こっそり(?)放置の断片。
完成するか未定のもの。
誰かが気に入ってくれたらやる気が出るかなあと、
非常に他力本願に設置中です。




『ギギナさんと組んでいるのは、結局は彼が好きだから?』

 自分自身ですら、自分が何を求めているかわからないのに。
 他の誰が俺を理解しているというのか。
 わかった振りで誰に何を言われようと信じられない。
 いっそ、感情なんて無ければよかった。

『ギギナくんとガユスくんは、表面上はともかく仲良しなのかね?』

 どうしてあんな厄介な男と組んでいるのか問われる度に、笑ってはぐらかす癖がついた。
 最初は理由を脳裏に思い描いていたものだけど、じきにそうすることも無くなった。
 その内に、自分でもどうしてあの男の隣にいるのかわからなくなってきた。

 嗚呼、周囲から雑音が聞こえる。

 黙っていてくれ。心をかき乱さないでくれ。そっとしておいてくれ。
 無責任に、何も知りもしないで口出しするな。
 惑わされて都合の良い言葉にすがりたくなる己を知っているから、何も聞きたくないんだ。

『傍らに在るだけで良いから、答なんか要らない』

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40
ぐるぐる。ひとまず第一の修羅場が終了。
(06/11/29)



 買出しに来て、山となった荷物を両手に持ちながら横目でギギナを確認。
 明日からの遠出の食料が含まれるせいで大荷物になるのは確定だったため、奴を引っ張り出してきたのだが。俺の倍は持っている男の、まだ余裕がある様子に悔しくなる。
 だが、こいつを使わない手はない。
 タダで使える資源は、余さず使うのが賢い生き方というもの。
「ギギナ、じゃんけんしようぜ」
「……いきなり何を言い出す」
「いいからいいから、じゃーんーけーんーでー……」
 ほい、と。
 一瞬だけ右手に荷物を集め、妙に間抜けな言葉と共に握った拳を出す。
 俺はグー。そして奴はパー。
 …………ち。頭がピーな奴に相応しいものを出しやがったか。俺としたことが抜かったぜ。いっそ何も出さなければ不戦勝と言い切ったものを。勝負と名がつくものに負けるのを嫌がるドラッケンは、不必要な時に限って付き合いがいい。
「――何がしたかったのだ、貴様は」
「べーつーにー」
 糞、本当は勝ったらもうひとつかふたつ、荷物を押し付けてやろうと思ってたのに。
 重いから持ってくれ、なんて殺されても言いたくないから、視線を逸らして誤魔化しておく。だって仮にも男、仮にも攻性呪式士が、俺の荷物はお前の半分以下だけどまだ重たいからもっと手伝ってくれなんて言えるか。
「……まあいい。しかし私が勝ったのだから、ひとつ言うことを聞いてもらおうか」
「てめ、日頃から好きなだけ無茶を通してる癖に、こんな些細なお遊びで景品をねだろうとはさもしい奴め!」
「どうせ自分が勝ったら、何か言い出すつもりだったのだろうが」
 だとしたら、私が景品を求めて何が悪い。
 にやりと笑う男に返す言葉が無かったのは、図星を指されたからだ。決して絶対に男臭い笑みにうっかり見惚れた訳ではありません。
 俺が思わず沈黙している間に、ギギナは手を伸ばしてきた。
 はっと我に返るより早く、大きな手が俺の腕から荷物を奪っていく。
「な、おま……」
「敗者は黙っておとなしくしていろ」
 勝者の権利として、この食料はもらっておく。
 そう言いながら、見事に重い方から選んで袋を奪った男は、俺の三倍は荷物を持ちながら平然とペースを乱さず歩き続ける。
 何だか無性に恥ずかしくなって、思わず奴から顔を背ける。多分俺の顔は、真っ赤に染まっていたに違いない。
 最初から俺の考えはバレていたのか、それともふらふらよろめいているのが目障りだったか。いずれにせよ、か弱いイキモノとして庇われてしまったことになる。
 こうやって甘やかされると、妙な優越感にかられてしまう。
 奴が他人を構うのは珍しいとわかっているからだが、同時に非常に腹が立つ。
 男心は、複雑かつ繊細だった。

