Brambly Hedge
―茨の境界―
〈7.5〉
小さなナイトテーブルと椅子、申し訳程度に本が並べられた簡素な本棚とクローゼッ
トに、妙に大きなベッド。本館最上階のあの豪華な部屋とは正反対の広いが随分質素な
部屋に「ここは寒くなるから」とカイトは屋上から招かれた。
あの豪華な部屋は彼に怖いくらい似合っていたが、どちらかというとこの部屋の方が
彼にしっくりと合っていた。
無駄なものは何もない、しかしどこか暖かみのある生活感のある部屋。――それは、彼
自身が作り上げたものだからだろう。
物珍しそうにキョロキョロと部屋を見回す自分に、彼は小さく苦笑して言った。
「・・・意外か?」
「別に?――さっきの部屋とのギャップにちょっと吃驚してるけどな」
ほんの少し不安の色を灯した瞳に、安心させるように抱き寄せて微笑みかけ、羽のよう
なキスをシンイチの顔中に降らせた。軽く啄ばむようなそれに、シンイチは擽ったそう
にクスクスと笑う。
「―あそこは夜の仕事の時だけ行くんだ。使ってるのは俺ともう一人の高級娼婦と少し
の例外だけだけどな」
別に好きであそこに入る訳じゃねえよ、と軽く額を小突かれる。それでも怒っている様
子はなく、初対面の時とは比べ物にならないくらい柔かな笑みにカイトは心を躍らせた。
そして、ふと何かを思いついたようにシンイチは
「なあ、いいコト教えてやろうか?」
と楽しそうに微笑む。
「・・・何?」
「俺がこの部屋に自分でこの館の人間以外を入れたの、お前が初めてなんだぜ」
と。つまりそれは、自分は彼にとって特別な存在なのだと言う事で・・・そんな事を言われ
て嬉しくない訳がなく――カイトは力一杯シンイチの体を抱き締めて深いキスを贈っ
た。
息もつかせないキスの間、交わった視線が逸らされる事はなかった。
誘うように薄く開かれた唇から舌を侵入させ、逃げるでもなく絡められる舌をきつく吸
い上げ、さっさと主導権を奪い激しく口腔を犯す。
「っ・・・・・・・ふ・・・」
僅かに漏らされる吐息は甘く、慣れた仕草で彼はキスに応えてきたが、それとは別にき
つく袖を握る手が妙が愛しく感じた。合わさったままの蒼い目は熱を孕み、極上の輝き
を湛えている。
(ずっとキスしていたくなるってこういうの言うのかな・・・)
などとしみじみ考え、彼の口元から伝う銀糸を名残惜しむように舐め上げてシンイチを
解放し、小刻みに震える体を支えるように細すぎる腰に腕を絡めて、ついでに既に反応
している下半身を押し付けるとビクリと腕の中の肢体が震えた。
「・・・辛くねえ?」
それ。
「ちょっとな」
シンイチとキスしたら止まる訳ねえし、と悪びれなくカイトは肩を竦めてみせる。
そして、些か躊躇いがちに告げられた言葉にカイトは硬直した。
「・・・・・・・・・抜いてやろうか?」
「・・・いいの?」
いいよ、と頷かれて断る理由もなく・・・というか寧ろ大歓迎な提案にカイトは嬉しさその
ままに笑顔を向けた。
「やってくれるなら・・・頼もうかな」
ベッドに座らされて、シンイチは床にぺたりと座って実に手際良くズボンを寛げ、下
着の間から固く勃っているカイトの自身を出して紅い舌でペロリと舐め上げると躊躇う
事なくそれを咥えた。
シンイチの舌と細い指が熱い自身に絡み付き、確実にカイトを追い立てていく。彼の
癖のない髪に指を絡めながら、下手をすると洩れてしまいそうになる声を男の妙なプラ
イドで押し殺し、すぐにイってしまうのは勿体無い、と迫り来る絶頂を何度もやり過ご
した。
(・・・ってーかどうしてこんなに巧いんだよ!)
