どれだけ働き詰めの人間でも、休める・・・いや、休みたいとは思う、新年の朝。しかしながら、休む暇を潰しても新年だからこそ、他の目的に費やしたいと思う人間も多くいて、そのうちの一人はヴァーハラ城にいるのであった。
「・・・クチェ、ラクチェ、起きて」
「・・・・うん、、セリスさまぁ?」ぱた。
寝ぼけているらしい。・・・眠り姫には、王子さまの目覚めのキスをどうぞ。というテロップが流れたかどうかは知らないが。
「ん・・、ふぇえぇぇ!?」
「目が覚めた?見せたいものがあるんだだから服着替えて欲しいかなぁ・・・なんて。僕はそのままでも別にいいけど」
昨日の夜、一体なにがあったかしらないが、今日も今日とてセリス様の発言は朝っぱらから不埒であった。
「え?って、きゃああ」
「じゃ、部屋のそとで待ってるから」
今さらながらも、ゆでだこ状態で枕を投げつけてくるラクチェをなだめることしばし。二人の新年の幕開けは知るものにとっては、『いつものこと』であった。
「もしかして、外に?スカサハは五月蠅いんじゃ・・・」
「ああ、それなら大丈夫、きのうさ〜


スカサハのにちじょう(回想編)


「スカサハー、スカサハ〜、ス・カ・サ・ハ〜〜〜」
セリスがこういった口調で近寄ってきた時、ロクな話であった試しがない。無視だ、ムシ。
「やだなぁ、スカサハってばまだ若いってのに耳遠くなっちゃったの?」
いったん無視を決め込んだら、スカサハ梃子でも動かない。もしかしたら、頭の中では
「天地四方を清め清風を呼び込む流星の力よ!毒舌、我が儘まとめて往生!!」
(・・・・・まだこっちみてるよ〜、勘弁してくれよ〜〜)
ぐらいのことは考えているのかも、しれなかった。
  
どうやらそのまま話続けても埒があかないと判断したのか、踵でこちらの足をぐりぐり踏んづけてくる。その、・・・痛いんですけど?
「なんですか、一体?」
「いやぁ、その・・明日の早く外へ抜け出せるように、その・・・警備に穴を開けておいてもらえないかなぁ〜なんて」
「出来るわけないでしょうに」
話にならない。と言わんばかりに顔を背けていると
「お願い」
じ〜。
「でないと、僕、警備の近衛隊員に恥じか貸せることになっちゃう
v
・・・何をやらかす気だ、ナニをとは問えないところが悲しいかな主従関係。・・・まあ、幼なじみであるが故のいささかなんちゃって主従関係のきらいはあるが。
「きゃ
」とか言いながらほんのり上気した頬に手をあててこちらを見上げてくる。
「スカサハってばつまんな〜い。アレスならここは『馬鹿な、俺はノーマルのはずだ。いや、しかし・・・』とかって苦悩するところなのにー」
顎の手前で両手の握り拳にして合わせイヤイヤするように、首を振ってくる。スカサハ、その言葉にアレスと今までと違った関係を築けそうな気がした。気がしたが、しかしこの場においては、・・・・・これ以上、構ってはおれん。沸き上がる頭痛を押さえ込みながら、スカサハはどうにか厩舎側の警備を軽くする旨を告げその場を去った。


「てなわけでさ〜」
「セリス、あんまりスカサハをいじめないで」
「うん。覚えてたらね」
のれんんに腕押し、ぬかにクギ。とはこのことだろうか、はあ。
「それで、何処へ行くのですか?」
「秘密

「とりあえずは、ジェルフェのところへ行かないとね」
「こんな時間に機嫌が悪いのでは?」
「うん、悪いだろうね」
寝起きでご機嫌ちょっとナナメ気味のラクチェ、スカサハの胃痛が理解出来たような気がした。

ぶひひん。
誰に似たのか、はたまた最初からこうだったのか。今となっては分からないが、セリスの乗馬であるジェルフェはこの上もなく、難しい気性をしていた。とにかく、気が向かなければ動かず、座り込んで しまうのだ。厩舎に入れるのだって、他の馬の5倍はかかることなどザラだ。
それでも、暴れて人を傷つけた試しはははなく、セリス以外に背を預けようとはしないあたり気位が高いと言っても良いものかどうか。・・・それにしてはそのセリスでさえいちいち宥め賺さなければならないのは、いくらなんでも自己主張が激しすぎないか。