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39
男としての矜持は痛むところ。
(06/11/11)



独りで置いていかれるのは嫌なのだと。
不意に呟かれた言葉は、ぽつんと事務所に響いて消えた。
それは、素直に心情を語ることの少ない男が吐いた、数少ない真実に思えた。
独りになるのは嫌だ。
苦しげに切なげに泣き出しそうに。嫌だと言いながらも、いつかその時が来ると諦めたような顔で、痛々しく口元が歪む。恐らくは柄でもない弱音を吐いたと、笑って誤魔化したつもりなのだ。そんな顔では、吐露したのが真実であると証明しているも同然なのに。
「――とうとう頭の働きまで鈍くなったようだな。もう使えるところは無いようだ、おとなしく事務職に勤しんだらどうだ」
いつものように戯言を告げて男を煽るが、死や別離を想起させる言葉は避けておく。せめて、今日この時だけは。
「貴様のような軟弱者が、私より長生きできると思っているのか。独りになどなれるはずがない」
いつか、死がふたりを分かつまで。
その瞬間まで隣に居る。決して独りにはしないからと。
孤独に死ぬという、有り得ぬと確信できる未来に怯えている男を、哀れみの視線で蔑んでおく。
さあ、いつものように皮肉な笑みで罵声を上げるがいい。
間を置かずに行き来する言葉遊びは永遠に続くのだと、今だけは信じて欲しい。

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38
素直に慰め?られないギギナ。
(06/11/09)



**動物王国**

 小動物が長椅子の上で、うとうと眠っている。
 ヒルルカに座っていたギギナは、ぼんやり彼を眺めていた自分に気付いて顔を歪めた。
 気がつくと、あの小生意気なイキモノに見とれている己の不甲斐なさに舌打ちを洩らしかけ、とっさにガユスの安眠の妨げになるやもしれぬと感じてそれを止める。そして、ガユスをそこまで気遣う自分が情けなくて、つい溜息を吐いた。
 その直後、ぴくりと仔狐の耳が動いたので眉を顰める。
 相棒の嘆息にさえも眠りを乱されるとは、神経質にもほどがある。
 うっかりしたギギナがガユスを傷つける以前なら、ギギナの膝の上で安心しきった様子で惰眠を貪ることもあったのに。無防備に雪豹に身をすり寄せ、一口で食い尽くせそうな位置で爆睡し、ギギナが少しばかり動こうと触れようと熟睡し続けて、それはそれで呆れたものだったが。
 あまりの軟弱さに呆れると同時に、あまりの繊細さが心配にもなる。普段、自宅で独りで眠る夜にも、彼は少しの物音で眼を覚ましているのだろうか。前はギギナの傍でなら穏やかに眠れていたようなのに、今は何処にも彼が安らいで休める場所はないのか?
 それは堪らなく不本意な発想だった。
 うっかりと前脚を粉砕したことは珍しくも苦虫を噛み潰したような顔ながら謝罪し、ガユスも不満そうな顔をしつつ受け入れたというのに。あれは故意ではなかったのだと納得して、わだかまりは残さなかった――残したくは、なかったのに。
 ぱたぱたりと大きな耳を動かしたフェネックが、本格的に眼を開く。
 長椅子の上で身を起こしたガユスに、何も案じることなど無いと声をかけようとしたところで、ギギナは人の気配を感じて事務所の戸口に視線を向けた。
 呼び鈴の音が響き、明るい声が聞こえてくる。どうやら馴染みの同業者らしい。
 ガユスの安眠を乱したのが、自分ではなく同業者の到着だったと気付いて、ギギナは一気に不愉快になった。聴力が増した獣の耳には、アルリアンの若僧の到来が感じられたのだろう。
 ガユスを起こした歳若い華剣士への怒りを覚えながらも、しかしギギナは機嫌を少し上昇させる。あの青年が戸口に辿り着く前からガユスは反応して目を開いたが、一緒に部屋にいたギギナに対しては無警戒だったことになる。
 今だって自分は、他の誰よりもガユスの傍に寄り添っている。
 眼に見える形で為された証明は、なんだか気分が良かった。