そんな事を声に出して言うと「本業だから」なんてあっさり言われてしまいそうだが、
その「本業」を仕込んだであろう過去の客達に対してまで醜く嫉妬していると彼が知っ
たら、それこそ苦笑されてしまうだろう。
「・・・・・・んっ・・・」
くちゅくちゅと粘着質な音と、彼が洩らす甘い吐息が部屋に響く。それに時折時折上目
遣いにこちらを見上げてくるシンイチの綺麗な目と煽情的な表情にどうしようもないほ
ど煽られていく。
「っシンイチ・・・も、いいから」
あっという間に上り詰めた熱は既に爆発寸前で、流石に口の中に出すのは憚られて離さ
せようとシンイチの頭に軽く手を置いたが、彼は薄っすらと微笑んで逆にカイト自身の
先端を吸い上げて解放を促した。
「くっ・・・・・・!」
「・・・んぐっ・・・・・・ふ・・・・・」
ゴクリ、と自身を離し自分の放ったそれを嚥下するシンイチの白い喉元に視線を引き付
けられながら、カイトはなんだか自分が物凄くイケナイ事をしているような気分になっ
てきた。
「・・・・・・どうしたんだ?」
そう言って見上げてくる新一はあまりにも綺麗で、穢れのない人のように見えたから。
・・・尤も、気持ち良くなかった?なんてこちらを見上げたまま言われてしまえば、強く首
を振って否定するしかないのだが。・・・本当にこれまでにないくらい気持ち良かったのだ
し。
「気持ち良かったよ」
決まってる。と自分のは不味いとか思いながら、白濁とした自分の欲望で汚れたシンイ
チの顔を唇で拭いつつ細い肢体をベッドに押し倒し、そして苦い味の残る唇を甘いキス
でじっくりと溶かしていった。
キスがこんなに気持ち良いなんて初めて知った。
深く深く、唇が食い尽くされそうなキスを繰り返されて、身も心も溶かされそうな錯
覚に陥る。カイトの気持ちを示すようなキスにシンイチは胸の奥で熱く何かが灯るのを
感じた。
今まで取ったどんな客にも欲情するなんてことはなかったのに、自身はたかがキスだ
けで確かに反応していて、客に何をされても快感なんて感じてなかった体が、カイトの
器用な指で触られるだけで歓びに震えることに戸惑いすら覚えた。
そしてシンイチの体に火を付けて、服をあっという間に脱がされて、自分もさっさと
服を脱いで、それでも目の前の男は紫の差す目で見つめながら「抱いても良い?」なん
て言うから思わず笑ってしまった。
(だめだったらとっくに逃げてるっつーんだよ)
そんな本心を言ってやる気にはなれなくて、ただシャープな線を描く頬に手を滑らせて
軽くそこにキスを落し・・・ほんの少しの意地悪を言ってみた。
「・・・元気だよな」
と苦笑してみれば、「シンイチが、魅力的過ぎるんだよ」と端正な顔を微笑んで欲が滲
んで掠れた声で囁かれ、再び力を持ち始めた自身を押し付けられ、その熱さに思わず震
えた。
「そうかぁ?」
「そうだよ」
そんなことも何度も言われた言葉であるが、カイトに言われるという事実が自分でも可
笑しな位嬉しくて、顔が赤くなるのが自分でも分かった。
返答はしなくても、抵抗しないのは承諾の証。それを正確に受け取ったのか、会話の間
にもカイトの手がシンイチの白い肌の上を隈なくなぞっていく。
緩く絡めては離れるという口接けを繰り返し、耳の裏から首筋へ、鎖骨から薄い胸へ
と這う手を追うように唇が辿り、時折チリッとした甘い痛みを無数に散らしながら、確
実にシンイチの性帯感を探り当てていくその手はまるで魔法のようで。
素で情交を交わした事が実は片手では余るが両手くらいしかないというシンイチは、
思わず自分でも信じられないくらい甘い声を洩らしてしまいそうになる羞恥に必死で声
を殺した。
しかし、そんな想いも儚く、胸の突起に触れられた途端に背筋を快感が走っていって、
ビクリと過剰なほど体がシーツの上で跳ねた。
「・・・っ・・・・・・・ぁ・・・」
思わず小さく声を洩らしてしまい、慌てて口を両手で塞ぐがその手はカイトの大きな手
によって簡単にベッドに縫い付けられてしまう。
両方の突起を口と手で攻められて、噛み締めていたシンイチの唇から、僅かな吐息が
洩れ、それに目を軽く細めてカイトは一層強くそこを愛撫した。
「は、っ・・・・・・カ、イトっ・・・」
