レッスルマニア2000の感想



今さらながらの感はありますが、レッスルマニア2000の私なりの感想を書いてみたいと思います。


とりあえず、私がベストバウトだと思ったのは「3WAY・ラダー・タッグ選手権」です。
とにかく6人の体の張り方は尋常ではなかったです。危険ダイブショーといった趣も感じられましたが(特に序盤は)、動きの一つ一つにキレがありました。
今度は、このメンバーによるラダー無しの試合を、こういった大舞台で見てみたいですね。きっと期待に十分応えるファイトを展開できるでしょう。


次の試合はトゥー・クール&チャイナ vs ラディカルズの6メン。
超実力者のエディ・ゲレロがチャイナにフォールを取られてしまうようでは、眉をしかめざるを得ませんでした。


次はITC&欧州選手権のトリプルスレットマッチ。
天然ヒールのカート・アングルに、かなりのベビーフェース人気を獲得しているクリス・ジェリコ、まだあまり定着感がないクリス・ベノワ、の3人による試合です。
体格的にも似通った3人だからか、なかなかの好勝負となりました。特に、お互いにカルガリースタイルをベースとしているジェリコとベノワの絡みはかなりハイレベルでした。ただ、ベノワに対しては観客が妙に冷たかったように思います(移籍後間もないことを差し引いても)。やっぱりパフォーマンスも上手じゃないと、ニューヨークでは生きていけないんでしょうかね?


セミファイナル………、主役はピート・ローズだったようです。


さて、いよいよメインです。
レッスルマニアのメインですから、試合までの盛り上がりでも試合内容でも、業界随一でなければならないでしょう。
試合形式は4WAY・イリミネーション・マッチとなり、それぞれの選手にマクマホン家の誰かがセコンドにつくという、何とも奇妙なマッチメイクとなりました。
ビッグ・ショーはスタミナのない選手ですから、序盤に活躍する代わりに早々に退場する、というのは何とか予想がつきました、また、最後はHHHとロックの一騎打ちになるというのも何となくは予想がつきました。が、最後の大ドンデン返しを予想できた人はいなかったんじゃないでしょうか? ハッピーエンドを拒んだレッスルマニアとして、後々有名になるやもしれません。
レッスルマニアに備えて現場に復帰してきたビンス、そして大ヒール一家となったマクマホン家、今後への巨大な予告編といったレッスルマニアのメインでした。

試合内容について言うと、ちょっとレスラー各人の技の数が少なすぎだったように思います。
基本的にはスタンドでのパンチとラリアットの打ち合いがほとんどで、間がもたなくなると場外へ行って観客席に入っていったりするだけ。
プロレスラーとして、もう少し技の巧さや技の応酬というのも見せて欲しいものです。




全体を通して言えるのは、選手が過剰状態にある、ということです。
シングルマッチが一つもなかったことが、そのことを最も顕著に表していると思います。
特に中堅層の分厚さは尋常ではなく、団体側がプッシュしてくれた時にどれだけ目立てるか、というのが今のWWF選手の出世のカギとなっているのでしょうね。



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技の話3「ドロップキック」



ドロップキックといえば、デビュー直後の選手でも使うような、プロレスの基本技の一つです。

この技の元祖はジョー・サボルティという選手だそうですが、さすがにこの選手に関しては詳しくは知りません。
が、ドロップキックあるいはハンマースルーというのは、アメリカでプロレスがテレビで放送されるようになってから、「見た目が派手である」ということで、急速に広まった技だそうです。


さて、ドロップキックを見る時に注目すべき点としては、
・ 出すタイミング
・ ちゃんと蹴れているか
・ ジャンプの高さ
・ 着地時の受け身
等が挙げられます。


「出すタイミング」というのは、ロープに振った相手に決める場合であれば、自分がジャンプの最高点に達した時に相手を蹴れるか、ということです。
一方、至近距離から出す場合は、「いかに相手に間を与えないで決めれるか」ということを指します。
ドロップキックというのは目の高さまでジャンプしなければならないわけですから、そのジャンプの前にどうしてもタメが必要となります。ところが、このタメというのは、相手に受け身の準備(心・体ともに)をする時間を与えることとなります。当然、このタメというのは短ければ短いほどいいですし、「出すぞ!」というのを相手に読まれないようにする方がいいわけです。

「ちゃんと蹴れているか」というのは、相手を蹴る時に、ジャンプの勢い以外にも、空中で体(主にヒザ)を伸ばすことによる威力を加えているか、ということです。
この動作がなければ、せっかくのドロップキックも、大きなダメージは望めなくなってしまいます。

