私たちは手塚治虫をどう受け継いでいくのか----おりおりの「ニッポンのマンガ」(2006.12.3)AERAムックとあるが、 要は朝日新聞社主催の手塚治虫文化賞10周年の記念誌である。 受賞者の近況インタビューや新作をならべつつ、 この10年間のマンガの流れやトピックを紹介するコラムでつないでいる。朝日新聞社としては、手塚治虫文化賞受賞者を並べることが「ニッポンのマンガ」を描き出すことになるという自負心もありそうだ。 どこか懐かしい感じがした。 空気や匂いのようなものが古き良き時代の「ぱふ」を思い出させるのだ。 まず、作家への距離が近い。作る側と読む側という区別よりも、同じマンガを愛する者、同じマンガ読者であった者として、同じ目線にたってマンガを語りあっている。つまり、作家に対する尊敬、作品への愛情があるのはもちろんだが、それと同じくらいの深さで、ともにマンガを愛するものとして現在のマンガ状況のあり方に対する関心があるのだ。 その背景には、描き手の側にも読み手の側にも今でもマンガ文化が亜流でしかないという共通認識があり、輝かしい未来への希望を語りつつも、どこかで、その不安定な地位へ危機感を意識せざるを得ないという思いを共有しているのである。 つまり、作者も読者もニッポンのマンガの行く末が心配でならないのだ。 それは、手塚治虫が創始したと言っていい「ニッポンのマンガ」を 私たちがどう受け継いでいくのか、という問いにどう答えるのかということでもある。 そして、それぞれの作家の答えがこの一冊の中に満載されている。 |