漸く離された唇が、今度は下腹部から更に下へと向かって行き、その下の自身を咥えら
れて、シンイチは慌てて解放されていた両手でカイトの猫っ毛の髪を抑えてストップを
掛け、不思議そうに見遣ってくる男に言った。
「それ、いいからっ・・・」
カイトはじっと「慣れてるから」と続けるシンイチの目を見つめ、ふと微笑んだ。そし
て安心させるようなキスを受けて、シンイチは気持ち良さに目を細める。
実は、自分がされるのは慣れていないのだ。男娼は性欲処理にしか使われない。確か
に女性相手だと疑似恋愛的なものが多いが、それでもこうしてこちら側に快楽を感じさ
せようとする酔狂な客は滅多にいなかった。
まして自分が好きだと認識してしまった相手にそれをされれば、自分の想像以上に乱
されまくってしまいそうで、正直怖かった。
(・・・・・・今更怖いなんて思うなんて・・・・・・)
初めて犯られた時だってそんなことは感じなかったのに。
ほんの少しの自嘲の笑みに気づいたのか、じっとこちらを見つめていたカイトは心を見
透かしたように優しく微笑んで告げた。
「‘男娼’とかそういうのじゃなくて、俺は‘シンイチ’だから抱きたいんだぜ?素の
ままのシンイチを抱きたいんだ・・・」
だからさ、乱れてみせてよ。低く囁かれて、その言葉に熱く焦がされながらシンイチは
恐る恐る頷いた。
(・・・そっか・・・こいつは、初めて‘俺’を求めてくれたんだった)
七人踊った中の七人目。たった一人紛れ込んだ素の自分に気づいたのは、一人あの熱の
中で踊るシンイチの奥に隠された顔を見据えようと視線を向けてたった一瞬合った目。
この魂を震わせたのは――カイトだけだった。
(・・・あの時のあいつ、カイトだったんだな・・・)
顔を確かめる余裕などない。だけどたった一瞬見たのはその目の輝きだった。
(・・・・・・結局、俺も‘一目惚れ’ってやつか・・・)
これではカイトの事を笑えない、とシンイチは肩を竦め、つい先ほどまで強張っていた
体の力をゆっくりと確かめるように抜いた。
その様子にカイトはゆっくりと下肢へ唇を寄せて、急ごうとはせずまるで忠誠を誓う
騎士のように恭しくシンイチの足の甲に口付け、やはり赤い華を散らしながら太股へと
上ってきて、もう片方も同じ様に繰り返す。
その遠回しな刺激にシンイチは催促してしまいそうになる自分の欲を必死で抑えて、
白い脚を大きく広げられて、既に蜜を滴らせている自身に漸く与えられる刺激に身を震
わせた。
「ン・・・・・・く・・・」
自分の体勢に恥ずかしがる余裕などなく、滅多にない刺激に思わずシンイチは上がりそ
うになる声を堪えた。
カイトには頷いたものの、そう簡単に羞恥が取れるはずもなく、やはり恥ずかしいも
のは恥ずかしいのだ。
緩急を付けて扱かれて、ゆっくりと解放に導かれ・・・カイトの手の中に呆気なく放って
しまった。
「・・・・・・・ぁ・・・・・・」
簡単にイってしまった自分に些か呆然としていたがそんな暇もなく、カイトのシンイチ
の放ったもので濡れた指が、固く閉じた蕾に触れた。
その事に思わずシンイチは身を竦ませたが、カイトは落ち着かせるように髪を梳かれ、
力を抜く。
「大丈夫、俺に任せて・・・」
低く囁かれる言葉は鼓膜を震わせて脳さえも冒されるような気分にさせられる。
元々男を受け入れ慣れているそこはカイトの指を飲み込み、簡単に二本、三本と彼の
長い指がシンイチの中に入って来て蠢いた。
「ふっ・・・・・・ぁっ・・・・」
バラバラに裡を擦り刺激を与える指がシンイチの感じる所に当り、体中に走る快楽に堪
えきれない声をシンイチは上げた。
「ココが、いいの?」
どこか嬉しそうなカイトの声がシンイチの鼓膜を擽り、何度もその箇所に刺激を与えら
れる度にシンイチの体はビクビクと震えた。・・・声を殺そうとしても、両手はまたカイト
の手に縫い付けられて、抑えるものがない。
「・・・カイ、トっ・・・・・・」
「・・・声、殺さなくていいんだぜ?」
喉も痛めるし、と付け加えのように変らず指を蠢かせたまま言われたその声になんとな
くムッとして、心の中で密かに
(・・・んなこと言って・・・恥ずかしいに決まってるだろっ!)
