先日、不慮の事故でなくなったオーエン・ハート選手は、カナダのカルガリー出身でした。
現在は、カナダもプロレス不毛の地になってしまいましたが(WWFとWCWが定期的に訪れているのみ)、一昔前はスチュ・ハートという名レスラー兼名プロモーターによって、一大勢力が築かれていました。そして、このスチュ・ハートが主催していたのがカナダのハート道場で、ここでは多くの名レスラーが巣立っていきました。
スチュには8人の息子がいましたが、全員が一度は一度はレスラーになっています(ただ今も現役なのはブレット・ハートだけになってしまいました)。
またダイナマイト・キッド、 デイビーボーイ・スミスはイギリス経由でカナダにやってきました。
日本からも馳浩、 平田淳嗣、 佐々木健介、 ライガー等、主に新日本のレスラーが長期滞在をしました。逆に、カナダのハート道場で基礎を学んでから新日本に留学してきたという珍しいパターンにクリス・ベノイがいます。
さて、この道場出身者は大まかにレスラーとしては「身体は大きくないが、素早いグランドテクニックとキレのある鋭い技を持ち、確実な受け身をとれる」というタイプが多いです。『体の小さい万能タイプ』とでも言えるでしょうか?最も典型的な例がダイナマイト・キッドでしょう。現役ではブレット・ハートとクリス・ベノイが双璧といえます。
また、得意技が似てくるのも特徴で、「相手の首を両手で捕まえてのヘッドバット」「抱え上げ式(ドリー・ファンクJr.式)のバックドロップ」「首に巻きつくようなラリアット」「スピード感溢れるペンジュラム・バックブリーカー」等は、多くの人がが得意技としています。
それと、試合の展開の仕方も似ており、いきなり大技を使ったりはせず、序盤は「腕を極める(アームロックやハンマーロック)」→「ロープに振る」→「ロープを使った攻防」→「アームホイップ」→「再び腕を極める」という展開を何度か繰り返し、試合を徐々に盛り上げていきます。
このように、カルガリー出身者は基礎に立った、ベーシックなレスリングを見せてくれるので、マニア層にファンも多いですし、古き良きプロレスを守るという意味でも重要な意味を持ってます。
しかし、残念ながらハート道場は既に閉鎖されています。
道場主であったスチュ・ハートやコーチを務めていたミスター・ヒト、 ケンドー・ナガサキの志を受け継いだレスラーは現在も多く活躍していますが、いつの時代にも光り続けるこのカルガリースタイルがマット界から消えるようなことがあってはいけないと思います。
私は、オーエンの死を聞いたときこのようなことを考えました。
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