『ゲームレヴュー・トロと休日』

『どこでもいっしょ』というソニー産の対話型ゲームに、最近新作が発売された。その名も『トロと休日』である。
過去数作は携帯型のゲームであったが、今回は初のPS2ソフトである。ゲームデザインや新システムが気になってはいたものの、「時間が無いから」という理由で購入を保留していたのだが、このたびあっさり解禁した。
更新が滞っているエッセイのネタになるという、我ながら汚い理由をつけて。


ゲーム起動。ボロロ…ンというアコスティックギター風の選択決定音とともに名前入力画面が表示される。無論、名前は決定済。タイトル偽りなしの『トロ』しかあるまい。
流石はDVD媒体、背景が写真などではなく、完全な映像だ。電車は走り、トロも走り、駅弁を買い込んで外を眺める。とにかく臨場感濃厚である。

私(プレイヤー)は、トロの隣の席に座ることになる。
電車の中で出会い、偶然にも同じ旅行先、はては同じ旅館という、『ラブひな』ばりのラブシチュエーションだ。ツカミは単純な方がいいというのはわかっているが、旅館の部屋がバッティングというのは、女将に一言文句を言ってもいいものではないか。作品が作品ならばヒロインはただではすむまい。
とにかく、ひなびた温泉町で、トロと一緒に町を気ままにウロチョロするという、休日にプレイするのがお似合いなゲームである。
一日がおわると、トロはえにっきを描くのだが、これがなんとも味があってよい。余談だが、他のポケピ(ポケットピープル。トロを筆頭とする対話動物たち)もゲストとして町をチョロチョロしており、会話も可能となっている。


システムに関しては、過去作とほとんど同じイメージだが、いろいろと改善がなされている。
例えば、旧作はゲームの一日と現実世界の一日はリンクされており、うっかりポケット住人に構えない日でもあれば『つまんねぇ』(By.うさぎ)などと、心のやさぐれた日記を残されることになりかねないのだが、新作はこれがカバーされており、いつでもプレイヤーの好きな時間にゲームを進めることができるのである。
また今回は、一方的に言葉を教え込み、通信しりとりゲームの際にプレイヤーのオタク度がバレることもなく、トロがあれなにこれなに?とたずねてくることで、言葉が教えやすい趣向となっている。
たまに
『壁って96人のまけいぬたちが、マクラなげをしながら作るんだよね?』
などと、とんちんかんなことを口走るトロ・井上氏。
それはそれで面白い。

のんびりとトロと温泉街を散歩していると、一日が過ぎるのがとても早く感じられる。
(実際、プレイ時間は一日が20分程度なので早く感じられて当然なのだが、情緒がないので黙殺する)
いつかはトロともおわかれの日がくると思うと、なんとも寂しいものを感じるのだが、今は楽しいことだけ考えよう。
最近現実世界はどうにも余裕がないので、こういうのんびりしたゲームは短時間ながら、充分疲れた心が癒される。
忙しくていっぱいいっぱい、という方に、かえってオススメしてみたいゲームである。

出先のタバコ屋で、おばあちゃんに『またね、ねこちゃん』などと、声をかけられるトロ。
嗚呼、ねこになりたいと思った。

ねこになりたい私と、人間になりたいトロの物語――。

おあとがよろしいようで。

(011206)


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