と叫び、、余裕のある様子になんとなくムカついて、仕事でも絶対に出さない素の自
分で妖艶な笑みを見せた。
「・・・聞きたい、んなら・・・出させてみろよ」
と挑発した。
・・・・・・・・・後に、ちょっぴり後悔する事になるのだが。
かなり感じているのはその体の反応からも明らかなはずなのに、シンイチは中々快感
を声に出そうとはしなかった。体を襲う快楽に耐えようとする表情もそそるのだが、全
てを曝け出して欲しいと貪欲な心が騒いだ。
見つけ出した前立腺を突き、しつこく刺激しても堪えられてしまう声に、もっともっ
とシンイチの悦がる声が聞きたくて、思わず催促したそれに返されたのは紛れもないお
誘いの言葉で。
高められて紅潮した吸い付くような肌に、紅く笑みを象る誘う唇に、そしてなにより
も、欲に濡れた目で強く見据えてくる蒼い目に・・・・・・
――ブチッ。と、
どこかで理性の切れる音がした。
「・・・いいんだな?」
そんな事言って。
(・・・手加減、しねえからな?)
じっと見据えてやると、シンイチはぴくりと小さく肩を震わせたが自ら腕を伸ばしてカ
イトの首に絡め、ニヤリと笑みを深くした。
それが、合図。
カイトは解れた後孔から内で蠢かせていた指を些か乱暴に引き出し、そこに自らの高
ぶりを押し当てた。
腕の中で竦む体に、それでも微笑みを浮かべたままの紅に、唇全てを貪り尽くすよう
な激しいキスを仕掛ける。
「・・・ふ・・・ん・・・・・・っ」
口腔をしつこいくらいに犯してくるカイトのキスにシンイチが徐々に溺れていくのが解
る。
そして、体の強張りが完全に解けたと見た瞬間に、カイトは唇を離し、その熱い楔で
シンイチの秘孔を一気に貫いた。
「あっ・・・やぁあっ!!」
強烈な刺激に、シンイチは細い肢体を弓形に反らせ、悲鳴に近い嬌声を上げる。カイト
はその白い喉に噛み付くように赤い華を残し、漸く聞けた声に口の端を吊り上げた。
内心では全く余裕はなかったが。
(・・・・・・うわっ・・・そこら辺の娼婦なんかより、よっぽど・・・)
こういうことには慣れている筈のカイトですら、シンイチの中は思わず息を詰らせるほ
どに気持ち良かった。押し入った奥は燃えるように熱く、ひくつく内襞が蠢いて奥へ奥
へとカイトを誘う。
それに誘われるまま、否、それ以上に強くカイトはシンイチを貫いた。シンイチは白い
喉を逸らしてひっきりなしに嬌声を上げた。
「どうした、聞かせないんじゃなかったのか?」
ペロリと首筋を舐め上げる舌にすら反応するらしく、先程の強気な雰囲気は濃厚な快楽
に溶けて凄まじく艶やかな色気を今のシンイチは放っている。
それにカイトの雄も反応てその体積を増やし、裡の奥で蠢く刺激にキュウッと締め付け
てしまって余計感じたらしく、シンイチは甘い吐息を吐きながら身を捩らせた。
「・・・んなことっ、言ってもっ・・・」
それでもなんとか声を殺そうとしているのだろう、息絶え絶えに言うその姿はまるで煽
っているようにしか見えない。
否、彼はその存在全てを以ってカイトを煽っていた。
求めていた人と出会えて、結ばれる喜び。好きな人とこうして繋がる事の出来る歓び
に、カイトは貪欲に白く美しい肢体を食い尽くさんと腰を動かし始めた。
確実に前立腺を擦り上げて突き上げられる大きすぎる刺激に、シンイチはただひたす
ら翻弄され、絶えず体中を駆け巡る快楽に最後の理性などどこかに飛んでしまった。