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37
34のその後・・・つまり、ギギナがいつまでたっても思い切れない話。
(06/11/08)




言葉なしには満足しない。
言葉だけでは満足しない。
耳元に甘い言葉を囁いてやっても、どうせ戯言なんだろうと切って捨てる。
どれだけ言い募ろうと、信じようとはしない。

身体を求めれば抵抗される。
身体だけ欲しいのだろうと吐き捨てる。
愛しているから抱きたいのだと、組み敷く身体に優しく激しく刻み込んでも。
性欲の処理くらい好きにしろと嘲笑される。

腕の中に捕らえて睦言を注ぎこみ、泣き叫ぶほどに奉仕してやって。
ようやく愛情を信じて満たされた笑顔を浮かべたと思えば、次の瞬間には手に入れた幸せを失う時を恐れて怯え出す。
不確定な未来に苦しみ、いっそ自分から恋を手放してしまおうとする男は、放っておけば何を仕出かすかわからない。

嗚呼、何て手のかかる男だ。
彼に不安そうな哀しい顔などさせたくない。
なのに――彼が不安そうに見つめてくると、執着されているのだと実感して嬉しくなる。
呆れながらも彼を手にしつづけるため一瞬たりとも眼を離せずにいる自分の方が、彼よりよほど狂っている。

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36
ダメダメなギギナの話? オフ用のネタをガユス視点で書いてく過程で溜まっていくもの。
(06/10/29)




「てめ、加減というものを考えろ!」
 全身のいたるところ。まだ服で隠れる場所はともかく、首筋や二の腕や、薄着が出来ない公衆トイレにも入れないような場所に。病気かと思われそうなほど、多量の鬱血痕や噛み傷が残されている。俺も多少は爪痕をつけてしまってるだろうが、比べ物にならない。
「これまで女に嘆かれたことは無いのかよ……」
 男で呪式士である俺は平均よりずっと回復が早いのだが、それでもこれらの痕が消えるまでには何日もかかるだろう。ひりひりと痛む痕は、半ば傷になっている。より柔らかで繊細な皮膚をした女性では、かなりの負担になるはずだ。
「女にここまで痕をつけたことはない」
「………………あ、そ」
 光栄だというよりは、そんな特別扱いはいらないと主張すべきか。
 どう反応するか迷ってしまったこと自体が、ちょっと嬉しいと思った俺の心情を暴露している。

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35
実はちょっと優越感。



『動物王国』

 微妙に遠い位置で眠っている獣化したガユスを、ギギナが見つめる眼差しは不穏だ。
 それはまるで、肉食獣が獲物を狙う視線のように。
 うっかりフェネックを踏んづけ、怪我をさせた日以来、くだんの小動物は半径3メルトル以内に近付くと、座っていようが寝ていようが飛び上がってギギナから距離を取る。そして5メルトルばかり遠くから、ギギナの挙動を確認。害意が無いと見定めてやっと、おずおずと蹲るという行動を繰り返す。
 先日まで、すぐ傍まで寄っても平気で眠り呆けていたし、放っておいても近付いてきて、膝に乗せろとか撫でろとか言わんばかりの態度だったのに、あれ以来まるで触らせようとしない。

 ――ギギナはずっと、ガユスに触れていない。

 別に、構いはしないはずだ。
 ガユスが一方的に寄って来るのを排除しようとは思わないが、ギギナから構ってやる筋合いはない、はず。
 なのに、どうしてか距離を取る仔狐を見ていると不愉快になってくる。
 人型の時は相変わらずの態度だし、仕事の最中には抱え上げて運ぶこともある。それ以外の平時に余計なスキンシップを取る必要などなかったのだから、ガユスから鬱陶しく寄って来なくなったなら、それで問題はない。はずなのに。
 安心しきった甘えた声で頭をすりつけてきたり、急所である腹を晒して撫でろと要求してきたり。
 無条件でギギナを信じていた態度が形を潜めたことに、無性に腹が立ってならなかった。
 どちらにせよ怯えられ、逃げられるのなら。捕まえて組み敷いて思う存分に啼かせて。逃げられぬよう縛めたとしても、結果は同じではないだろうか。
 不穏な想いを秘めて小動物を見つめると、嫌な気配を察したのか、仔狐はますます萎縮したように身を縮こませる。そんな態度は寧ろ、襲ってくれと強請られているようだ。
 そこまで警戒されているなら、いっそ。これまで我慢していた想いをぶつけてしまっても、同じことではないだろうか?
 ケダモノの身勝手な悩みは尽きることがない。

