むかーしむかし、まだまだヒノモト国がしゅうけん国家となる前、ひとにのぎのおんな國などと呼ばれていた頃、
周囲を山間に囲まれつつも人の寄り集まった場所がありました。
この寄り集まる場所をミヤコと呼んでそれはもうそこら中から労働力や造営に必要なものを集めて完成させた、
いわゆる贅沢の極みと言っても過言ではないでしょう。
何の為に作ったか、そんな事は今はどうでもいいでしょう。とにもかくにもこの人の多く集まるミヤコにて、
とあるおおきみさんはうーんとすーんと悩んでおりました。
それはと言うものの、近頃の国内国外情勢はさんたんたるものでちょいと視線を傾ければ、
待望の皇太子が生まれて喜び勇み、周りの反対を押し切って即刻皇太子に仕立て上げたものの、
1年ほどで病死してしまい、「わ、わしの夢がぁ〜・・・おぉぅおぉぅ・・・」と皇后の巧妙四ともども、
ぎゃーすぎゃーすと泣いて泣いて泣いて泣いて泣いて泣いて泣いて泣き崩れる日々を送ってきた上、
「うぉっほん、政は全ておんしゃあに任せるぞぉぃ?」と頼みにしていた萎餓屋王が某4兄弟によって、
「どーせ死ねばいいんでしょ!? 死ねばっ!」と言ったかどうかは曖昧ながら自殺してしまい、
権力なんて持ってるようで持ってないおおきみですから、しぶしぶながら、どーしよーもなくて某4兄弟に政を任せざるを得なくなってしまったのです。
ところがこんな行いの報いがやってきたのか、某4兄弟は高熱を発し、全身に発疹を浮かび上がらせながら苦しみながら絶えます。
この某4兄弟が死んでちったーマシになるかとおおきみさんは内心ホッとしていたら、
某4兄弟を苦しめたものは巷にも溢れていたものですから一難は除いたけどもう一難は都合よく除けると思うなよ?状態なのです。
巷で不可解な事が流行るとその矛先は時のお偉いさんに向くのがこの当時の、いえ何時の時代でも当てはまる事柄ですので、
人がバンバン死んでいくのはおおきみさんの責任、
「しょー○がしっかりやんねーからわいらみたいなぜんりょーなモンがしなにゃーならんのじゃ」
と恨み辛みが全ておおきみさんに向かってきます。
こんな悲惨ともいうべき状況なのに、4兄弟の内の死期家長男、誹賂嗣が
「おいこら、し○ーむ。てんめぇ、今まで俺の親父達がよぉ、
内政をきっちりやってやったと言うのに、親父達が死んでからはよそ者にすべて任せるたぁ良い度胸じゃねぇか、あぁん?」
と凄みを効かして管を巻いてきたものですから、おおきみさんはとってもびびっちまいました。
もはやこの出来事はダメ押しです。ちょっとやそっとのことでは心の安寧は取り戻せません。
そんなわけでまずはおおきみさん、この様々な出来事を
「みみみみみ、ミヤコじゃ!ミヤコが悪いのじゃ!」
と全ての責任をミヤコに擦り付けてとっととミヤコを遷しちゃいます。これもびびっちまったからです。
そんなびびった心に一服の清涼剤を見つけ出すおおきみさん。
「これじゃこれじゃーーー!わしの荒んだ心を慰める奇跡の薬!これを広めれば世は泰平、何事も起こらんわーい!」
と叫んだかどうかは定かではありませんが、この頃から仏教に傾倒していきます。心を傾けるんです。
そりゃーもう「うざったーいお前のこーとがー♪」と、ある曲を改変して歌いたくなるぐらい執心してしまうんです。
まず最初に「全国に寺を造れ。僧の寺と尼の寺を必ず造れ。造らんとは申すなよ?」と各国に強要します。
とはいえ、いくらおおきみさんの命令だと言えども可不可はあるんです。こんな一言で容易く造れるなら苦労しません。
この当時お寺を造るとは現在ではコンピュータを作るのと同義だといっても過言じゃありません。
お寺を造営するというのは最新の技術を用いるのです。ですからそう容易くは造れないのです。
そんなお寺の造営事業なのですが何時の時代も背広組みは現場のことはわかっておりません。
「去年によぉ、一尺六丈の釈迦牟尼仏を造って、大般若経一部を写したんだよ。するとどうじゃ?
大雨に悩まされていたのが嘘のように今年は晴れて作物が良く実ったじゃろ?
これがどういうことだかわかるか? 朕のような統べる者の言葉が理解できるか? 出来んか?
ほっ、これだから仏法を敬わん奴はダメなんじゃ!仏法には物事を滞りなくさせる力があるんじゃ。
何? 偶然じゃと? なn―――」
と言うようなことを言ったかは定かではありませんが、
効果があるんだ、仏典には経を読めば守ってやるぞ?と書かれているんだ、と騒ぎ立てます。
諸国に七重塔・釈迦牟尼仏を造り、金光明最勝王経と妙法蓮華経を写して、僧寺と尼寺にて毎月八日に読めと決めちゃいます。
この事は決定事項であって、覆ることはまぁまずないでしょう。諸国の経済状況なんかは知りません。
やれといわれればやるしかない、これが事実。
とはいえ流石にやれと言ったのは良いが、出来る国と出来ない国があるという事に気付いたらしく、
おおきみさんは、正税からお寺の造営にかかる費用を捻出します。
でも、結局のところ負担は正税を納める者なのですから苦しむことにゃあ変わりやしません。
そんなわけなので月日が経つごとに完成させる国もあるにはありましたが、出来る事の方が珍しく、
完成させていない国、着工もしていない国があるわけです。
そのことを知ったおおきみさんは、
「あれは何時じゃったかのぅ。たしか去る○○十三年(プライバシーのため年号は伏せております)。
朕は布告を出したよのぉ? 国家を永く末永ーーーーく安泰にしたいからお経を読もうねぇーって。
次いで国ごとにさぁ、僧寺と尼寺を造って僧寺の方には七重塔造れよー、
そこにわしが金で書いた金光明最勝王経置くからよーって言ったよねぇー。
ところがさぁー・・・国々の国司どもは何をサボっておるのじゃボケぇぇぇぇぇっっ!!?