「ジャンプの高さ」は、基本的に、高ければ高いほどいいのです。
が、最近は相手の負傷した箇所(ヒザ等)を狙うピンポイント・ドロップキックが流行しています。

「着地時の受け身」について。
最近のドロップキックはほとんどが横跳び・ななめ跳びで、クラシックな正面跳びはほとんど見られなくなっています。
正面跳びは、仕掛けた方が一人ジャーマンのような形で落ちていくので、確実な受け身が必要とされました。しかし今は、蹴った反動で一回転するようなドロップキック(ダグ・ファーナスが名手だった)が主流となってきています。


ドロップキックはレスラーのセンス・運動神経・反射神経が如実に表れる技であるといえます。
もちろん、ドロップキックだけうまい選手というのもいるのですが(昔いた、スウィート・ダディ・シキという選手はその典型だったそうです)、一流の選手はたいていドロップキックが上手です。また、飛び方や受け身の取り方に選手の個性が表れるので、プロレスラーの実力を測る一つの尺度となる技です。


さて、私が見てきたドロップキックの中で最高の一撃だと思っているのは、ジャンボ鶴田がジャイアント馬場との初対決(75年12月15日)でみせた一撃です。
まず至近距離から一発目を見舞い(これは凡庸)、続いて馬場をロープに振ってから2発目のドロップキック! これは本当に凄い!!
あの馬場の顔の高さまで、鶴田の長身が横一直線に飛んでいる。さらにヒザで十分に溜めて、ちょうどジャンプの最高点で蹴っている。これ以上はないという、会心のドロップキックでした。
後に鶴田は、ラリアットやキチンシンクといった楽な技(?)を覚え、ドロップキックをあまり使わなくなってしまうのが何とも残念です。



ドロップキックをコーナーポストからやるのがミサイルキックです(意外と知られていませんが、この技の日本人の使い手第一号はジャンボ鶴田)。
今のプロレス界でミサイルキックの名手といえば、武藤と三沢が双璧でしょう。
ドロップキックに比べると個性が出にくい技ですが、やはり天才肌のレスラーが使うと、一味違ってきますね。



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今年のCCについて



2000年のチャンピオン・カーニバル(以下、CC)の決勝戦が明日に迫っています。

決勝の対戦カードは小橋vs大森です。
小橋はその実績からいって順当と言えますが、大森が勝ち上がってきたのはかなり大穴的中と言えるのではないでしょうか。
大森には悪いのですが、「小橋優勝」の率はかなり高いと言えます。が、CC全体が“成功”と言われるためには決勝戦が名勝負・好勝負となる必要があります。大森の頑張りに期待したいです。



今年のCCはトーナメント戦の導入というので大きな話題を集めました。
時間無制限になったことや、敗者復活などが無いことによって、試合に緊迫感が生まれていました。
しかし一方で、CCシリーズなのにCC公式戦が行われない会場があるなどの弊害もありました。

これの解決策としては、
負けた選手はブロックの下の方に移動していって、1〜16位まで全部決定する(選手の集中力が持続できるかは分かりませんが…)」
1ブロックを4人ずつとして4ブロック作り、それぞれのブロックでリーグ戦を行う。それぞれのブロックの一位の選手4人が、トーナメントを行い、優勝を決める」
などが考えられますが、いかがなものでしょうか。


さて、今年のCC公式戦で大きなインパクトを与えたものとしては、「7秒決着」と「関節技決着」が挙げられるでしょう。

「7秒決着」の私の感想は、『鮮烈さがあって、素晴らしい』です。
大森がレフェリーを秋山にぶつけたのは小川良成的で良かったですし、その直後のアックスボンバーはかなり会心の当たりでした。
ただ、3カウント直後に必要以上に大喜びしてたのはいただけませんね。自ら「格下の相手が勢いだけで勝ちました」と言っているように映りましたから。

「関節技決着」については、私は歓迎していません。
そもそもこの潮流は、バーニング解散後の志賀が、突破口として、いわゆる“U系的な”関節技を使い出したのが発端です。それが三沢vsベイダーと小橋vsスミスに波及した形となっています。
が、例えば腕ひしぎ逆十字固めでも、U系では「極めれば終わり」なのに対し、全日本では「タップしなくても折れない」というものです。
前者の方を見てしまってから後者を見ても、あまり納得はできないものです。
よって、私はこの流れを認めていません。今まで通り(限界に差し掛かっているのかもしれませんが…)2.9カウントのプロレスを続けて欲しいと思います。



