いしかわじゅんは、無敵である

                               ----いしかわじゅん 「秘密の本棚」を読む(2009.7.30)


いしかわじゅんは無敵である。

子どものころから、少年誌の回し読みと散髪屋の貸本をコンプリートし、妹の影響で少女まんがも押さえている。
まんが家としても、「三流劇画誌」でのデビューから、いろんな雑誌を転々とし、
それでいてメジャー誌や非まんが誌に連載を持った経験もあり、
特定の雑誌や 出版社に気を遣う必要もなく、また人脈も広い。

マンガ家歴も30年を越え、一部の巨匠を除いて、ほとんどが後輩である。
明治大学漫画研究会の人脈は、まんが家のみならず、編集者にまで広がっている。
そして、決定的には、現在は文章の仕事が多くなっていることから、 仮にまんが界から絶縁されても生活に困ることはない。(たぶん)

つまり、いしかわじゅんは、50年前から現在に至るまでのまんがを知り尽くし、
作家・編集者の実情にもくわしく、もちろん、まんがの技術面もわかっている。
そして、決定的なことは、職業上の利害関係から筆を鈍らせる必要がない。
もう、誰もいしかわじゅんを止められないのだ。

この本は、2002年から2007年までの6年間にわたって、インターネット上で連載されたコラムをまとめたものである。
あとがきによれば、今まで出版されてきた雑誌原稿とはちがい、文章量からテーマまで自由に書くことができた、とのことである。

誰にも止められないいしかわじゅんが、本当に自由に書いたんだから、
それは、もう、いしかわじゅんの思うままの文章がつづられている。

最新の連載の寸評もあれば、誰も知らないようなマイナー作家も拾 い上げる。
子供のころの読書体験があったり、青春時代のほろ苦い思い出もある。
自分のアシスタントの話をはじめ、まんが業界の裏話もある。
知っていることしか書いていないのだが、とにかく知っていることの範囲が広い。

文章はいつもながらの軽快さで、400ページ弱という厚さにもかかわらず、ついつい読み進み、どんどんと読めてしまう。
日本図書館協会の選定図書にもなったらしい。

やはり、いしかわじゅんは無敵なのである。


       小学館サイト内「秘密の本棚」紹介ページ                     
        いしかわじゅん公式サイト
   

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