「ぁあっ、・・・カイト、カイトっ・・・」
きつくカイトの背に縋り付き、必死でその名を呼びながら熱く体の内を溶かす熱を締め
付け、与えられる快楽を辿る。
奥に打ち付けられる度に秘孔は淫靡な音を立て、軋むベッドや肌に触れるシーツです
ら快感に変ってしまう。
とっくに許容を越えてしまっている快感にシンイチはもう乱れるしかなく、それを更
に追いつめるようにカイトは体の性感帯を辿り、敏感な耳を舐め上げて息を吹き込む。
「イイよ、シンイチ・・・もっと」
乱れて。
餓えた獣のように、カイトの低く囁く欲に掠れた声は、シンイチの中で疼く熱に強く貪
欲に火を灯す。
「バっ・・・ぁあっ・・・やっ」
抗議しようとしても、一番感じる奥を奥を突かれて言葉にならない嬌声が上がる。余り
の快楽にもシンイチの体はそれを貪欲に求め、本人の意識無意識に関わらず妖しく揺ら
めき、もっととでもいうように熱くカイト自身を奥へ誘った。
カイトはその動きに揺すぶられる度に震える白い脚を抱え、腰の動きを激しくしてい
く。
「んっ・・・ぁ、カイトっ・・・も、・・・っ」
「もう、何?」
「お、願っ・・・ひ、ゃああっ」
「言わないと、わかんねえよ」
だから、声に出して?
意地悪く言いながらも腰の動きを止めないカイトは、息も絶え絶えに涙を目に一杯溜め
ながら懇願してくるシンイチに軽くキスを落し、言うまでイかせないとでも言うように
蜜を零している自身を握る。
カイトの動きに翻弄されながらもイきたくてもイけなくされてしまったシンイチは、
震える手でカイトの頭を抱き寄せ、熱い呼吸に混ぜて囁く。
「も、・・・せてっ・・・」
「聞えない」
「ん、ああっ・・・い、じわるっ」
睨み付けているつもりでも誘っているようにしか見えなくて、腕はしっかりとカイトに
縋りついているのに責めるような言動はそれすら可愛くて、ちょっとした加虐心がカイ
トの中で鎌首を擡げた。
ただでさえ張り詰めている自身に中途半端な刺激を与えられ、イけない苦しさと内と
外から侵食してくる刺激にシンイチは白い肢体をくねらせ、玉の汗を弾かせる。
「ぁあっ・・・ん、ぁ・・・やめっ」
「ほら、もう一回・・・な?シンイチ」
「カイ、トっ・・・も・・・イかせてっ」
言うと同時にぶつかる様にキスされて、カイトはやけくそな感がするシンイチの行動に
満足して微笑む。
「――良く出来ました」
(・・・実は俺もそろそろ限界だったんだけど)
こっちまで溶かされてしまいそうなシンイチの中は心地良くて、ずっと繋がっていたい
と思うほどなのだ。結構危なかった、とカイトは内心苦笑してもう一度だけ焦らすよう
に深いキスを贈り、自身を熱いシンイチの秘孔に叩き付けた。
「ヒぁあっ!・・・あっ、ぁあ・・・」
ガクガクとシンイチはカイトをきつく締め付けながらも力が入らないらしく、人形のよ
うに揺さぶられては感じるままに絶え間なく聞くに飽きない嬌声を上げる。
理性を失い快楽を追う白い肢体。涙に濡れた蒼い目。鼓膜を打ち楽しませる嬌声がカ
イトを煽り、与えられる熱に誘い蠢く淫口に淫らにくねる体、自分を呼ぶ甘い声が理性
の箍を外させた。
「・・・一緒にイこうか、シンイチ」
「カイ、トっ・・・あ、ぁああ――っ」
上がってきた息で吹き込まれる暗示のような声に反応したように、シンイチは殊更高い
声を上げて達した。
そしてカイトも、締め付けの一層きつくなったシンイチの中に己の欲望を放ったのだっ