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34
不穏は気配が漂ってきたような? 30の、その後です。



『その声さえも』

 ガユスが怒鳴っているのを聞いていると、楽しくなってくる。
 罵声すらも好きなのだと気付いて苦笑する。
 別に怒っている声だけが好きなのではなく、穏やかに話す声や笑い声の方がいい。ギギナ自身が上げさせるのならば、泣き声や悲鳴でもそそられるだろう。苦痛のそれではなく、という意味でなら。実際にギギナに向けられるのは不機嫌な声が多いので、それは少し不満だ。
 奴の女に向ける声はともかく、例えば時たま会うだけの友人、ラルゴンキンやその事務所の連中に向ける声音の方がギギナにかける声より楽しげだったりすると、じりじりとガユスへの殺意が芽生えてくる。衝動に駆られるままにネレトーを振り下ろせば、紙一重ながらも慌てることなく身をかわされ、ちゃんとギギナの気配を窺っていたのだと確認。決して相棒を無視してはいなかったのだと。
 それでとりあえず満足して矛先を収めると、彼は再びギギナに背を向けて話し始める。どうしてギギナが怒ったのかは、まるで理解していないのだろう。
 けれどその時には、彼よりも彼と会話していた相手の方がギギナに遠慮しているから、ギギナも黙って相棒の戯言に耳を傾けておく。とりあえず、彼はギギナのものなのだと、周囲が理解すればそれでいいのだ。素直ではない本人がどう思っていようと、決して認めないとしても、ギギナとガユス以外がわかっていればいい。
 その声さえも、彼の全てはギギナのものなのだと。

