怪力に関する考察
 うる星やつらのしのぶと言えば、彼女の怪力ぶりがあまりに有名になり、しのぶ=怪力(少女) とされるほどになってしまいました。しのぶファンとしてはすぐに“怪力”が言われることに不満を感じる一方で、やはりしのぶになくてはならないとも思います。どちらにしても結局、“怪力”はしのぶから切り離せないものあということですね。ここではそういう存在である“怪力”について様々な考察をしていきたいと思います。

 (1)全体的印象

 原作を見てみると、三宅しのぶ=怪力というイメージほどには“怪力”を見せる場面は多くないように感じられます。それに対しアニメでは、実際に数えたわけではないので正確」にはわかりませんが、原作よりはるかに“怪力”を見せる場面が多いのは間違いなさそうです。そのためしのぶ=怪力のイメージはアニメがつくり出したような気がしてきます。ただ、原作において“怪力”を何回も見せていることは(アニメほどではないにしろ)確かであり、また、はじまりが原作であることも確かです。だから、アニメがイメージをつくったと断定してしまうのは早計かもしれません。もっともアニメが過度にイメージを強めたことは確かではありそうです。※1
 原作において、“怪力”ははじめの頃は机や少々重いものを両手で持ち上げ投げつけるなどそれほどたいしたものではなく(一般的にはそれでも凄いことなのですが…)、また、かならずしもしのぶ特有のものとは限らなかった気もいたします。しかしそれが徐々にエスカレートしていきます。だんだんと持ち上げるものが重いもの、大きなものになっていき、両手で持ち上げていたのが片手で、表情等が苦しそうにしていたのが軽々と持ち上げている感じになっていきました。そしてアニメほどではないけれども、“怪力”がしのぶを特徴付けるものになっていったように感じます。※2
 また、それにともなって作中においてしのぶ自身の自分の“怪力”に対する認識が変わっていったように見えます。はじめの頃は自分が凄い力を発揮していることに気付いていない様子でした。おそらく、怒りの最中に発揮することが多いため、気付いていなかったのではないかと思われます。それが次第に認識するようになった様に思えます。それは回を重ねてわかるようになっていったこともありますが、凄い力を出していることに自分でも気付ける状態でも“怪力”を発揮できるようになったということを示しているように思えます。つまりは、怒りの場面以外でも“怪力”を発揮できるようになったということであり、これは“怪力”の原因等が変化したことをも示しているように思えます。気付きはじめた頃は女の子としてのイメージを気にしてか、“怪力”を持っていることを嫌がり否定していました。ところがだんだんと否定しつつもひそかに自信を持っているかのような雰囲気が出だし、ついには自ら披露する場面さえ登場しました。
 そのような感じでだんだんと“怪力”を見せる場面が増えていき、後半期になるとかなり“怪力”を見せる場面が多くなりました。ところが、今度は次第に他のキャラたちもしのぶほどではないにしろ凄い力を発揮することが多くなるようになります。あたる、面堂、サクラなどはもちろんのこと、本来非力であるはずのランまで凄い力を出すようになり、コタツネコなどの力の強い新キャラの登場、さらにはラムまでもが物を壊すなど電撃が力の代替を果たすようになっていきました。そのため後半期では“怪力”の場面が増えたにも関わらず、しのぶの印象はむしろ薄くなってしまったように感じられます。そして、しのぶよりも“怪力”の飛鳥の登場によりさらにそのことに拍車をかけました。
 以上、いろいろと全体を漠然と見て思ったことを書いてきました。以下ではもう少し細かく見ていきたいと思います。

 
 
    ※1
 その理由はいくつか考えられます。アニメではわかりやすく、面白くするためにあえて特徴的なものを前面に出す傾向があります。また、アニメがはじまった時点では原作は進んでいるわけであり、その頃原作において“怪力”の場面が多くなっていたために、特に意図しなくてもアニメでは初期から“怪力”の場面を多くなってしまったとも考えられます。話の初期はしのぶの登場することが多いですから、なおさら多くなってしまいます。そして、そもそもアニメという表現媒体自体、数が多かったり、特に意図しなくても、イメージを強く植えつける要素がある気がします。漫画ではひとコマではあまり意識されなかったりしますが、アニメではそうはいかったりします。

 
    ※2
 このことも、それぞれのキャラの特徴が固まってきたため、話をつくりやすくするため、アニメから逆輸入(案外こういう例が多い気がします。)等いろいろと理由が考えられそうです。そして、そのことは「うる星やつら」の特に中期以降の話の特徴等と深くかかわっていそうなことですが、そのことは他の場所や他のかたの考察にまかせます。

 

 
 

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