ゆらゆらと揺れる小船の上で二人だけの空を見上げた。私のどんな思いも吸い込んでくれそうな青い空だった。

ねぇ、カズ・・・返事の代わり急に重みの増した自分の膝を見ると、カズは優しげな顔をして眠っていた。

そーと閉じた瞳の底辺を縁どる濃い影を指でなぞってみた。

それに連なる男らしい鼻筋を辿って、艶やかな頬をとおってふっくらとした耳たぶ。キラキラと輝くダイヤモンドの冷たさ。

そして、私に幸せをくれる唇。

そこまで辿り着いた時、不意に指はその唇に捕らえられ漆黒の瞳に見詰め返された。

あ・・・恥かしくて言葉にならなくて、体温以上に心の温度が上がっていく。

優しく微笑んで引き寄せられて何もかもがどうでもよくなっていく。

聞こえて来るのは葦を渡る風の音と愛しい愛しいと刻み続ける胸の鼓動だけ。

このまま流れのままに月夜の国まで流されていきたい。その先に何があっても、もう惑う事も恐れる事も無いから

私にはこの愛しき者さえ居れば何も望まないのだから・・・。

繋いだ手を同時に握り返されて、それだけで癒されていく。

いつの間にか日は傾いて、東の空には仄白い月が浮かんでいた。

 

後日談:

あららぁ〜カズったら顔が真っ赤じゃない。ちゃんとお手入れしないとシミになるわよ、し・み!

だって、お前ちっとも起してくれないんだから。でもおあいにく様、オレ若いからシミなんてできないんだよっ!

まぁーなんて憎まれ口を!悔しい〜ジタバタ、ジタバタ・・・

ぷっ!そんなに暴れるから・・・ほら、口にクリーム付いてるよ(笑) チュッ!

水郷巡りがとても素敵だったので、二人で出かける事にしました。
ロマンチックな思いとは別にやっぱり年下俺様カップルは結構なバカップルのようで・・・赤面。
2004.6.26