〜葛藤〜
私は八葉の1人として、龍神の神子に従う事が役目。
私は神子とともに京に蔓延る怨霊を退治するのが役目。
私は自分の身を呈して神子を守ることが役目。
その役目に疑問を持ったことはない。
私は神子の道具なのだ。
だが、神子はおかしなことを言ったのだ…。
「泰明さんは仲間だよ。」
と。
私には神子の言っていることが理解できない。
「八葉は神子を守るために選ばれたのだ。
神子の身に降りかかる悪しき怨霊を振り払うための盾になる。
ただ、それだけが使命のはずなのではないのか。」
私は神子に事実を伝えたのだ。
神子は悲しそうな顔をして言った。
「泰明さんは道具なんかじゃないよ。かけがえのない存在なんだよ。
泰明さんの代わりなんていない。道具なんかじゃないよ。」
私は人間ではない。
師に作られた人形だ。
神子は龍神に選ばれた京を守る使命を持つ者。
その神子を守るのが八葉としての私の使命なのではないのか?
だが、最近わからなくなってきたのだ。
私がなぜ神子を守るのかということがだ。
私は八葉としての使命、神子の道具として守っていると自分でも理解していた。
それ以外に何の理由もなかったのだ。
私の代わりはいくらでもいるのではないのか?
では、なぜ神子は私のことを「かけがえのない存在」と言ったのだろうか。
恐らく陰陽の気を使う私の能力が「かけがえのない存在」なのだろう。
だが、私は別の何かの答えを求めているようなのだ。
私が神子を守る理由も何か別の理由を探しているようなのだ。
私は神子の道具。
道具以外の何者でもないはずだ。
神子を守りたいという気持ちに偽りはない。
それだけは確かなのだ。
四方の札を得た神子は神々しくさえ思える。
この調子だと、四神の封印も恐らく達成できるであろう。
神子は私の心のかけらを2つ取り戻した。
人間ではない私に心はないはずなのだが、なぜか胸が痛くなる。
これは一体どういうことなのだ?
私の身に何かが起ころうというのか。
…このままでは私は神子の役には立てない。
神子の道具でいる資格はない。
ないはずの私の「心」が激しく揺れる。
一体どういうことなのだろうか…。
泰明さんの恋愛3段階直前の心理を書いてみましたが…うーん、難しい。
書いているうちに彼の気持ちが乗り移ってきました。
もえさまに捧げたものです。
ありがとうございました。