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ストーンコールドのベストバウト



今回は私事が多くなってしまいました。御了承ください。


先日、96〜97年にかけてのWWFのビデオを何本か見る機会がありました。
この頃のビデオは、日本語版の発売もなければ、CSで放送されていたわけでもないので、日本では入手するのが比較的難しいのです。

さて、見ていて一番驚いたのが、ヒットマンvsストーンコールドの試合がものすごくスイングしていたことです。
96年11月17日・サバイバーシリーズでの試合と、97年3月23日・レッスルマニア13での試合(ともにシングルマッチ)を見たのですが、両方とも実に見応えのある好勝負でした。

それまで、私の中でのストーンコールドの印象といえば、新日本来日時代の「地味なテクニシャン」というのと、WWFヘビー級を取ってからの「パンチとスタナーだけ」というものだけで、あまり高くは評価していませんでした。
しかししかし、この時期のストーンコールドは、その二つの印象が絶妙にブレンドされたような、実に素晴らしい動きを見せているのです。
テクニシャンだけど、ラフもできるし、スタナーも使う。そして何より、試合の組み立てでは天下一品のヒットマンと十分に渡り合える。


サバイバーシリーズの試合は、ヒットマンの復帰戦で、これからしばらくこの二人は抗争状態になります。
ストーンコールドは試合巧者ぶりを随所で見せ、特にヒットマンのブルドッキングヘッドロックとペンジュラムバックブリーカーを切り返したシーンは見事でした(ヒットマンが技を切り返されるのは珍しい)。
最後はミリオンダラー・ドリーム(コブラクラッチ)を丸め込まれて、破れてしまいますが、十分にストーンコールドが光った試合でした。ちなみにこのフィニッシュはWM8でヒットマンがロディ・パイパーに見せたのと同じですね。

レッスルマニア13では、どちらかというと凶器と流血のシーンが目立ってしまいます。これだけの技術のある二人ですから、純粋に技と技だけで対決をしてほしい気もしますが、それでもなかなかの好勝負です。
最後はヒットマンがシャープシューターで完勝。やはりヒットマンの壁は高かったようです。
“孤高のアウトロー”という、全然ベビーフェイスっぽくないキャラクターなのに、なぜか人気を獲得しつつあるストーンコールド。流血にも容赦のない攻めをみせ、さらには鉄柱4の字等も使い、ヒールとして変貌しつつあるヒットマン。今後の二人を表しているかのような試合でした。


これまで、私が見た中でのストーンコールドのベストバウトは、デュード・ラブ戦(98年4月26日、レフェリーはマクマホン)かWM15のロック戦かのどちらかかなぁ、と思っていたのですが、今回見たヒットマンとの試合はそれらを完全に上回っているものでした。
というわけで、私が選ぶストーンコールドのベストバウトは、96年11月17日の対ブレット・ハート戦です。



さてこのように、「あまり評価していなかったけど、試合を見ていくうちに認めるようになった」というのは、このコラムを読んでいる方もご経験があるのではないかと思います。

新日本の西村修が「プロレスの必要以上の進化は間違っている。それを支持するファンはバカ」という発言をしたことがありました。
この時、私は「言ってることは間違ってないとは思うけど、西村がディーン・マレンコやフィット・フィンリーのような動きを見せてるか?」と思いました。また私は、ドロップキックはレスラーのセンスが最も表れる技だ、という学説(?)を持っているのですが、西村はそれほど名手というわけではなかったと思います(使う回数は多かったですが…)。
というわけで、私は西村を「自分の考えに体がついてきてない選手」という風に評価していました。

ところが、98年4月4日のIWGPタッグ戦・蝶野&武藤vs橋本&西村で、西村は闘魂三銃士全員を食ってしまうようなファイトを展開するのです(最後はフォールをとられますが)。さらに猪木の引退セレモニーでは、一人だけ猪木から張り手をもらうなど、この日の裏MVPといった活躍ぶりでした。
この日の西村を見て、私は彼への印象がものすごく変わりました。第三世代はパワーファイターが多いだけに、彼に期待するものは非常に大となりました。
ところがその後、天龍の参戦によってシリーズの中心から外れ、98年G1では体調不良(すでに高熱などの症状が出ていたそうです)のために中途半端な試合で1回戦敗退。そして、長期欠場へ……。

現在は、ついに復帰も視野に入ってきたそうなので、再び彼の雄姿を見れる日を、楽しみに待ちたいと思います。



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