そんなラクチェの心を知ってか知らずか、一人と一頭は
「だからさー」
ぶひひん。
などと、交渉?を続けている。
「何を馬相手にシリアスしてるのよ」とはラクチェの心の弁か。
「いいってさラクチェ。ってあれ?もしかして嫉妬してるの?」
問いかける視線はどこまでも悪戯じみた色を帯びていて。

───そりゃあ、もれなく平手打ちの一つも貰えようというものだ。

ぱからぱからとかけていく先は一言で言えば山で。ヴァーハラの王宮からすれば南東にあたる場所。もしかして、覚えていてくれた?
そう問いかけるラクチェの視線にはわざと気付かない振りをするように、手早く手綱を手近な木にくくりつけ再度、馬とシリアス。
(ラクチェ、相手は馬よ、馬。ちょっとセリスが耳元で優しく囁きかたり、毛繕いしてあげたり、頭をなでたり、目と目で会話して怪しい雰囲気に突入したぐらいでいちいち腹を立ててはいけないわ。ジェルフェだって、こんな早くにたたき起こされたら気が立っているんでしょう、ええ、気が立っているんでしょうとも!!!)
人間、楽しい時に邪魔されると、通常の5倍は腹も立とうというものだ。


「ジェルフェと見に行かれたらよろしいのに」
「あはは、それは無理だよさすがに。ほら」
何時までも、怒ってるとつまんなくなっちゃうよ?それに怒った顔も可愛いと思うけど、僕やっぱり笑っている方がすきだなvとは言外の想い。それは鈍い自分でもくみ取れるには充分過ぎるほど、溢れていたから微笑みながら差し出される手を取って。
「足下に気を付けてね」
言うがはやいかすでに手にした剣で、邪魔になりそうな枝やら雑草やらを払いのける。随分前にもこうして年明け最初の日の出を見に来た覚えがある。それはまだ、自分達がこの戦いのそのなんたるかを本当に解ってはいなかった時の想い。
「本当はみんなで来られればよかったんだけど。でもほら約束したから」
遠き日の誓い、果たされなかった約束。この戦いが終わったら、みんなでこの風景を見ようと誓ったのだ、自分達の身の上を知り決起する事を決意した翌日に。しかしてティルナノグの中にいて蜂起に備えるとはいっても、あの頃は身の回りのことだけを考えていればよかったのだろうきっと。今の自分達の立場はその頃のソレとは違う。それは、誰もが自覚していることだ。
だから、
「きっと、みんな見てると思いますこの風景を。覚えてますよ、あの風景を。だってセリスは覚えていたんでしょう?」
幼かった誓い。苦しんでいる人を助けるというには、自分達の理解はあまりにも稚拙だったと、今ならわかる。だけど、今の自分達があの日の誓いの上に立っていることは疑いようもない事実だから。それは、今となってもこんなに愛おしい。
「そうだね。きっとそうなんだろうと思う」
だって、みんな理解しているから、僕らはかけがえのない7人組の盟友だって。そうだろ?
そう言えば、ラクチェとお近づきにないた〜い。って君にだけは話していたんだけっか。懐かしさに思わず笑みがこぼれて。
「どうしたの?」と、そうふわりと笑う彼女に
「なんでもないよ」とそっと口づけて、
7年前と、(半刻前)と同じに彼女の手を握る。
「そろそろ帰らないとね、無理言って出てきたから、二刻半以内には帰らないとスカサハに殺されちゃう

「あんまりからかわないであげて、最近頓に胃が痛いって言ってたから」
ころころ笑いながら、軽口を返してくれる。その風景は、昔にもあったのだけれど、つい最近まではやっぱり無くて。還ってきたものは7年前にあったようで、なかったような、そんなな
れたらいいなと思う関係。きっと君はしってたよね?僕らのことずっと見ててくれたから。

だから、あなたを失望させないように努力して、来年、新しいお互いにまた逢おう。




その後、待たせ過ぎて完全に臍を曲げたジェルフェを宥め賺して立ち上がってもらうのにちょうどたっっぷり一刻かかったのは別の話で、そのジェルフェを宥め賺すセリスの様、滅多にかけないような優しい声色で話しかけたり、一生懸命目と目で会話したりする様子に、ラクチェにまったく口を聞いて貰えなくたのも別の話で。
ぶっちゃけて言えば、馬相手に嫉妬しているラクチェに「可愛いなぁ」などと思いつつも、戻ったときのスカサハのお小言を想像して肝を冷やしていたセリスを暖かい光が包んでいて。
「やっぱり、君って僕らのことよく見てくれているよね」とセリスが苦笑したのもやっぱり別のお話。