あんまり外に出たがらないカズが散歩に行こうって言い出した。

太陽の光が苦手な私だけど、もう夕暮れ時だし良いかなって思い行く事にした。

えーこんな坂道やだぁって駄々をこねてみたけど、いいから来いよってカズは譲らなかったから、

長い坂道を二人で手を繋いで登った。

最後はほとんど引っ張られるようになってしまって、心の中でため息ついてしまった。

あ〜あ、年の差感じちゃうじゃないよ。

 

でも、辿り着いた小高い丘の上から眺める風景は素晴らしかった。

いつの間にこんなところを見つけたんだろう。

小さなベンチに腰掛けて何も言わずに眺めていた。

隣に座ったカズがそっと肩を抱いて囁いた

幸せだね・・・

カズが頑張る世界は私には眩しすぎて遠すぎて、信じていても時々不安になる。

私は何時だってカズのためなら自分を捨てる事だって出来る。

そんな崖っぷちに立っているような気持ちに追い込まれる時もある。

カズはきっとそんな私の気持ちに気付いてここへ連れてきてくれたんだね。

こんな小さな事を幸せって大切に思ってくれるカズを本当に愛しいと思った。

零れた涙を拭ってくれた優しいキス。

私があげられるものは何も無いけど、信じる事だけが私の贈り物。

一緒に大空を飛ぼうよって差し出したカズの手を離さないでいよう。

 

少し遠回りだけどって歩き出した帰り道。何処からか甘い花の香りが漂ってくる。

見上げた空には優しげな月。ちょっと遅れた私はカズの長い影を踏んでいく。

不意に引き寄せられて影は一つに。

この先もずっと一緒にいようね、そう囁いたカズの言葉を胸に

何処までも歩いて行こう、二人だけの月の道。

おセンチ亀ちゃまが歌う「ツキノミチ」に心打たれて妄想してみました。
何時も心を揺らしてしまってちっともお姉さんらしくない恋人ですが、
そんな彼女を年下なのにしっかり分かっているカズは健気でもあります。
2004.6.5