして。

でも、今は辛くて仕方がない。ボクは、変わってしまったんだろうか…?

「不二、もう終わりにしよう」

「うん、そうだね」

心の隙間が埋まらないまま別れた。

別々の道を歩いて。





























好きだった、ずっと。

テニスコートに立っているお前が。

テニスをやる度にお前を思い出し、隙間が広がる。

埋めてくれるお前はもういない。

出きることなら、こまま時が止まればいい。

俺の愛した、お前のままで。





見えない壁に阻まれたまま、壊すこともなく。
見えない壁の向こうから、お前を見つめる。


































愛した君は、もういない。



暗いです。
これは手塚サイドなので、次は不二サイドの話に続きます。
そして、その次もあったりします。
これは、読まないことをお勧めするんですけどね(じゃ、書くなよ)
最近、塚不二がブームな峰谷だったりします。



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