空家のモンスター退治


トッシュ 「ふぃー、疲れたぜ。」

シャンテ 「あら、トッシュ戻ってたのね。」

トッシュ 「お、シャンテ。お前も戻ってたのか。」

シャンテ 「ええ。それにしても今回は奇妙な仕事ね。」

トッシュ 「空き家にモンスターとはねぇ…。何が目的で住み着いてんだかな。」

シャンテ 「居心地がいいんでしょうね。こちらにしてみればいい迷惑だけど。」

トッシュ 「それにしても、リーダーさんはまだかよ。」

シャンテ 「いろいろ回るところがあるから遅くなる、みたいなことを言っていたわよ。」

トッシュ 「大変だねぇ、リーダーってのはよ。」

シャンテ 「あんたも少しは年長者の威厳を見せた方がいいかもね。」

シュウ 「済まない、遅くなった。」

シャンテ 「おかえりなさい、シュウ。」

トッシュ 「で、どうだった?何かわかったのか?」

シュウ 「ああ、同業者の噂を集めてみたんだが、いまひとつはっきりとしないな。」

シャンテ 「はっきりとしない…って?」

シュウ 「5人程がこの依頼を受けたという話だが、明確な調査結果がでないらしい。」

トッシュ 「どういうこった?」

シャンテ 「ただのモンスター退治じゃなさそうね。」

シュウ 「仕事を受ければ、解決できないとしてもわずかながらでも何らかの成果は上がるはずなんだが。」

トッシュ 「そいつが全くねえなんてな。おかしな話だ。」

シャンテ 「ちょっと待って。成果なしってこと? いったいどんな状況なの?」

シュウ 「依頼を受けたハンターが正体不明の病にかかった、揃って死んだという噂しかない。」

トッシュ 「まるで祟りだな。モンスターにそんな事ができるとは思えねぇぜ。」

シュウ 「せいぜいが空き家に棲みついたのはただのモンスターでなさそうだ、という話くらいだな。介入した者の異変しか伝わってこないのが気になるが、さて…。」

シャンテ 「この依頼、受けるかどうか迷ってしまうわね。」

トッシュ 「びびってどうすんだよ、俺らでさくっと片づけちまおうぜ。」

シュウ 「依頼を受けるかどうかは、全員の情報を吟味してからでも遅くはないだろう。」

シャンテ 「そうね。ただし今後の冒険に支障が出るようなら仕事を放棄することも考えてもらうわよ。」

シュウ 「噂はともかくとして、空き家の昔の住人だが、ガルアーノの前には上流階級の市民だったそうだ。」

トッシュ 「金持ちさんかよ。ま、あの屋敷のでかさを考えりゃ当然か。」

シュウ 「世帯主はエドモン。妻シルビア、娘ユミールと3人暮らしだったらしい。」

シャンテ 「その家族の消息は?」

シュウ 「役人に殺されたという噂が流れているが、真実かどうかはわからんな。」

トッシュ 「役人ねぇ…。」

シャンテ 「町の人達の間では幽霊屋敷と呼ばれていて、今じゃ近づく人もいないと聞いたわ。あながち冗談でもないみたいね。」

シュウ 「祟りや幽霊はともかく、何かがあるようだな。」

トッシュ 「詳しくはわかんねぇ、って事か。」

シャンテ 「推測でしかないけど、…あまり関わりあいになりたくない、という気配が伝わってきたわ。」

トッシュ 「おれはむしろきちんと解決しておかねえといけねぇ、そんな気がするぜ。」

シャンテ 「役人に殺されたという話も嘘ではないかもしれないわね。しばらく前に見よりのない少女がインディゴスに住んでいたそうなんだけど、それが屋敷の一人娘だったんじゃないか…という話もあったわ。」

シュウ 「屋敷の一人娘が生きている、という噂があるのか?」

シャンテ 「ただね、その少女は病気で死んでしまったらしいの。今となっては身元もわからないらしくてね。町の方ではあまり有力な話は聞けなかったわ。」

シュウ 「そうか…。シャンテ、娘以外の家人で生きている噂のある者はいなかったか?」

シャンテ 「いいえ。だれかもっと少女と話をしていればこんな結果にはならなかったんでしょうけど。動物が好きな女の子で、野良犬や野良猫にご飯をあげていたんですって。それで覚えていた人がいたの。」

トッシュ 「野良犬に野良猫ねぇ…。」

シュウ 「動物が気になるのか? トッシュ。」

トッシュ 「いや、俺が屋敷の下見にいった時に、ちょっとな。屋敷の中にはイヌネコどもがわんさといやがったんだ。でもよ、飢えてるわけじゃあなさそうだった。」

シュウ 「モンスターがいると噂の場所に犬猫か…。」

トッシュ 「ああ、でも攻撃してくるわけでもなく、こっちが一睨みしたら逃げちまったがな。」

シャンテ 「他にかわったことは?」

トッシュ 「変わった事ねぇ、そうだな、奥に進むと納戸っつーか、物置に辿り着いてよ、そこにさっきシュウが話してた家族と思われる絵が置き捨てられていたぜ。」

シャンテ 「幸せな家族だったのね…きっと。」

シュウ 「モンスターの気配はなかったか?」

トッシュ 「気配はなかったが、妙に肌寒い感じだったな。ま、屋敷の中はこんな感じだけだったぜ。」

シャンテ 「犬や猫の世話をしていたのは、もしかすると…でも…。」

トッシュ 「もしかしなくてもそうじゃねえか、と俺は思ってるぜ。」

シュウ 「噂をどこまで信じるか、か。」

シャンテ 「乗りかかった船ね。あたしはこの依頼、受けたいわ。」

トッシュ 「そうだ、言い忘れてたが屋敷の外に墓があったぜ。」

シャンテ 「それは、その家族の?」

シュウ 「手を入れていた形跡はなかったか?」

トッシュ 「名前を調べようと思ったけどよ、残念ながらかすれて見えなかったぜ。恐らくその一家の誰かの墓だと思うんだけどな。」

シャンテ 「とにかく犬や猫をそのままにしておくわけにもいかないし、何より真実を知りたいわ。あなたたちは?」

トッシュ 「聞くまでもねぇぜ、シャンテ。俺はさっきも言った通りだ。シュウ、お前はどうなんだ?」

シュウ 「俺もこの依頼を受けたいと思う。何があるのかこの目で確認したい。」

トッシュ 「おっしゃ!じゃあ決まりだな!」

シャンテ 「頑張りましょうね!」

シュウ 「では、ギルドに連絡を入れてこよう。」

トッシュ 「頼むぜ、リーダーさん。 」

シュウ 「ああ。二人とも、戻るまでに準備を整えておいてくれ。行ってくる。」

>>DATA