1.NO GOOD! 「NG!」
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ファーストの衝動感がよく表されている作品。曲調や、この曲のステージングに、1975年頃のスプリングスティーンの影響がしばしば見受けられる。しかし曲のテーマには彼のオリジナリティがある。都会で働く男の歌がある。それほど強くは生きていないが、意思を持って生きなければいけないと彼は強く歌う。労働者讃歌。僕が社会に出る前にこの歌を聞いて、勇気付けられた、とおそらく、そうだったと思う。 なんとなく生きてるんだけれども、感動したり、冷めてみたり、忘れていたり、そんな僕もこれからどうにか勝ち続けなきゃいけないんだ。 と微かに記憶している。その記憶が少し泣ける。 |
2.Aの調書 「NG!」
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デビュー当時、話題となった曲。「あなたの正義より、僕のほうが正しい」と最後にいいきる発言は、調整を生活のルールしていた僕に衝撃だった。ギター一本で地方から出てきた彼を少しダブらせた。 しかしすべてに強く主人公が発言しているわけでもない。でも生きるには世の中に折り合いをつけないと生きてはいけない。 アルバムでは、「Aの調書」「NO GOOD!」と続く。その流れの方が意味深く感じられるのだが。 |
3.FILM GIRL 「NG!」
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「NG!」の中で一番最初に持ち込まれた作品らしい。構成のしっかりした曲。芸能界を歩む女性シンガーの誰かに語る。逆に、彼は、この音楽業界での姿勢をここに表明しているようにも思える。 |
4.傷だらけの天使 「ひまわり」
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同名のテレビドラマにヒントを得て作られた曲。ライブの定番である。僕は、学生運動も思想もイデオロギーもない時代に育った。それ故、真の裏切りに遭ったことはない。裏の社会に顔つっこんでヤバイ仕事をするわけでもない。しかし同じくその経験を持たないだろう彼はそれを歌う。痩せたその男をイメージする。男の生理的憧れと絶望、そして裏切り。 |
5.裏窓 「Passing」
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アップテンポで、不思議な曲調を持った作品。少女の目から見た風景を小山は語る。大人へと移行しつつある少女は、いくらかのことを順番に理解するのだろう。うまくやるために、分からないでいることと、分からなければならないことを覚えていく。そんな成長の中でふと真綿に包まれた中に身を委ねていたい衝動が時折やってくる。安心して抱かれたい。その気持ちの対象は、やがて親から、異性へと移る。でも異性に抱かれたい気持ちは何か、親に抱かれていた時と、どこかで混同しているのかもしれない。大人になっている今も、勘違いしている時がある。 |
6.Gallery(new version) 「夢の島」
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フィンガリングのアコースティックギターの音がフューチャーされた美しい曲。小山は、今はいないその年下の男女に優しく歌いかける。バイクを走らせていると、日常の中で僅かに死がはいりこんでくる時空がある。死が遠い平和な時代だから、そんな悪趣味な感情をもってしまう。そしてその何百mかを白い頭で走っていく。ある人生ではそこに現実の死があり、ある人生には、無邪気なアナーキーさがある。そこに本当に生きる理由が見当たらない。自分を認めることが出来ない。時代を恨むこともなく、その位置を分からず悩んでいる男の子、女の子はたくさんいる。でもそれは誰にも打ち明けられない。 |
7.The Fool On The Build' 「The Fool」
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Foolはロックの重要なテーマの一つである。現代人の我々は、いつも無知の知を考えさせられる。精神を純粋に見つめるとき、必ず、人は様々な世間の感情や欲望に自分が大きく揺さぶられていることや、邪魔をされていることを確かに感じる。しかし一方そう分かっていながら、存在するために、世の中でうまくありたいと、いつも考えている。富と高い地位を目指している。転がる石のように石になることも出来なければ、なろうとも思っていない。本当の人の在るべきがどこなのか。物質でなく精神が残ると理解していても、それがいつも分かっていることでもない。遠い目でFoolを見つめている時がある。それでは、生活はできても心を感じることはできない。 |
8.PARADISE ALLEY 「ひまわり」
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乾いたギターのイントロが印象的なナンバー。クールな優しさで歌っている。人間は言葉でのつながりがなくとも、優しくいられるし、親切も持ち続けられる。べったり話を聞くのが優しさではあるまい。それぞれの人が孤独であるのだから、それを理解して、付かず優しくいることは可能なはずだ。 |
9.Blind Love 「The Fool」
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恋愛が始まり、時間が止まればいいとは、誰もが考えることだが、そんなものに現実味はないし、稚拙な考えだろう。それでも失ってしまいたくない過去の経験を持つ二人は、幼稚にそれを思う。しかし、それは叶えられないのだから、二人は確証を求め抱き合う。リアルな時間が連続していてもそれはある時途切れて過去になってしまうことも充分に承知している。そして相手のことに「なぜ」と思うときがある。あんなに強く抱き合っても見えないことが多い。だから恋人同士は必要な以上に相手を抱きしめるんだろう。真に相手を思いやる気持ちをその時、強く心に思っている。それが誤解だったとしても。 |
10.Show Time 「微熱夜(12inch single)」
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このベストの中で、唯一アルバムには収録されていない曲。イメージが広がり映像が喚起される歌。ライブにもよく歌われる。 |
11.下から2番目の男(live) 「On The Move(live album)」
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アルバム「ひまわり」で発表された。彼には珍しく、オチつきの歌。個人的には、誰かに提供すれば、ヒットするんではないかと思う。下から2番目とは、うまいネーミングだと思う。このアイデアで、この曲は、一気に作られたのではないだろうか。トップでも、そこそこ居心地のいいところでもない。といって屈辱的な位置でもない。でも安心していられるところでも当然ない。売ってしまうのなら、下から2番目でいい。しかし、年を経ると、少し上がるために、気が付かず、少しずつ売っているのだ。 |
12.Passing Bell-帰郷(live) 「微熱夜(12inch single)」
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重要曲に位置付けられる大作。-夕刊の片隅-の歌詞にに始まり、亡くなった友へ、異なった人生を歩み始めた人たちの回想が静かに展開される。友人の死は、肉親より遠いが、同じ時代に生きる戦友である。友の死は、自分を見つめ直す時である。そして生きていくしかないことを悟る。だから、土砂降りの雨の夜、その涙は止まらない。少なくなってしまったその涙。そんな時くらいにしか、もう流せない。 「Passing」にて発表。 |
13.I WEST 72 STREET NYNY 10023(live) 「NG!」
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ファーストアルバムの一曲目にあたり、記念碑的作品となった。一番初めに聞いた小山の声である。舞台は、ニューヨーク。曲のタイトルや、歌詞にスプリングスティーンが出てくるところに、まだ、憧れの「青さ」を感じるが、逆にこれはファーストの力の部分かも知れない。必要以上の装飾の無いシンプルな伴奏が印象的である。心の動きを表現することなく、ただ情景を語っている。それが逆にこの曲に深い印象を与える。 |
14.ひまわり 「ひまわり」
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ファーストで、ある程度の成功を収めた彼が、2枚目の最初にこの曲を持ってきたのは、示唆的である。彼の音楽は、売るためだけのものではなかった。僕も84年の「ひまわり」発表前のツアーの最初にこの曲を聴いた。気持ちのいいだけのロックンロールを彼は必要としなかった。そう理解はしていたが、実際に彼はそうだった。「ひまわり」は、その後の彼の方向をはっきり示してくれた曲である。その精神と、彼のこの世界での生き方は、今も変わらず続いている。 |
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