それにしても、「ゆず」・・・・・・

                     ――――須藤真澄「長い長いさんぽ」を読 む(2006.2.22)

 
須藤真澄の「長い長いさんぽ」を読みました。

カバーに「ゆず」のカットがあり、腰巻に「ゆずとの最後の日々」とあります。
それだけでも、「長い長いさんぽ」がどんなことを指しているのかがわかろうというものです。
いつかはやって来ることを覚悟しなければならない愛猫との別れを、
須藤真澄は本当に真っ直ぐに、とてつもなく真っ直ぐに描ききってくれました。

といっても、作風が変わったのではありません。絵柄も、話の進め方も、いつもの「ますび節」です。
しかし、その作品の中で描かれている須藤真澄と夫がやってしまった行動は、
あまりにも、真っ直ぐなものでした。(1)

ところで、さらっと「夫」と書いたのですが、それまでも「須藤真澄は既婚」との情報はあったものの、
今まで 「ゆず」を始めとするエッセイマンガでは、
けっして夫は私たちの前に姿を見せることはありませんでした。
ところが、さすがに今回ばかりは、
夫の存在なしに漫画を成立させることが出来なかったということなのでしょう。

少し筋違いかもしれませんが、須藤真澄にとって、ゆずがいなくなったことの重さとともに、
そのことを共有できる人がそばにいることの幸せがあることも、
しみじみと感じさせてくれたような気がします。

それにしても、前の晩のゆず……



 (1) 要は火葬したのだが、その前後の過程が真っ直ぐすぎて、あやうくどこかへ突き抜けてしまいそうだった。
   実際に何をやったのかをいったん数行ほど書き連ねてみたが、さすがに消した。ネタバレということもあるが、
   これは読んで追体験しなければいけないことだと自分の書いたものを読みながら感じたからだ。
    ちなみに、須藤真澄は、今、2匹の仔猫を飼っているらしい。「ゆずがいない」ということだけを抱えて暮らすことに
   耐えられなかったらしい。とりあえず、そんな風に癒されていることも報告されていることに安心する。

  * 須藤ゆず
      1988年11月3日―2005年1月16日
 
 * ゆずの登場する須藤真澄の単行本
    「観光王国」(「埋め草絵作文」に4ヶ月のゆず・ふゅーじょんぷろだくと・1989/アスペクト・1999)
    「子午線を歩く人」(「陽がまた昇ってしまった」に仔猫のゆず・ふゅーじょんぷろだくと・1989/アスペクト・1999)
    「天国島より」(後半の8作品に、生後半年から2歳までのゆずまんが・河出書房新社・1992/1999)
    「ゆず」(生後1ヶ月の仔猫から4歳まで、全編ゆずまんが・秋田書店・1993)
    「ゆずとまま」(5歳から7歳までのゆずまんが・竹書房・1996)
    「ご近所冒険隊」(主人公の飼い猫としてゆずが登場・竹書房・1997)
    「どんぐりくん」1―2(ゆずが主人公の小学校もの・竹書房・1999-02)
    「ゆずのどんぐり童話」(世界の童話の主人公が「ゆず」に?・エンターブレイン・2001)
    「長い長いさんぽ」(12歳から16歳までのゆず・エンターブレイン・2006)

   おさんぽ王国(須藤真 澄公式ページ)

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