布告だしてから○年(プライバシー(略))経っとるのじゃぞぉあぁっ!!? わかってんのかくぉるあぁぁぁぁあっっ!!?
この間起きた天変地異もお前らがきっちり仏法を敬わんからじゃボケッ!アホッ!愚鈍どもが!
ったく、てめぇらのようなボンクラの所為で朕の国家を台無しにされてたまるかっつーの!
だーかーらー、今度は国師を派遣するから次はきっちり造れよ?
その為にはこの布告後3年を限度とするからな!肝に銘じろよクズどもがっ!!」
と言ったかは定かではありませんが、○年(プラ(略))経っても諸国にお寺が出来ないことに深く怒るおおきみさん。
反乱にびびっちまった奴が悪しき事全ての責任は仏法を信奉しないからだとかのたまっちゃいます。
とにかくお寺の造営に年数を設定し、さらには監視役を派遣して意地でも3年で造らせようとします。
きっちりと詔を実行したら、その国の郡司国司は子孫もきっちりと司にしてやると取引協定も実施します。
けれどもそんな事で全てが完成するはずもなく、全ての寺の完成を見ることなくおおきみさんは、
「・・・うぇっふ・・・・・・まだじゃー・・・まだー・・・死ね・・・ん・・・・・・・・・がくっ」
とお倒れになります。しかし、しぶとい・しつこい・びびりの三拍子であるおおきみさんは、
死の10と○(プ(略))年前に、お出かけ先の寺で人々がお金や物を出し合って盧舎那仏を造ってる様を見て、
「寺造ってるけどさー、やっぱでっけー仏像欲しいよね、仏像」
こんなわけで盧舎那大仏を造ると心に決めます。決めるなよ。
さらには民衆の間を練り歩き、橋の補修といった土木工事を行いつつ仏教を広めていた行基を大仏製作の総指揮者にします。
人々に布教してまわるのはダメだと規制していたくせに、大仏工事に利用できるとなると掌返しです。
おおきみさんなんて言っても今の世の人と変わらない、ただの人です、人。
とにかく、国中の銅を尽くして造れと言って工事をさせます。しかしただ大仏を作らせるだけじゃだめだとして、
「天下の富っていうのはね、みーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーんな朕の物。
天下の勢いっていうのもね、みぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃんな朕の物なんだよぉぉぉぉ?
だからぁ、大仏なんて造るのは児戯に、あ、児戯ってわかる? 子供のお遊びってことなんだけどぉ、
ま、それに等しい? って感じなのよねー。でもさーこれってただ造れば良いって物じゃないんだよねー。
仏法ってさー聖なのよ聖。もーうすんごーく清くて? 尊い? みたいな?
それを感じないで造っても意味ないって言うか、ただ疲れるだけっていうか。
だからさ、お前達も盧舎那造れってゆーか造れ。で、毎日3回拝め。崇拝しろ。自分がいかにちっぽけで陳腐で屑か理解しろ、愚民。
あとさー朕が大仏造るときに心から造って崇拝したいと思ったら、そこいらに生えてる草でもいいから持って来い」
こんな感じの布告を出して仏教に染まれ!と訴え続けます。
そしてこの工事に使う金はひとにのぎのおんな國で採れた物を使えと言い出します。
この頃では金なんて海外から輸入する物でしたから、ひとにのぎのおんな國で採れた事に間違いなく狂喜乱舞してます。セリフにするとこう。
「なんじゃなんじゃなんじゃーーー!朕が国でも金なんて物は採れるではないか!
いっちいち荒海超える必要ねぇぇぇぇぇぇぇ!動乱に乗じて朕が国の資源国を奪い去ったあんな国なんざほっときゃいいべ!
この金を使ってすぐに大仏に塗るぜぇぇぇぇ!あぁ? 財政逼迫? んなこたぁしぃぃぃぃるかぁぁぁっぁぁぁぁぁ!とにかく!
塗れ!今すぐ塗れ!早く塗れ!何が何でも塗れ!命を懸けて塗れぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!いやーーーーーっほーーーぅ!」
と言ったところでしょう。結局総指揮者の行基は完成をむかえる前に死没しますが、おおきみさんは生きます。
片方の願望は叶えたがもう片方の願望は見届けることが出来なかった、ということでしょうか。
しかしこんなおおきみさんの姿勢はこうなるよう焚きつけたという巧妙四が引き継いでいるのです。
その所為でおおきみさんが死没した直後にこの巧妙四が、
「今そちたちが造ろうとしておる仏に金堂、僧坊であるが今度の一周期の斎会までに完成させよ、よいな?
・・・・・・・・・完成させねばどうなるか・・・うひ、くひ、くひひひひひ・・・」
と言ったかは定かではありませんが、寺の完成を急げと督促される羽目になったのです。
このようにしてヒノモト国に仏教は浸透していくことになるのでした。
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