た。
息は荒く、必死で呼吸を繰り返して心臓の音を静めようとシンイチは勤めたが、その
間にもすぐに力を取り戻していく身の内の熱に、達したばかりで敏感になった体は簡単
に反応して小さく震えた。
チリチリと疼くような熱が、未だに体の奥で燻っている。
「・・・大丈夫?」
なんて事を言いながら、カイトの手はシンイチの肌を這い回り、ゆるゆると腰を動かし
始めていた。
「っ・・・お前の精力は絶倫かよ?」
「かもな」
クツリと笑って、カイトは未だに浅い呼吸を繰り返すシンイチの唇にキスを仕掛け、小
さく出された舌を絡めて深く口腔を侵す。更には固くなってきた自身がシンイチの内襞
を擦り、敏感な最奥を突き上げ出した。
「ん、ふっ・・・んんっ」
唇を塞がれたまま容赦なく突き上げられる熱に上げられる嬌声は、ねっとりと交わった
ままのキスに封じられ、繋がったシンイチの秘孔からはズグズグと先程カイトが放った
欲望と中の粘液が交じり合って音を立て、シンイチの羞恥を更に煽る。
「・・・ふ、ぁ・・・っ・・・」
舌と舌の間の銀糸を絡めるようにしてカイトは軽くキスし、
「力、抜いてね」
と言ってシンイチの背中に腕を回した。
何、と思う間もなく極々軽い仕草でカイトの腕に抱き上げられて、シンイチの体重がか
かってカイトの雄が更なる奥を突いてきた。
「あっ・・・やああっ・・・!」
強い刺激にシンイチは思わず自らの内に埋まっている熱を思い切り締め付け、そのきつ
さにカイトは小さく息を詰らせて解放をやり過ごした。
「好きだよ、シンイチ・・・」
「あっ、ぁあっ・・・かい、とっ・・・!」
上げられる嬌声は最早意味を成さず、解るのはカイトをシンイチが確かに求めている証
のように発される名だけで、下から強くポイントを変えて突き上げられる楔に美しい白
い肢体は歓びを示しながら翻弄されていった。
艶を放ち、それは妖艶とも言えるほどにこちらを誘い、
眠る獣を無理矢理にでも叩き起こす。
野性の獣のようだ、とカイトは薄く涙を見せながら悦がり啼くシンイチを見て思う。
月光の中で揺れる彼は見ていて痛い位の儚さがあったが、秘部を犯されながら白い肢体
をくねらせる彼の姿は妖艶で、こちらを誘って眠る獣を叩き起こし、離さない。
捕われるのはお前なのだと言われているような気がした。
「好きだよ・・・だから」
「あ、ぁあっ・・・カイトっ・・・?」
少しだけ不思議そうな目で見てくるシンイチに微笑み、それとは裏腹に熱く激しい感情
そのままに腰を打ち付けながらカイトはシンイチの耳を甘噛みして吹き込んだ。
言葉を。
傍に、いさせて――
切実な願いはたったそれだけの事だった。しかし、この館に住む彼としてはそれは何よ
りも難しい事。
それを解っているから、「好きだよ」と何度もこの気持ちを込めて囁き・・・小さく紅い
唇が象った言葉に狂喜して、ついでに今夜二度目の理性が音を立てて切れた音をカイト
は聞いた気がした。
「ぁああっ!・・・かいとっ、かいとぉっ・・・」
身を襲う快楽にカイトの頭を抱え込みながら上げられる自分の名前に、カイトは目の前
にある薄い胸に舌を這わせ、赤い華を幾つも散らした。
何時しかシンイチも自ら快楽を追い求めるように淫らに腰を振っていて、歓びを混じ
らせた悲鳴の中にカイトの名があるのがたまらなく愛しかった。
「シンイチ、愛してるよ」
(だから、もう離さないから・・・覚悟してて)
