天気の良い日曜日。
買い物帰りに一人公園入り口の傍にできたオープンカフェで一休み。
オープンエアの下でのコーヒーはまた格別な味がする気がする。
通りを行き交う人を見ているのも楽しい。
その中に妙に目立つ彼は・・・
Triangle
珪・・・・くん・・・・?
珪くんは誰から逃げるように早足になってる。
・・・・どうしたんだろ?珪くん・・・・
すると聞きなれた声が耳に飛び込んできた。
「葉月、待ちなさい!君に尋ねたいことがある。」
珪くんの腕を掴んだのは氷室先生だった。
私は急いで席を立った。
「では、質問を変える。君が道を歩いているとする。
その途中で眠くなった場合、君はどうする?」
「・・・・寝ます。」
「道端でか?」
「はい、道端で。」
珪くんと氷室先生が妙な言い争いをしていた。
それは、はば学一優秀な生徒とはば学一教育熱心な先生にしては
おかしな会話。
「こんにちは。一体どうしたんですか?道の真中で?」
「・・・・。」
「、君は買い物の帰りか?あまり用もないのにフラフラしないように。」
「あ・・・はい。で、お二人はどうしたんですか?」
「葉月が公園入り口のベンチで寝ていたので注意していたところだ。」
「ふふっ。珪くん、また?」
「ああ。今日はいい天気だしな。」
「そうだね。」
「また・・・とは?いつものことだと言うのか?」
「はい、珪くん・・・葉月くんはお昼寝大好きなんですよ。先生。」
「だからと言って、どこででも寝ていいというわけではないだろう。
聞けば眠くなれば道端でも寝るという。一体どうなっているんだ?彼は?
まったくもって理解不可能。もう少し分析する時間が欲しい。」
早口で話す先生を見て、私と珪くんは顔を見合わせて笑った。
「氷室先生?あれこれ頭で考えて分析するより、観察されたらどうですか?」
「、どういう意味だ?」
「先生、私たちと一緒に森林公園に行きませんか?
葉月くんのお昼寝してしまう理由わかるはずですよ。」
「な・何を?私はまだ校外の見回りを・・・。」
「それって・・・先生が自発的にやってらっしゃることですよね?」
「そうだが・・・それが何か?」
「先生?たまの休みくらい、お休みしませんか?ね?珪くん?」
「・・・ん?あ。ああ。」
「では、決まりですねっ。さっ行きましょうっっ」
私は珪くんと氷室先生の手を引いて公園へと向かった。
「、私はまだ行くとは言っていない・・・・・」
「先生・・・・無駄ですよ。がこんな状態の時は何言っても無駄ですから。
コイツのパワー・・・結構すごいから。」
珪くんのダメ押しが利いたのか、渋っていた先生の足が公園に向かって歩きだした。
私たちは森林公園の中をぶら〜っと散歩をして、
いつも通り、最後に芝生公園で腰を下した。
ものの5分もしないうちに珪くんが・・・
「昼寝・・・・させてくれ、飽きたら起してくれていいから。」
と言って、私の膝を枕にして寝てしまった。
私は珪くんにそっとショールをかけてあげた。
「まったく・・・・公園入り口のベンチでも寝ていたというのに、まだ寝るというのか?」
「いいじゃないですか。寝る子は育つって言うじゃないですか。」
「葉月くらいの背丈があれば、もう充分だろう。」
「それもそうですね・・・。でも・・・昼寝したくなる気持ちわかる気しませんか?」
「ん・・・・?」
「腰を下すだけで芝生の上を渡る風も、歩いている時のそれとは違うし。
芝生の香りや土の香り。なんだか自然に還るようで・・・・こう幸せになって・・・」
「だから眠るというのか?」
「はい。おかしいですか?」
「君も眠るのか?」
「はい。だって葉月くん、とても気持ち良さそうに眠るので・・・つい・・・。」
「まったく・・・君たちは・・・・。」
そう言いながらも、先生の顔は少しだけ和らいでいた。
その横顔が少し笑顔になった。
多分・・・私が先生の笑顔を見たのはこの時が初めてだと思う。
「芝生の香りは幼い日を思い出させる。父と公園でキャッチボールをした日を。」
「氷室先生がキャッチボールですか?」
「何を驚く?私には子供時代がないとでも思っていたのか?」
「いえ、そうじゃないですけど・・・・先生はピアノ一筋だったのかと思って。」
「モチロン、ピアノが一番だが、父は男の遊びという物にもうるさかった。」
「そうだったんですか・・・・。」
私があまりに興味津々といった顔をしたので、
先生は黙ってしまった。
私たちは青い青い空を仰ぎ見た。
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目が覚めるといつものように
が寝ていた。
スースーと聞こえる寝息。
その輪郭を指でなぞり、起き上がる瞬間にキスを・・・・・
コホンッ
・・・・忘れてた・・・今日は氷室と一緒だったんだ・・・。
「ここが公衆の面前であり、教師の前であることを忘れないように。」
「先生・・・・おれは眠くなれば寝て・・・。キスしたくなればします・・・・。」
「葉月!」
「先生が公衆の面前だからとか・・・教師の前だからというのであれば・・・このまま・・・。
でも、先生が一人の男として彼女にキスするのをやめて欲しいなら話べつですが・・・。」
「は・葉月・・・き・君は・・・い・一体・・・な・何を・・・。何故私がそんな・・・。」
曖昧な氷室の答え。
だけどおれはキスするのをやめた。
氷室が少しホッとした顔をした。
「王子のキスで姫は目覚めてしまうから。もう少しこのまま・・・。」
「そうか・・・・。」
おれと氷室はそっとを見つめた。
からふと目線をはずすとお互いの視線がぶつかって
思わずお互い顔を逸らせた。
「私は明日の準備があるので失礼する。君は責任をもってを家まで送り届けるように。」
「はい・・・・・。」
「葉月・・・。」
「はい・・・。」
「私はやはりどこででも寝てしまうことには感心しない。
しかし・・・公園とはいいものだな。以上だ!」
氷室は立ち上がり、公園の出口へと歩いて行った。
夕陽も傾き、肌寒くなってきた頃、おれは隣で眠る眠り姫にキスをした。
「う・・・ん・・・・?珪くん・・・・?」
「おはよ。もう陽も暮れる・・・・。帰るぞ。」
「あれ・・・・?氷室先生は?」
「ああ、先に帰った。明日の準備があるらしい。」
「ほんと氷室先生って真面目だよね。クスッ。」
「おれは・・・不真面目か?」
「うううん。珪くんはマイペースなだけ。」
「それはべつに誉めてないだろ?」
「だけどね・・・そんな珪くん・・・・私は好きだよ。」
「サンキュ。」
おれはの頬にキスをした。
そして立ち上がり、真っ赤になったままのに手を差し伸べた。
「ほら、手貸せよ。送ってくから。」
オレンジ色の太陽がおれたちを包み込んでいた。
―おしまい―
―2002.10.20―
napping with Prince: 美咲由希
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