さ ざ ん か
花の少ない季節を 待ちかねたように 真っ赤な花の さざんかが咲く 深い緑につつまれて 冬枯れの街に ほのかな色を添える この場所で 街を見つめていた 君はきっと見ただろう あの日 闇に飲み込まれ 変わり果てた街並みを 声を嗄らし ガレキに向かい 叫び続ける人たちを
もう ここには 昨日までの街はない 枝一杯に花を付け 笑顔を振りまくさざんかを 誰が目に留めるのか 今 改めて思います 悲しいけれど あの年のさざんかを覚えてはいない 12年の時が過ぎ 今日は1月17日 この道を歩くメモリアルの人たちを 励ますようにさざんかが咲く 生まれ変わった街並に あの日と同じさざんかが似合う
でも何か 忘れて来た気がします 遠い日々の 記憶の片隅に 明日のために 昨日を忘れ 立ち止まることもできず 前だけ向いて歩いてきた あの時流した涙の意味を 生きていた命の重さを 思い起こそう もう一度 伝えたい いつまでも
※ 2007年のメモリアルウォークで出会った山茶花に寄せて