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 REBEL#1 品番COCP-50699 価格\3059

恋がある。始まっても終焉を予感させる。
そうさ、そんな経験をみんな持っているから。そのまま感じてみよう。
他人の雑音なんて遮断して。
でも落ちないよ。

01. センチメンタル

気持ちは日常のように持ち続けているはずが、もう大丈夫だと高をくくっていたはずなのに。恋に落ちると自分の生き方の中でカッコ悪いと位置付けていたセンチメンタルがやってくる。センチメンタルの方向に掛け違ってしまう恋もその名のとおり、恋。
昔を思い出してしまうなんて、ほんとに何ともセンチなのだ。切なく触れたくないものが不意に思い出される。親に世話になっていた自分なんてどこかに飛ばしてしまいたい。未熟な自分、そんなもの見たくもない、そして、今でも完成していない自分。無責任に思い出されてしまい、落としどころもない。
自分が思っているほど自分なんて強くないのは当たり前だったんだよ。恰好良いも悪いもそこに落ちていく。普段そこそこには胸張って生きているのと全然違う世界に落とされる。流されて、そういう感情に沿うように辿り着かされる。
ロックにとって敬遠しやすいこの単語を、敢えて曲名に、そしてTOPに持ってくるところが、このアルバムの危険なおもしろさを演出してくれているような気もする。
それよりセンチメンタルという心への刺激がないと歌なんて書けないジレンマがある。頭から被っちゃうと駄目なんだけどこのインセンティブは必要となる。
そしてそのセンチを否定するプリテンダーなんだ。ロックアーティストは。
02. Everything is wonderful

静かなキーボードの単音が、まるで雨だれのようにポツポツと響き渡り、歌の空間を作っている。疎外感のイメージ深い歌。このアルバムの感情深い、激しさを抑えた静かな雰囲気を作っている。
どんなに心乱れていても、世界の中の小さな一人の甲羅の上のボク。
03. Reborn

このアルバムの核になる曲が2曲続く。
今の愛がある。今まで裏切られた、或いは裏切った愛がいくつかある。経験は人を育てるなんて言葉はとてもいやらしい。人はたくさんの傷を持って、傷つけて、罪を犯して、それをとても生まれ変わるなんて言えない。今の君、二人でたくさんの過去の言葉や心に懺悔して生きていこう。
分かり合えなくても、ずっと信用できなくとも、ゆっくり進んでいこう。
もう嘘は言わない。今日こそが真実であると仄かに思って生きていこう。きっとこれが真実のはずさ。弱くとも立ち上がれる。そのうち立ち上がるさ。
生まれ変わるその後ろめたさが弱いメロディに乗せられ伝わってくる。経験した挫折でそんなに未来を無責任に喜ぶことはできない。でも生きていこう。今度こそは最後かも知れないから。良からぬ想像だけがオレを苦しめる。アルバムのボーナスで聴けるもう一つの「reborn」
痛い弾き語りを耳にしてまた思う。
04. 水色の風

いい単語の連なりだと思った。
水色の風を感じるときは、きっと何も考えず、ここをそのまま居ればいいのだろう。この感情をそのまま風にまかせて。時折高ぶる心は理屈を越えて激情でもなく冷めてもなく流される。でも自分で流れているんだ。
韻を踏んだ、心が混ざっていくような美しい歌。
バックコーラスはBUMPの藤原基央。
05. Anything for today

このアルバムで初めて少し早い追われるようなリズムで展開される。
今日という日は想像つかなくともすべてが今日だったのさ。
そして彼女は永遠に消えた。
06. サイケデリック後遺症

ドッラグを連想させるこの歌は、簡単な、肌へのぬくもりを求める心と、セックスによって得られるはずの理解の限界を見せる。心を求めて君を求めて中へ中へと入っていく。僕はその時十分だと思ったんだが、その思いはその後の虚しさですっと現実に引き戻される。その虹はきっと見えていたはずなのに。二人はまた求める。他に何もないかのように。恋人達は純粋にそれを求めて何度も繰り返す。
人は肌を触れ合う快感にいろんな感情や心を乗せていく生き物なんだ。いろんなオプションを用意して心に近づこうとしては挫折する。
07. キミのかほり

彼女という生き物が、生身の人が、好きでその分憎くて、心がおかしくなってしまう。気にしすぎてコントロールが効かなくなる。そんなこと続いてると、そのまま無邪気であり続けるであろうはずがない。油断すると彼女の香がやってくる。いつまでも落ち着かない。行くところも上がりもない。きっとまともな神経じゃないんだ。そうだったんだ。
息を飲むような美しいサビのファルセットが心に残る。
08. Are you hollow?

「落ちない飛行機で君の街まで飛んでいけたなら」のフレーズひとつでこの歌は彼女へ落ちていく一人の男の感情を表現することに成功している。
一人の人間の存在を自分の感情で特別に異常な人にしてしまう。
ある日からその人は僕にとって、自分の心を激しく揺さぶる特別な人へと変わる。バカなんだ、人の感情は。そうでもいわなきゃ説明がつかない。
独り占めにしたい、無関心でいられない、憎悪とかわいさ。
磨り減ることがいつか分かってしまっても、知りたくなる気持ちが支配する。人を知ることはできないはずなのに。
ウエストコースト風の終止感のないハーモニーが印象的。
09. 落堕

アップビートの歌。しかし心は弱い。ラクダみたいな顔をして落ちていくやつら。語呂合わせの造語。
コミュニケーションの中で真っ直ぐ見る振りをして、知らない振りして。やってることがいつしか自分に染みついて。自分の身体持て余すぜ。リセットしないが衝動に駆られる。人の心なんて知ったら死だ。
10. 愛と理非道

イーノ風の連続したキーボードのリフの繰り返しが曲をイメージしていく。不思議な日本語の流れ。それとなく韻がある。辛く美しい。力が抜けて過去の経験が静かな悲しみの地層を成す。
血があって生きていく中には、憎しみに、愛に理論があった。少なくともそう考えなければ気が狂いそうになることだってある。その上、人に言えないおぞましいことを平気で考える。その心、外に出れば異常者。
いいんだ、そんな理屈ぶっ壊してしまえ。何も思わなければ楽さ。でも小さな虫が人の精神に入り込んでくる。生きれば入ってくる虫虫。真夜中に考えすぎれば、希望は消えてしまう。
でもどっかあるよ、わかってるよ、当たり前のこと。