こうの史代の意欲作の最終巻。 なのだが、いささか本は薄めで、本編は100ページ弱しかない。 というのも、もともとの書き下し文が2ページ分しかなく、 天の巻・地の巻が4ページあったのと比べて少ない。 物語としても、ニニギの降臨と結婚、その子らの海幸彦・山幸彦のエピソードと、 山幸彦の子で後に神武天皇となる子らの誕生という流れは、 「神代編」というには妙に人間くさく、かといって「人世編」ほどの史実感もなく、 こうやって巻を分けてしまうと、けっこうダレ場なのだった。 見どころは、ニニギの降臨にアメノウズメら天岩屋戸で活躍した神が再登場することと、 ニニギの妻・コノハナサクヤの父や、山幸彦ことホヲリの妻・トヨタマの父が、 実はオオヤマツミ(山神)や、オオワタツミ(海神)という古い神で、 古事記でも、アマテラスなどより先にイザナギ・イザナミから生まれていたことか。 そんな再登場の神々は、もちろん初出時と同じ姿をしているが、 描かれた姿を見て、そういえばそんな神もいたなあと思い出させてくれるあたりも、絵で表現されている強さでもある。 巻末には、「神々の系譜」と題された神々の顔入り、親子関係入り、初出頁入りの表が、 4ページを使って描かれている。これも、一目瞭然でわかりやすい。 数えてみると、描かれた神々は200人を越えている。よく描いたものだ。 そんなこともあってか、あとがきによれば、 複雑で悲壮な人代編を描くのはとうていわたしには無理だと思っていました。 でも今は気が変わりました。いつか力を付けて、必ず続きを描きます。 と宣言した。 よし。また気が変わらないうちに、すぐにでも描いてほしいところだ。 それには、まず、大人の事情をクリアしなければならない。 この文章を読んだ、そこのあなた、1冊1,050円の3巻本でも大人買いしてみないかね。 |