誕生日以来すっかり甘えん坊モードのカズが今日はなんだか様子が違う。
ほら、何時だか見たいに要らん勘違いでもしてるんじゃないの?なんて余裕かましてたら、真剣な顔してカズは言った。
「おれ、暫くお前とは会えない・・・いや、会わないことにする。」
えっ?それ何?どういうこと・・・
そういえば、最近カズは居ない事が多いんだよね。メールしても返事こなかったり、会ってる時に掛かった電話にそーっと離れて出てたりするんだ。
ま、私はお姉さんなんだからって、気にしないことにしてたし、なんだか焼きもち焼いてるみたいでいやだったんだ。
なのに、突然なんなの?私の?な眼差しから、スーと視線をそらしてカズはそれっきり何も言わない。
妙なところで短気な私は、そんな空気がイヤで「良いわよ。カズがそれでいいなら別に・・・」
最後まで言えずに背中を向けてなんでもない振りをした。本当は、泣きそうだったんだけど。
後ろで、カズの小さなため息が聞こえたような気がした。でも、やっぱりカズは何も言わずに、ドアをそっと閉めて出て行った。
一瞬で空気が冷たくなってしまった。ねぇどうして、どうしてなの?我慢していた涙が一気に溢れて世界がぐちゃぐちゃになってしまった。
あれから、一週間本当にカズはなんにも言ってこない。なんだか空気みたいになってきていたカズの匂いがしないと、心細くて。
かなり憂鬱な空気を纏って歩いてたら、道路の向こう側をカズがいた。
なんかスレンダーな見栄えの良い女の子や、今風の男の子達に交じって、カズはニコニコと嬉しそうに身振り手振りで話してる。
やたら華やかな人目を引く集団の中でも、決して見劣る事の無いカズの姿に、私が知らないカズだけの世界を見てしまったようで、胸がキリキリと痛んだ。
やっぱりカズには年相応の友達やリズムが似合ってるよね。だってあんなに活き活きとしたカズを私は知らないかもしれない。
言ってくれた言葉の数々や優しい仕草や、気持ちに嘘は無いと信じているけど、もうそれで縛るのは止めよう。
サヨナラは私の方から言ってあげなくっちゃね。きっと優しいカズには言い出せないでいるのかもしれない。傷つけちゃいけない愛しい愛しい人なんだから・・・。
そんな決心をしたにもかかわらず、なかなか勇気が出なくて気持ちの時間は止まったまま、更に一週間が過ぎてしまった。
やっと春らしくなった日の午後、何気に外を見ると静かに雨が降り出していた。あー大変だ、返そうと思って洗ったカズのパジャマ濡れちゃうじゃない。
慌てて飛び出したドアの向こうにニコニコ顔のカズが立っていた。あっ!と固まってしまう私。どうして笑ってられるのさ、信じられない・・・。
でも、気を取り直して言わなきゃね、今言わなきゃ。そう思えば思うほど、胸が詰まって声が出なくて、涙だけが溢れてきた。
「お前、何泣いてんの?そんなに会いたかった?ん?」なんてカズはやっぱり笑顔で聞いてくる。
あーもうカズのばかー。こぶしを振り上げて胸を叩こうとしたら、やんわりと引き寄せられて抱きしめられていた。
「あのね、俺、今度舞台に立つんだ。オーデションに合格したんだよ。」え?何、それ何なの?2週間前とまったく同じリアクションの私。
「いつもお前に甘えてばかりでイヤだったんだ。お前につりあうようになりたくて・・・。この世界で頑張るって決めてたから、どうしても受かりたくって。
だから、お前絶ちして願掛けした。絶対受かって、自分に自信付けたかったんだ」
なんなのそれ。勝手に願掛けの対象にしないでよ。もう、いっぱいいーぱい悩んだ私は何?それでも、帰ってきてくれたカズが愛しくて、優しい匂いが嬉しくて。
抱き合った二人の肩に降り注ぐ雨は優しくて暖かなSpringRain
でも、悩んだ事も落ち込んだ事も私の決心もカズには内緒。だってそうでもしなきゃカズはやっぱり付け上がるからね。
後日談。
えーと今日のメニューは・・・、そうなのよ、カズがばてないようにね、バランス考えて食べささなきゃいけないよね。
時間も結構不規則だし・・・。カズちゃ〜ん、起きなさいよ、レッスン遅れるわよ〜!もうしょうがないわね・・・パタパタパ、ほらほら起きて。
ん?足が痛いの?じゃぁ出してごらん、いつものマッサージしてあげるわね。
あらら、まるでお母さんじゃないの、結局は甘やかして付けあがらせるんだ。
ねぇ、カズ、舞台は何処でやるの?え〜大阪・・・大阪に一ヶ月・・・どーんと落ち込みそうになる。
そだ!大丈夫、マンスリーマンション借りちゃうからって、おい!
皆さんこんにちは。
梅コマドリボを前にやたらとハイテンションなママです。
妄想もここまで来ると天晴れです。
名づけてカズちゃんシリーズ(笑)だい2弾、書いてみました。
2004。4.11