リック・フレアーを語る



今回は、アメリカンプロレスの大御所中の大御所であるリック・フレアーについて話をしてみたいと思います。


フレアーへの評価について言えることの一つとして「ファンとレスラーとの差」が挙げられます。
近年のWWEの大ブレイクによりアメプロの評価が上がりましたが、昔(フレアーが全日本に来日していた頃)のアメプロへの評価というは、ショー的な要素を嫌う当時のファン気質と愛国心的な要素があいまって、かなり低いものでした。
さらにフレアーというのはオーバーアクションな仕草や定番ムーブの多いレスラーですし、ニック・ボックウィンクル的な薄氷防衛を繰り返していましたので、正直言ってフレアーは日本のファンには高い評価を受けてませんでした。
平成になってからは新日本に多く来日するようになり、多少は見直されたりもしましたが、高い観客動員に結びつくような存在にはなりえませんでした。

しかし、フレアーのレスラーからの評価というのは極めて高く、ジャイアント馬場がアメリカでNWA奪取前のフレアーの試合を見て「こいつは必ず世界のトップになる」と確信したという逸話を筆頭に、蝶野が「アメリカではフレアーが一番だ」と言ったり、武藤が「俺のプロレスのベースはフレアーだよ」と発言するなど、日本のファンの評価が信じられないほどの高評価を受けています。

この傾向はアメリカのレスラーからの評価となると一層顕著になり、
「リック・フレアー、タリー・ブランチャードとヒールが好きだったね。それは、その後の俺のスタイルにも影響した」(by ショーン・マイケルズ)
「『ロッカールームにいる誰とでも試合していいぞ』と言われたから、迷うことなくフレアーを選んだ。(その試合を4の字で負けた後)リング上でいつまでも大の字になって、フレアーと戦えた余韻を楽しんでた」(by スコット・ホール)
「彼はまさに『伝説』、彼のパフォーマンスは最高だった」(by ミック・フォーリー)
「これまでに日本、メキシコ、アメリカと三カ国にわたって数多くのレスラーを目にしてきたが『生で見た』範囲において最高のレスラーは、もう文句無しでリック・フレアーだ」(by タジリ)
「フレアーとかニックのスタイルこそ私の目指すスタイルです。この業界に入る前の私のヒーローは間違いなくフレアーでした。私はフレアーのファンでしたし、彼がいかに素晴らしいレスラーであるかを理解していました。彼は全ての対戦者のグレードを引き上げていましたから」(by HHH)
のように、明らかにフレアーよりも下の世代の選手からも高い評価を受けています。


では、このように評価が分かれる原因は何なのでしょうか?
ファンは往々にしてレスラーに“強さ”(超獣コンビやスコット・ノートンが典型的)を求めます。
一方レスラーというのは“強さ”よりも“巧さ”を重視する傾向があるようです。

この“巧さ”という観点から見ると、間を熟知し、チョップ一発に大きな意味を持たせ、確実な受身を取り、4の字へつながる足攻めで試合に筋を作るフレアーというレスラーは、最高ランクの選手になるのでしょう。

ファンとしてレスラーに強さを求めることが悪いことだとは思いませんが(レスラーに何を求めるかは、それこそファンの自由でしょう)、本当に強さだけしか求めないでいると、プロレスなのかボディビルディングなのかウエイトリフティングなのか分からなくなってしまいます。
プロレスから奥深さを読み取るためにも、レスラーの巧さに注目して試合を見ることも大事と言えると思います。




さて、私が見たフレアーの試合で最も印象に残っているのが、WCWワールドワイドで行われたブラッド・アームストロングとのシングルマッチです。ブラッドがグッドレスラーであるということは充分に知っていましたが、この日のフレアーは心身ともに充実していたようで、ブラッドを全てにおいて圧倒していました。
重厚なハンマーロックの攻防で試合が始まり、的確なエルボードロップ、レフェリーの注意をそらしておいてからの急所蹴り、そして最後はお決まりの4の字固めでフィニッシュ、というフレアーワールドが炸裂していた試合でした。
ビデオに録画しなかったことを大変後悔しております。


WWEに登場した頃に比べると少々番付が下がってきているような感じがしますが(さすがにRVDとかとはプロレスが合わなかったようですし)、まだまだフレアーには頑張ってほしいと思います。



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