現在のWWEにおいてスティーブ・ブラックマンが姿を消してから、随分長い時間が経ちました。
別に私は彼を高く評価していたわけではありませんし、復帰を切望しているというわけでもないのですが、彼のようなレスラーがいなくなったという事実か
ら、現在のWWEが抱えている現状を読み取ることができます。
その現状とは、「ファイトスタイルの収束」です。
ここ数年のWWEを見ていると、選手があまりに同じ動きをしているように見受けられます。
使う技としてパンチ・ラリアット・ロープに振る(振り返す)はほぼ全レスラーが使います。
特にロープに振る(振り返す)は頻繁に使われています。おそらくは試合のスピードアップを要求されてのことなのでしょうが、どのレスラーもが当たり前の
ようにハンマースルーを切り返しているのは、ある種異様な光景に映ります。
また、どのような技に対しても、一定の受け(いわゆるセル)を行います。
これは攻撃する側と攻撃される側をハッキリさせるという狙いがあるのでしょうが、例えばビッグ・ショーのような巨漢の選手であれば、相手のパンチを食
らってもよろめくことなく、「効かないぞ」というジェスチャーをしていても試合を作ることは可能であると思われます。ここでも没個性が見受けられま
す。
さらに、試合展開もワンパターンです。
原則としては「やったりやられたり」の繰り返しで、一方的な展開の試合というのは滅多にありません。その結果、ルーキーの選手とトップ選手が(一見する
と)互角のような試合をしたり、アンダーテイカーのように相手に格の違いを見せつけるようなファイトを得意としていた選手がキャラクターを崩さざるを得
なくなっています。
また、一方的に攻められていた側が最後の最後に大逆転!
という試合パターン(引退直前の山崎一夫が名人芸だった)は古典的なベビーフェースの黄金律でしたが、それもなくなってしまいました。
ここで注意しておきたいのは、各試合は決してプロレス的にレベルが低いというわけではない、ということです。
それでも、同じような技を使う選手の同じような試合を延々と見続けていると、いつかは見飽きてしまう時が来るということです。
さて、話をブラックマンに戻しましょう。
ブラックマンという選手は、持ち技は打撃系がほとんどでしたし、適当な塩加減(笑)も加わって、ある種の独特さをかもしだしていた選手でした。
このような選手がある程度は出世をできた背景としては、「今ほど(首脳陣から)ファイトスタイルを強要されていなかった」「今ほど選手層が厚くなかっ
た」ということが挙げられます。
ファイトスタイルが画一的ではないということは、レスラーのルックスやキャラクターだけでなくファイトスタイルに対して応援することができるということ
です。
また、選手層が厚くないということは、興行として見れば第一試合からメインイベントまでのヒエラルキーが作られることとなり、かえってよい効果を起こす
側面も持っています。
先ほども言いましたが、試合がテンポアップすることや各レスラーが好勝負生み出すことは、必ずしも悪いことではありません。
しかし、全員が全員同じようなプロレスをしていると、見る側に新鮮な驚きや鮮烈さを感じさせることができないということです。
と、長々述べましたが、実際にWWEが直面している最大の問題は、ストーンコールドとロックの不在、並びにレスナーの不人気であると思いますが…。
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