締め付けられるそこは泣きたいくらい熱くて、自分が彼と溶けてしまえば良いと思
う。・・・だけど、そんなことが出来る筈がないから。
せめて、今だけでも彼の体に・・・この熱に、溺れてしまいたかった。
「・・・・・・満足、か・・・?」
月光を浴びながら白い体をしどけなく横たわらせて、荒い息を吐きながらシンイチは呆
れ半分、疲れ半分と言った様子で吐き出した。
「カナリ♪」
実は上下する白い肩とかうつ伏せになって綺麗にそれている背中のラインとかにそそら
れっ放しなのだが、取り敢えずカイトは満足した欲求にギリギリの処でブレーキを掛け
ていた。
あの後倒れ込んだシンイチに覆い被さって一回、体を反転させて後ろからもその身を
貫き、更に背を向けたまま座らせて楔を埋め込み揺すり上げ・・・と散々鳴かせて悦がらせ
た自覚があるのだ。
「シンイチの可愛い姿も見れたし、思い切り啼く声も聞けたし」という若い性欲そのま
まにシンイチが意識を失うまで魅惑の肢体を貪り捲くったカイトの肌は、今現在絶好調
でその表情は実に爽やかだ。
「・・・ってーか、満足じゃないって言われてももう無理だけどな」
これ以上は壊れる。
きっぱり言い切って、今まで体験した事のないような腰の痛みに耐えながら、シンイチ
は声を殺すどころではなく本当に乱れ捲くってしまった自分に羞恥でほんのりと頬を赤
く染めて、白いふかふかのマクラに顔を埋めた。
その可愛すぎる姿に、カイトはニヤッと笑って項にキスを落して笑いを含んだ声で囁い
た。
「ああ・・・言ってたもんな、4回目の時に」
もう、こわれるっ・・・って。
「ばっ・・・バカイト!」
生々しくその時を思い出させる様な声音に、シンイチはマクラに埋めていた顔を跳ね上
げて思わず叫んだ。
・・・確かに、言った。体がきつくて、これ以上されると自分がおかしくなってしまいそ
うだったのだ。初めてなんかではない筈なのに全てが初めて出会ったような快感が体中
を駆け巡って、心も体も、全てが狂ってしまうかと思った。
既に、狂わされているのかもしれないが。
「でも、シンイチからも求めてきたし」
余計抑制が利かなくなったと悪びれもなく言うカイトと彼が言う否定で着ない事実に、
シンイチは肩を落して力の入らない体をシーツの波に沈めた。
確かに、理性が弾け飛んでしまってからの記憶は曖昧で、かなり自分でも考えられな
いような事を口走ったような気がするが、何を言ったかは・・・聞きたい様で絶対に聞きた
くなかった。
何を言ったんだ自分!と激しく羞恥のどん底に入りながらもシンイチが頭を抱えてい
ると、情交の時とは打って変わった穏やかな目でシンイチを見ていたカイトは、真っ直
ぐで艶やかな黒髪を梳いてこめかみに音を立ててキスを落し、もう何度も言った言葉を
囁いた。
「シンイチ・・・好きだよ、愛してる・・・」
「ん・・・俺、も・・・」
愛してる。
躊躇いがちに、しかし自然と湧いてきた感情と言葉にシンイチ自身が戸惑いながらその
言葉を発し、初めての告白にお互いに微笑み合い、甘い甘い口接けを交わした。
・・・・・・これは砂糖何杯分でしょうか?
余りにもぬるいエロと甘々な二人に、読む度に大笑いしてしまうので隠してもらいました(笑)
一応、7から直接8に進んでも解らない事はない様にしてあります。
お目汚し物を読んで頂き、ありがとうございます。
ブラウザでお戻りアレェ