鍋料理をつつくために家に来ないかと誘われたとき、ジャベイラが大喜びで頷いた時点で、イーギーの参加も決まったようなものだった。ガユスの料理の腕前が相当なものだとは知っていたから、純粋に楽しみでもあった。 しかし当日の朝になっていきなり、具はそれぞれの持ち込みも許可すると宣言されて、一気に不安にかられる。 鍋を囲むメンバーは、他にギギナとツザンの併せて五名だというが。 「……なあ、お前の彼女は来ないのか?」 「何だよ、ジヴに気があるとか言うんじゃないだろうな?」 「じょ、冗談!!」 ちょっと不機嫌な顔をしたガユスに尋ねられて、ぶんぶんと首を振りながら必死の否定。ガユスとしては本気ではなく、揶揄しているのだろう。寧ろイーギーが気にするジャベイラは、二人のやり取りに気付いていないようで、がっくりとうな垂れてしまう。 というか。 問題は、そこではなく。 「だって……咒式士だけの闇鍋なんて、何が投入されるかわかったもんじゃないだろ……」 この場合はむしろ、一般人であるジヴが混ざっていた方が生存率が上がる。 黒ジヴの恐怖を知るイーギーではあるが、ガユスやジャベイラが容赦なく投下する食材の方が、この場合はよっぽど恐ろしい。下手に咒式士だけで集まっていると、手加減というものが無くなる。自分が標的となるとは思わないが、例えばツザンがガユスを痺れさせようとクスリを盛るとか、ガユスがギギナを殺そうとクスリを盛るとか、ジャベイラがガユスを襲おうとクスリを盛るとか……誤爆の可能性の高さに慄いてしまう。寧ろ、標的になる可能性が高いガユスが平然としているのが不思議だ。 「……って、お前、その知覚眼鏡は反則だろう!」 「ルールも仁義もない戦いに、普段から使っている道具を禁止する権限があるはずないだろ」 くくっと咽喉で笑った男は視線を逸らし、絶対に眼鏡を外さぬ構えだ。 ひょっとするとその態度こそが、ガユスも命の危険を感じているという証明なのかもしれない。 嗚呼、明日の朝陽は拝めるだろうか…… 志の低い望みすら、叶う可能性は限りなく低かった。 |