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33
 たとえガユスが気付かないとしても。



『家出3』

 美しい夕陽を浴びながら、気の向くままに歩き続ける。
 つまり俺がどれだけ落ち込もうとも、どん底で最低でどうしようも無くっても、世界は変わらず回っている。わざわざ言うまでもなく当然の現実が嫌に気に障るのは、いっそ世界など壊れてしまっても構わないからだ。見事なまでの自暴自棄な思考は、あまりに哀れで涙を禁じえない。
 やはりこのまま、何もかも捨ててしまおうか。とりあえず魔杖剣はあるから、仕事は出来る。口座に半額を返しておけば、ギギナに文句を言われる筋合いもない。そうして俺が戻らなければ、奴は全てを悟るだろう。
 愚かで弱くてどうしようもない男が、とうとう逃げ出したのだと。ギギナの横に立つ、最低限の資格すら捨てていったのだと。
 暗くなる周囲に釣られるように、俺の思考もどんどん暗く荒んでいく。
 当てのない彷徨は一時間もなかったはずだが、こうみえて咒式士である俺は結構な健脚である訳で、いつしかちゃんと寂れた街角に辿り着いていた。
 いい加減、今夜の宿を探すべきだろう。こんなど田舎に小奇麗なホテルを期待しちゃいないが、意外と泊まる場所ってのはあるものだ。現にすぐ傍にも、いわゆる連れ込み宿らしき看板は見えている。汚れて文字が消えかけ、愛も薄れた連中しか利用しなさそうな宿だが。
 独りでいわゆるラブホテル、なんて考えるだけで余計に滅入ってくる。幾らフロントに人がいないラブホだろうと、独りで泊まってく奴がいたら怪しまれるに違いない。何事も起こさずおとなしく朝には出て行った日には、寧ろ可哀想にと哀れまれるか?
 ずっと切っていた受信機を手にして、ビジネスホテルでも何でも、せめて他の宿を検索しようとした瞬間。沈黙していた受信機がけたたましく反応し、俺はぎょっとして機体を放り出しそうになった。
 単に着信しただけだと気付き、小心者な己に舌打ちする。こんなにタイミングが良いのは誰だと八つ当たり気味に発信者を確かめて、俺は思わず動きを止めた。
 基本的に几帳面な俺は、メモリをフルネームで登録しているが、奴だけは例外だった。
 奴だけはただ、ギギナ、とだけ。
 幾ら名を省略されるのを嫌っていようと、あの長ったらしい名前の全てを受信機に覚えさせるのが面倒というか不可能というか、それだけの理由だが、短くもわかりやすい登録名は、俺自身の手で行ったものにも関わらず俺を打ちのめした。
 だってどうして。
 何故、あいつからの着信が。
 朝からずっと切ってた受信機を通話可能にした瞬間、狙ったようにかかってくるなんて偶然がありえるのか。まさか、もしかしてずっと諦めずに掛け続けていた……なんて、益々ありえない話だけど。
 事実として目の前に現れた現象が理解し難く、思わず茫然と立ち尽くす。やがて受信機が切り替わり、お馴染みのメッセージを流しだす。御用の方はピーッという音の後にメッセージを…………そんなの、聞きたくない。
 ここで奴の声なんか聞きたくないし、無言で切られてもショックを受けるだろう。どうして良いかわからず、俺は思わず着信を切った。その直後、馬鹿なことをしたと気付く。放っておけば良かったのだ。そうすれば、何処かに受信機を置き忘れたという可能性だってあったのに、途中で反応したりしたら、出る気がないと宣言したようなものじゃないか。
 己が狼狽した挙句、更に墓穴を掘ったと気付くが、更に更に考えを進めたところで問題は無いと結論。あの糞ドラッケンが、眼鏡台と連絡が取れないからといって、どうこうするはずもない。そりゃ無視されたと怒るだろうけど、奴が俺に連絡を取らずにいられないほど焦る事態なんてのも有り得ない――さては口座の残金ゼロに気付いたのか。やっぱり出なくて正解だな。
 それともいっそ、声だけでも聞いておけば良かったかと思って、どこまでも女々しい己に自嘲する。こんなことだから、俺はいつまでたっても駄目なんだ。
 やっぱりもう、ギギナとは離れるべきなのだ。このまま、当ても無く流れて行くのが俺には似合いじゃないか。僅か一日、声を聞かなかっただけで淋しい――なんて情けない結論に達してどうする。
 もう何も考えたくない。深々と溜息を吐き、よろめく足取りで見えていたホテルへと歩き出す。
 薄汚い俺に相応しく、哀れな独り寝の夜を過ごすために。

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32
1が08、2が13。その続きが32ってどうだろう……と、思いつつ、思い出したように書きたくなったので家出の続きです。
オチがちゃんとつくのか、我ながらちょっと不安だったり……



注意※ユラヴィカ×ガユス(ギギ←ガユ前提)

 気だるい情事の後で。
 腰の痛みを堪えながら、ゆっくり衣服をまとう俺を眺め、蝶を止まらせた男が楽しげに笑う。
「もしお主を永遠に奪ってやれば、あやつはどんな顔をするだろうな?」
「……さあな」
 微かに笑ってはぐらかしたが、ユラヴィカの問いへの答を俺は知っている。
 もし俺がユラヴィカのものとなり、奴に殺されでもしたら。
 ギギナは永遠に忘れられぬものとして俺を脳裏に刻むだろう。例えばジオルグ事務所の面子を決して忘れられないように。己から弱い俺を切り捨てたのではなく、無理に奪われたのだとしたら、あの強いギギナであっても俺という存在を忘れ去ることは出来ないだろう。
 俺をからかうつもりで問いかけたのだろう戯れこそが、俺がユラヴィカに望むものだ。
 いっそ、ギギナの前で俺を犯せばいいのに。精々イイ声で泣き喚いてやるぞ。

 ギギナが己の無力を噛み締めるように。
 奴の心に、深く傷を刻み込むために。

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31
こういう話を書こうと。思ってプロットだけ立てて置いておき。
入稿後に発作的に書き進めてみて我に返ってみると。
……裏に更に裏を作るべき内容に変貌。上記のネタは何処かへ行方不明に……
思えば初ギギガユ以外。